第30話1000年研者の弟子の初恋その4の裏
ガーゴイルが倒され周りが浮かれている中イザベラだけが馬車の上から術者を探していた。
あのガーゴイルは正確には
ガーゴイルは生きた石像であるのに対しあれは魔力で動く人形…正しくはガーゴイル型のゴーレムという存在だった。
ゴーレムの中にも生きた石像と言えるものも存在するがそうなったものはこの王都の結界内であそこまで動けない。
よってこのガーゴイル擬きは人が操作している遠隔操作型のゴーレムと断定した。
遠隔操作と言っても操作している人間は自分の目、もしくは何かしらの遠目を覗くスキルか何かが届く範囲でしか操作はできない。
つまり…
「…あそこか?」
理論的には遠目のスキルを持っている人間にならどこにいるかわかるということだが…できる人間はそう多くは無いだろう。
イザベラは馬車の上から音もなく飛び出すと屋根を伝い術者と思われる者がいる場所へと向かった。
たどり着くとそこにはフードを目深にかぶった男がたたずんでいた。
「お前か?」
ナイフを構え男に問いかけるが
「…」
男は何も答えなかった。
「答えないか…なら体に聞くしか無いな!」
スカートの下に隠してある投げナイフを放りフェイントを交えつつ後ろから襲いかかるが…
「な!」
投げナイフは見えない壁に弾き飛ばされ、真後ろから突き出したナイフを見る事も無く回避された。
(私の攻撃を見もしないで…)
「なら!」
服を形成していた魔綱線に魔力を込めると細長い針のような物が無数に飛び出る。
魔綱線とは魔力を込めると形状や硬さを変化させられる性質がある鉱石…魔綱石を繊維状にした物である。本来防弾チョッキのような使われ方をする物だが一部暗殺者が手ぶらを装う為に使われる事もある。
無数の魔綱線が男に向かうが…
当たる直前で全て逸らされてしまう。
魔綱線は魔力で操作できる素材つまり攻撃された側ても魔力を込めれば操作できるという事である。
ただし…当たる直前の数秒で先に込められた魔力を全部弾き出し操作するという神業のような魔力操作が必要なのだが…
だがこれはまだ想定内…これだけの魔綱線を操作するのにはかなりの魔力や精神を使う。
この瞬間なら届くはず!
残していた魔綱線に残った全ての魔力を込め操られた魔綱線に紛れて差し向けイザベラ本人もナイフを構え死角から襲いかかる。
「とった!」
何かがナイフに刺さった。
…だが
「これは…魔綱線…?」
ナイフは魔綱線で編まれた布に突き刺さりそして絡め取られた。
差し向けた魔綱線も操作を奪われ魔力も無くもうなすすべも無くなっていた。
「…」
「くっ!殺しなさい!」
両手両足を魔綱線で拘束されたイザベラは目をそらしながらそう叫んだ。
「…」
男は黒い穴に手を入れると一着の服を取りだし放り投げた。
「何のつもり?」
イザベラの拘束は解かれ自由になっていた。
「…その格好では喋りにくい」
「格好?」
そう言われ自分の格好を見る…ほぼ魔綱線で構成されていた服の魔綱線が失われ完全な下着姿となっていた。
「キャーー!!」
彼女の叫び声はディアスの静音魔法でかき消された。
「これでまたしばらく声が届かないな…」
彼女が着替えている間収納から紙とペンを取り出す。
ディアスの索敵魔法により敵の存在を感知し騒ぎが起こった時にはもう術者の側にいたが弟子の様子修行の成果を見る為術者を拘束しガーゴイル擬きのコントロールを奪いシリウスに攻撃を仕掛けたのだった。
「本体も爆散させたから証拠も残ってないはずだったんだがな…」
機械仕掛けでも無い石の塊が剣で斬られて爆発するはずが無い。
つまり遠距離から魔法で爆破したのである。
最後にイザベラの問いかけに答えなかったのは何を喋っても聞こえなかったからである。
術者を拘束するのに周囲に音が漏れないように静音魔法サイレンスを使ったがこれは設定空間内の音をかき消す魔法で音をかき消す=魔法の発動の阻害の効果があるがデメリットとしてその空間内では術者でも魔法は使えないという事、空間の外に出ないと時間が来るまで解除できないと言うことである。
ディアスは範囲外で発動したが拘束の為に範囲内に入らざるをえなかった。
タイミング悪くイザベラが乱入してきたがまだ終了まで時間があり無言で襲撃を受けるしか無かったのである。
その事を文章で記すとイザベラへと渡すのだった。
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