第10話 クリスとの再会
3次元エレベータに乗って、タクミは上のほうにあるというもう1つの展望テラスをめざしました。
さて、3次元エレベータはエレベーターとおなじしくみなので、とちゅうで人が乗ってくることがあります。
まだ目的のエリアまでたどりつかないうちに、チーンと音がして、タクミの目の前で扉が開きました。
「あれ、君は……タクミ、だったかな?」
金色の髪をした男の人は、少年のすがたを見て目を丸くしています。
「クリスさん!」
タクミのほうは、自分でもおどろくくらい大きな声を出してしまいました。
「ねえ、クリスさんはドラグーンなんだよね?」
扉が閉まるのを待たずにタクミはクリスに話しかけました。
「ああ、そうだよ。すごいな、よくわかったな」
「だって、バッジをつけてるもの。だれだってわかるよ」
「よく見てるな。そうだよ、俺はこの船を守るドラグーンだ」
「すごいなあ。ドラグーンになるのってむずかしいんだよね?」
「ああ。テストもたくさんあるし、運動だっててきなくちゃいけない。背ものばさなきゃいけないんだよ」
へえ、とタクミは息をもらしました。
ドラグーンというのは、今は5つの星あわせて一億人以上が住んでいる宇宙の町で、数百人しかいないのです。
2万人に1人くらいしかいない計算になります。
「それだけがんばったってのに、みんながおやすみする記念日にもやすめないたいへんなおしごとだよ」
クリスが肩をすくめてみせます。
「……やっぱり、ドラグーンでもおやすみしたいの?」
みあげたタクミを見て、クリスは笑いだしました。楽しそうな笑いでした。
「はは、今のはじょうだんだよ、タクミ」
本気でいっているものだとばかり思ったタクミははずかしくてうつむいてしまいました。
「船には5人のドラグーンがいるから、なにかあったときはすぐに助けてやるからな」
そう言ったクリスの顔は、まるでアニメに出てくるヒーローのように見えました。
「ありがとう……あの、聞いてもいい?」
「なんだい?」
「この船に、竜が見られるばしょって、どこかにあるの?」
「ああ……見たいのか?」
タクミは首をいきおいよくたてに振りました。
「テラスからなら見られるはずだが、とおいからな……ああ、そうだ。晩ごはんを食べたら、メインエントランス近くのホールに来いよ。いいところにつれてってやる」
「えっ! いいの?」
「ああ、トラブルが起きてるときじゃなきゃ、見学許可なんてボタンを2、3回おすだけでとれるからな。まあはじっこからちょっと見せてやれるくらいだけど」
「ありがとう、クリス!」
お礼をいったところで、ちょうどクリスが降りるホールにつきました。
『ファーブニルに気をつけて』
3次元エレベータの扉がしまるとき、また声が聞こえました。
クリスが言ったのかと思いましたが、声はタクミの後ろから聞こえた気がします。
ふしぎに思いながらも、タクミはそのあともう1つのテラスに向かいました。
竜はやっぱり、しっぽくらいしか見えませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます