ならなくなった音と不在票
近頃、なんだか様子がおかしい。以前は来客があればうるさいくらいに声を聞かせてくれたものだが、近頃うんともすんとも言わなくなった。メールBOXに「発送通知」が来ている。通知の到着日には本日の日付が記されていた。もう夜は遅い。それなのに配達員が訪問する気配がない。音が鳴らない。
玄関ポストを開けてみると、不在票が入っていた。
「なんでだ……?」
以前、チャイムを鳴らすことなく不在票を入れる配達員が何人か居た。家に居るのに「すこんっ」と不在票がポストに入る音がするのだ。今回はそれすらない。ただ無音で不在票が入っている。ポストを見れば回収し忘れていた手紙などが入っていた。音が鳴らないわけだ。
ネットから再配達依頼をして、その日は寝た。
翌日も、配達員は来ない。不在票がただ玄関ポストに入っているだけだ。僕はまた再配達依頼をする。
「もしかして……?」
再配達依頼を終えたとき、ひとつの可能性に気がついた。家の電気を全て消してから扉を開ける。夜間に電気をつけた状態で扉を開けていると虫が入ってくるためだ。扉を開けて家の中からインターホンを押す。何も聞こえない。押したボタンからも音が聞こえるはずだが、聞こえない。家の中からも聞こえないといけないのに、聞こえない。
なるほど。
インターホンが鳴らなくなったのか。
待てよ? これから僕はどのようにして配達員に気づけばいいのだろう。なんだか途端に恐ろしくなり扉に「インターホンが壊れてます」と張り紙をしておくことにした。
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