4 路上ライブと少年の恋
今年は暑くなりそうだと空を見上げながら海月はため息を吐いた。夏だ。
蝉の声が鳴り響き、汗はにじむ。ささやかな音がする風鈴が、グラスの中で溶けてぶつかる猫の肉球型の氷が、星草堂の夏の凉を演出していた。
高校生たちが競うようにレモンティーを注文するので、ついに買い置きの
駅前のデパートに買いに出て、帰り道、ひんやりとした檸檬を見ながら「梶井基次郎フェアでもしようかしら、今の子たちなら米津玄師フェアかしら」と考えながら観光エリアを歩いていると、ひとだかりをみつけた。
その中心で歌っているのは、桐野だった。
「歌を歌うひとだったんだ……」
海月は思わずつぶやいた。
ギターを抱えて歌っている桐野は、そこだけ光が当たっているようにまぶしくて、海月は目を細めた。
伸びの良い美声が響く。
思わず海月の背筋が伸びた。迫力を感じた。
ちゃんと、聞かなきゃ。全身で!
1曲終わって、皆とともに海月も拍手した。
桐野と目が合う。桐野がくしゃっと破顔した。
「じゃあ次は、宮沢賢治に捧げる歌を。オリジナルです」
ああ。あの時作ってた曲。
銀河鉄道の歌。歌詞が素敵だ。知らないメロディーラインなのに、心にすっと入ってくる。自然に体が動く。心が、持っていかれる。聴衆の心が一つになるのがわかった。
とても楽しそうに歌う彼に、海月までうれしくなった。自然とこみあげる涙をぬぐって、海月は満面の笑顔で一礼する桐野に拍手を送った。
すっかり温かくなった檸檬をもって急いで帰っていると、後ろから呼びかけられた。
「星草堂さん」
桐野が、追いかけてきてくれていた。
「聞いてくださってたんですね」
にこりと、笑顔の桐野。汗がきらりと光る。
先ほどまで人々の称賛を浴びながら歌っていた桐野には、まだきらきらとしたカリスマ性があふれていて、海月は内心ドキドキしてしまう心を隠すのに必死だった。
(桐野さんはお客様。お客様に失礼になってはだめだ。)
「ありがとうございました。おかげさまで楽しく歌えました」
「いえ、こちらこそ。素敵なものを聞かせてくださって本当にありがとうございました」
「そういってくださると、励みになるよ」
桐野が笑う。
まぶしかった。
差し込む西日に、海月は目を細めた。
「あの。歌手の方だったんですね。すいません、そういった方面に疎いもので」
「いえいえ、僕なんてまだまだ駆け出しだから。キリノアオトという名前で活動してます。営業とか、動画とか、あと路上ライブ修行中です」
「とても素敵でした。がんばってくださいね。全力で応援します!」
「あはは、ありがとうございます」
そうこうしているうちに星草堂へとたどり着いた。
カラン。猫がかかえたドアベルが鳴る。
星草堂の中はひんやりと冷えていた。
ふわりと珈琲の香りにつつまれて、深呼吸して、海月はようやく平静心を取り戻した。
「今、冷たい珈琲をいれますね」
「ああ、すいません」
グラスに、氷が当たる音が涼しげに響く。
桐野は鞄から出したタオルで汗をぬぐった。
「ああ、楽しかった。今日のライブは最高でした。今までで一番いいライブができたような気がする。あなたのおかげかもしれない、星草堂さん」
「私なんて、なにも。あなたが、とてもまぶしかったのです。光り輝いておられました。……ところで、話は変わって、本当にどうでもよい話なのですが、ひとつ気になっているのです」
コースターを添えて、アイス珈琲をテーブルに置く。海月は、怪訝そうに首をかしげる桐野を見て微笑んだ。
「なんでしょう?」
「私の名前、『星草堂』はお店の名前ですので、そう星草堂さんと連呼されるとなんだか不思議な感じがいたします。なんといいますか、取引先の方のようです」
なんだそんなことか、と桐野は笑った。ちょっとおどけて尋ねる。
「名前をお聞きしても?」
海月はにっこりと笑顔で頷いた。
「もちろん。星村海月と申します」
「星村さん。よろしく。僕は桐野蒼斗です」
「ふふ。存じ上げております。よろしくお願いいたします」
海月は軽く頭を下げた。桐野も笑顔で応じる。
「こちらこそ」
空調のファンの音がからからと静かな店内に響く。
桐野はくい、とアイス珈琲を飲んだ。
海月の目に、カウンターの隅に貼っていたカレンダーが目に入る。猫の足跡がかわいい、お気に入りのカレンダーだ。
そうだ。
海月は桐野の様子をうかがった。いまだにきらきらの名残をまとって、楽しそうだ。
頼んでみても、いいだろうか。ダメでもともとだ。
「桐野さん。……お仕事のお話をしてもよろしいでしょうか?」
「いいですよ?」
おもしろそうに、桐野の目が動く。
海月はカレンダーを横目に見ながら、その場で提案をすばやく組み立てて話した。
「じつはこの秋に一周年記念イベントを計画していまして。ぜひ桐野さんにこちらでライブというかコンサートというか、ちょっとした弾き語りをしていただきたいのですが、いかがでしょうか。あ、正式に事務所様に伺った方がよろしければそうさせていただきますが」
「ここでライブ?」
桐野が驚いたように書店内を見回す。
海月は微笑んで答えた。
「ええ。ここ、とくにこのあたりの喫茶エリアは昔住んでおられた方の音楽室だったようで、防音が施されています。ピアノもあるのです」
「あ、ほんとだ」
店の片隅、ソファの奥の方に、ほこりひとつないきれいなピアノがあった。触られている様子がある。
桐野ががたん、とふたを開けて、いくつか鳴らす。うん、音は狂ってない。
「これ、君が弾いてる?」
「あ、たまに……」
「ふうん」
桐野は海月をじっとみつめた。
「コードとか、弾ける人?」
「……一応覚えていますが?」
「そっか。じゃあ、決めた。君が何曲か伴奏してくれるなら弾き語りやるよ」
「え……? えええええ!?」
海月は慌てた。
「そんな、私は子どものころにちょっと触っただけで、そんな、プロの方の伴奏なんてとんでもないっ」
そう、音楽なんてもう何年も真剣には向き合っていない。図書館司書時代に、おはなし会の童謡の伴奏をした程度だ。かつては十年以上習っていたし、好きでコードも覚えたからギター譜だって演奏はできるがそれはまた別の話だ。
だが桐野はにこにこと押した。
「前奏と、あとちょっとした和音をあわせてくれればいいから。基本は僕のギターだから大丈夫」
「ええええ……」
海月は、困惑した。口元を手で押さえる
……ピアノは好きだ。好きだが。
桐野が、和音を奏でた。
「……la-la-laaaa♪」
さっと、メロディラインをなぞる。星草堂に、桐野の声が気持ちよく響いた。
桐野が海月を向いて、にこりと笑う。
「どうする、やる?」
やらない選択肢はなかった。海月はこくりと唾を呑み、覚悟を決めた。 一周年イベントだ、素敵なものにしたい。射るように、挑むように桐野を見つめて、海月は言った。
「……わかりました。死ぬ気で練習します」
桐野はくくっと笑った。ピアノをぱたんと閉じる。
「死んじゃだめだよ」
「期待、しないでくださいね」
音源が消えて、力が抜けて、海月は困った顔で微笑んだ。
幸いまだ夏だ。あと半年、練習をがんばろう。
※
丸山拓人の趣味は、読書と動画による音楽鑑賞だ。
珈琲は、最近ブラックが飲めるようになった。
その店は、拓人の趣味にぴったりだった。見た目は喫茶店のような入り口と、奥に見えるたくさんの書架と。ところどころにねこのモチーフがあしらわれていてかわいい。
読書と、珈琲。その二つは拓人にとってとても相性の良い存在だった。
はじめて、お金を出してお店で珈琲を飲んだ。美味しい。え、おいしいよこれ。珈琲って、こんなに香ばしくて風味があるんだ。インスタントと、あとせいぜいコンビニのコーヒーしか飲んだことがなかった拓人は、おそらく豆から挽いているであろう専門店の珈琲の味に驚いた。
(また来よう。この珈琲はまた飲みたい。)
こうして、拓人は星草堂にちょくちょく訪れるようになった。
今日は、星草堂はお休みのようで。拓人が、残念、と思いながら近くの観光地をふらふら歩いていると、路上ライブをしている人がいた。
ギターを弾き、歌を歌っていた。
それは、夢のような時間だった。
彼の歌声は拓人の心を震わせ、ゆさぶり、貫いた。拓人は瞬きすら忘れてその歌に聞き入った。
ライブが終わったことに気づいたのは、まわりがざわざわと片づけを始めた後だった。周りにつられるように並んで彼からCDを買って、握手してもらって。
拓人は熱に浮かされたように、ぼんやりと帰路に就いた。人込みから外れて少し現実に戻ってきて。頬をひとすじの涙がこぼれた。
(なんだ、これは。)
拓人はしゃがみ込んだ。
(うわあ。
僕も、歌いたい。弾きたいっ。)
あふれてくる感情の処理に、脳が追い付かない。
拓人はふらふらと、観光街にあるベンチに腰をおちつけた。まだ頭の中に鳴り響いている、彼の震えるような感情がこもった音楽。
こんな世界があったのか。
心地よい風が拓人の頭をゆるやかに冷やしていく。いつの間にか夕方になっていた。もうすぐ夜だ。
拓人は、かなり長い間、そこに座っていた。
※
そして、数週間の月日が流れた。その日、拓人は公園で白猫を眺めていた。
あの曲がずっとリフレインしている。CDを売ってもらっていてよかった。彼の名前はキリノアオト。ウェブを中心に活動しているミュージシャンだった。
ぼんやり眺めていたら、白猫が風に舞う花びらとたわむれはじめた。可愛い。だけどあまりに熱中して追いすぎだ。そこには噴水が、あるのに……っ。
拓人は、案の定つるりと足を滑らせた白猫に手を伸ばした。温かい体を噴水の水から救う。よかった。そう思いながら、猫を陸地に放り投げて、体勢を崩した拓人は噴水にざばんと落ちた。
(猫を助けて僕がずぶぬれだ。何をやってるんだろう、僕。)
白猫は、噴水の淵からこちらをうかがっていた。
と、誰かがその子をすっと抱き上げた。白猫が安心したようににゃおんと鳴く。
黒いふわふわした猫っ毛の少年が、にこりと笑った。
「この子をたすけてくださってありがとうございます。まったく、落ち着きのない子ですいません。もしよかったら、近くに知り合いの店があるので、乾いたタオルなどいかがでしょうか?」
拓人は水を滴らせながら噴水からたちあがった。
(それは助かる。バス通学なんだ。)
「ありがとう。お言葉に甘えるよ」
拓人は笑みを浮かべた。
猫を抱き上げた少年は、拓人を先導してほてほてと歩いて行った。彼のふわふわの髪に猫耳が埋もれているのがかわいかった。十代後半のようなのにコスプレするんだろうか。
ぺたぺたとゾンビのように水を滴らせながらしばらくついていくと、例の本屋、星草堂があった。
(ああ。ひさしぶりだ。……え?)
少年がその扉を開ける。中へ入って二言三言話して、拓人を振り返り、ずぶぬれの姿を再確認して。
「あ」
少年は、扉をしめ、拓人を庭の方へ案内した。
「ごめんなさい、書店に水気は禁物でした。こちらの母屋へどうぞ」
「すいません」
ばたばたと慌てたように、星草堂の店主の女性が現れる。
「あらまあ、すいませんっ」
海月は気持ちよく乾いたタオルを手渡して、手早く拭った。琥珀から聞いて驚いて飛び出してきたのだ。幸い夏服なので、しばらくすれば乾きそうだった。怪我などなさそうでよかった、と海月はほっとした。
「うちの猫を助けてくださったんですって? 本当にありがとうございます」
制服姿の少年ははにかんだように微笑んだ。
店の中から、先程の黒い髪の少年と、その妹らしき白い髪の少女が出てきた。少女は目を潤ませて拓人の手を握る。
「ありがと、ございます」
察するにこの子があの白猫の飼い主なのだろう。
拓人はにこりと笑った。
「君の猫が無事でよかった。僕は丸山拓人。君は?」
「ほたる」
「ほたるちゃん。かわいい名前だね。君にぴったりだ」
「ありがとう。うづきがつけてくれたの」
「ふうん?」
不思議な子だな。
拓人は内心首を傾げた。
海月がごまかすように拓人の背を叩く。
「このままじゃ風邪ひいちゃうわね。何か着替えはあったかしら」
男性の声が、割って入る。
「僕のを貸してあげるよ」
海月の後ろから現れたのは、拓人の心を染め抜いたあの歌を歌っていた彼だった。
「……っ」
拓人の心臓が跳ねる。
(どうして、ここに……!?)
桐野は持参していた着替えのコットンシャツとジーパンを手渡した。
「サイズは問題ないと思うんだけど。ちゃんとキレイなものだけど、抵抗があったらその辺りで何か買ってくるけど」
「……っ、ありがとうございます!」
(なんて、ことだ!)
拓人はまだ現実が信じられなかった。あの、数週間前に拓人に衝撃を与えた歌を歌っていた人に、着替えを借りるなんて。夢じゃないだろうか。
(……一生分の幸運だ!)
彼のシャツとジーパンを借り、シャツと制服のズボンは庭に干して乾くのを待った。
その間に、拓人は店内でくつろがせてもらった。
「拓人くんはよく来てくれてますよね?」
コースターにアイスコーヒーを置きながら、海月が微笑む。
「あ、おぼえてくださってたんですか」
「とても楽しそうに珈琲を飲みながら読書してる男の子がいるなって、思っていたのよ」
「ありがとうございます」
こそばゆく恥ずかしくて、拓人は頭をかいた。
にこにこと桐野が声をかける。
「その制服は桜が丘高校?」
「あ、はい。三年生です」
桐野に返答をするときは、拓人の背がすっと伸びる。
その様子が可愛くて、海月は笑いを表情に出さないようににこにこと眺めていた。
「そっか。僕の母校だ。学校に感謝状を出さなきゃね」
「や、やめてください! こうしてお招きいただいただけで充分です!」
あはは、と桐野は笑った。拓人はあこがれの眼差しで桐野を眺めた。
(かっこよすぎる!)
桐野やほたる、それにほたるの兄の琥珀や海月店長と話す時間は、夢のようにあっという間に過ぎていった。
ふかふかにかわいた制服に着替えて、拓人は大事なことを思い出した。
大慌てで、無事だった鞄から彼のCDを出し、おずおずと桐野に渡す。
「あの。すいません、もしよければ、サイン、いただけると嬉しいです!」
「おや。ありがとう」
桐野さんは目を丸くしてふふっと笑った。
「聞いてくれたんだ?」
「はい! 先日の路上ライブ、すごくよかったです! 感激しました!」
「ありがとう」
桐野は嬉しそうに笑った。マジックを握り、すらすらと今日の日付と拓人の名前入りのサインを書く。
「これからも、応援よろしくね?」
にこにこと手渡されて、拓人は興奮のあまり上ずった声で応じた。
「もちろんです!」
「……タクト」
制服に着替えた拓人の様子に、白いふわふわの髪の猫耳少女ほたるが、拓人の鞄の端をにぎって首を傾げた。
「かえる?」
「うん、明日も学校だしね」
「……またくる?」
「うん、また来させてください」
ほたるはにっこりと笑った。
立ち上がり、扉をしめすしぐさをする。
「おくる」
「ありがとう」
拓人は改めて、お世話になった人たちに頭を下げる。
「お邪魔しました。今日は本当に、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございます。また来てね」
「はいっ」
からんころん、と猫のドアベルが鳴った。
二人でてくてくと歩く。バス停は公園を抜けたところだ。
「そういえば、猫はいなかったね」
数時間いたが、あの白猫を見かけることはなかった。
「……。おみせは、動物はだめだから」
「あ、そっか。カフェだもんね」
「うん」
拓人は特に疑問にも思わずすんなり理解した。
桐野の存在への興奮で、それどころではなかった。
「ほたるちゃんはキリノさんの歌を聞いたことがある?」
「うん。ときどき、おみせでうたってる」
「キリノさんはさ。路上ライブで初めて見たんだけど、歌唱力がすごくて、あとでCDや動画でも聞いたんだけど、ライブだとそれ以上にうまくってさ。心に響く歌だったんだ。すごく、……すごく、かっこよくて」
拓人は桐野のライブを思い出して、熱に浮かされたように喋った。
「僕、このままじゃいけないなって思ったんだ。ちゃんと自分と向き合って、将来のことを考えて。ちゃんと、生きていかなきゃねって。思えたんだ」
自分を、まっすぐにしてくれた。活を入れてくれた。そんな歌を、桐野は歌っていた。
「キリノさんは、僕の恩人なんだよ。そんな人と今日会えて、お話しできて、服まで借りて、僕はもうどうしようって感じだよ。白猫ちゃん様様だ」
「それほどでもないよ」
なぜか、ほたるが照れて否定した。拓人は気づかない。
「キリノさんのライブはね、僕の人生を変えたんだよ。例えば『君が好き』っていう歌があってね、」
ほたるは目をぱちくりとして、思い当たったように微笑むと、口を開き、サビをそらんじた。
―――君が、好き。
涼しい風がふわりと吹く中で、ふわふわとした猫っ毛を風に揺らして、きれいなソプラノが響く。
拓人の心に染みこんだキリノの歌が、別の形で表現された。それはまた、驚きの体験だった。
ほたるが歌い終わるまで、拓人は夢中で聞き惚れた。
拓人は、たぶん、この瞬間にほたるに恋をした。のちに振り返って、思った。
歌い終わって、ほたるはこちらを振り返り、はにかんで微笑んだ。
「すごい! すごいよ、ありがとうほたるちゃん!」
「アオトほどじゃないよ」
「ううん、全然別物にすごい感じだった! 動画投稿とかしてないの? カラオケでもいいと思う。君ならすぐに、伝説になれるよ」
拓人に興奮がこみあげて止まらない。ほたるは首を傾げた。
「どうが? ほたるはしないよ」
「ああ、もったいない!」
拓人は叫んだ。
(だけど。この歌声を、僕だけが聞けるのはそれはそれでうれしいかも。)
邪な思いもちらりと走る。彼女が有名になってしまったら、遠くへ行ってしまう気がした。
(ちょっと待って。落ち着いて、僕)
深呼吸する。ほたるは首を傾げたまま待っていてくれた。
「また、遊びに来るから。また歌ってくれる?」
ほたるはようやく理解できたように、にっこりと頷いた。
「うん。タクト、また来てね」
※
少し後ろを、琥珀がそっと追っていた。ほたるが余計なことを言いすぎないように、余計なことをして傷つかないように、気になってつけてきたのだ。
琥珀にとってもほたるの歌を聞いたのは初めてだった。
ひらりと舞う葉を、掌に拾う。
「あの子に聞かせてあげたいな」
素敵な歌を聞いて、思い浮かぶのはいつもの神社でしか会えない、歌が大好きな少女。
さらさらの緑の髪を揺らして、にっこりと笑う笑顔。
琥珀は、紅葉姫みらいを思い出して微笑んだ。
(帰ったら、この話をしにいこう)
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