第25話 ナミを探して

 プロキシマ・ケンタウリの町の空へ、ブルムゾーンは舞いあがりました。

 空から見ると、町の建物はまるでしっかりと整列しているみたいです。

 そのなかに、たまに小学校みたいな大きな建物があって、まるで列をみだしているみたいに見えました。

 タクミは顔に風をかんじました。宇宙の町に自然の風がふくことはありません。空気を動かすために、いつも動いている大きなエアコンからの風なのでしょう。

 とつぜん、街がゆれました。

「なに!?」

『わからない。黒い竜がなにかしてるのかも』

 宇宙で地震がおきることもありませんから、だれかがなにかをしているのはまちがいのないことです。

 でも、ゆっくり考えている時間はありません。

『体が大きくなったから、ちょっと飛びすぎちゃった。いそごう』

 ブルムゾーンは白い翼をはばたかせて、いっきに小学校の建物めがけておりていきました。

 学校のなかも外も、たくさんの黒い竜が飛びまわっていました。

 クリスとハシムの青い竜が、ファーブニルの子どもたちをやっつけているのも見えます。でも、数かおおすぎて、かんたんにはいかないでしょう。

『タクミ、地面におりたら、すぐ僕からおりるんだ。ねらわれちゃうからね』

「うん、わかった!」

 門のところにおりたブルムゾーンからタクミは飛びおりて、学校へと走ります。

 竜はブルムゾーンをさがしているだけで、子どもたちには目もくれません。でも、平気でぶつかってくるので危険です。

 タクミはまず、グラウンドに向かいました。なにかあったときは、まずそこに集まることになっているからです。

 黒い竜にぶつからないように頭をひくくして走っていきます。

 広いグラウンドには、先生たちと子どもたちが集まっていました。

 でも、4年生の列を見に行きましたが、ナミはどこにもいませんでした。

「あっ、そうか、足をケガしてるから……」

 気がついて、タクミはまた校舎のなかに向かいました。

 シーノ先生の声が聞こえた気がしましたが、タクミは無視しました。

 4年生の教室は、4階建ての建物の1番上の階にあります。

 エレベータに向かいましたが、ボタンを押しても反応がありません。どうやら黒い竜に壊されてしまったのでしょう。

 しかたなく、タクミは階段へと向かいます。

 階段の下で泣いている男の子がいました。おそらくは1年生か、2年生か。逃げおくれてしまったのでしょう。

「おい、だいじょうぶか?」

 ナミのところにいそぎたいのですが、むしするわけにもいきません。

(こんなことしてる場合じゃないのに)

 そう思いながらも、その子を立たせてタクミはグラウンド近くまで1度引き返さなければいけませんでした。

 あらためて階段をかけあがります。

 走るのは苦手ではありませんが、得意でもありません。

 息を切らせてしまって、3番目の踊り場で一度息をととのえようとしました。

「フランツ! フランツ!」

 ナミの声が聞こえてきました。

 なので、タクミは一休みをやめてすぐに階段をあがりました。

 ナミが廊下に座りこんでいます。

 妹はたおれている金色の髪をした少年の肩をゆさぶっています。

「……フランツ」

 たおれている彼は、背中からたくさん血を流していました。

 ぼうぜんとしてしまいましたが、すぐにタクミは我にかえりました。

「ナミ!」

 声をかけながら、妹とフランツに近づきます。

「……兄さん。フランツが、黒いのにやられちゃったの。私のこと助けに来てくれたから……!」

 フランツはタクミよりもよっぽどはやく、足をケガしているナミがあぶないと気がついたのでしょう。

 そのせいで黒い竜にやられてしまったのです。

「わかってる。くそっ、しっかりしろよ、フランツ!」

 タクミは青ざめているフランツの体に手をかけようとしました。

「ゆらしちゃダメ。タクミも、ナミも」

「シーリン!」

 ききなれた声を聞いて振り返ると、そこにシーリンがいました。

「血を止めなくちゃ。でも、背中の止血ってどうやるんだっけ。手や足ならおぼえてるのに……!」

 きっと、彼女もナミを探していたのです。

 考えながら、シーリンは早足に近づいてきました。

「上着を貸して、タクミ。傷口を押さえてたら止まるかも」

 タクミはすぐにシャツを脱いで、Tシャツ姿になりました。脱いだ服をシーリンにわたします。

 背中に傷にシャツを押し当てると、服がどんどん赤く染まっていきます。

 タクミとシーリンは交代しながら、なるべく血がついてない場所でフランツの傷口をおさえました。

 そのさわぎのおかげて、3人……フランツをふくめると4人は、外で起きていることに気づきませんでした。

 真上に、さらなる危険がせまっていたのです。

 気がついたのは、とつぜん天井にヒビが入って、くだけたときのことでした。

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