第19話誰も思惑通りには行かない…

「さて!手始めに買い食いでもしようかしら?」

繁華街に到着して屋台を目の前にしてテンションが上がるフィーネだが。


「イザベラおか…」

あ!

「お金が…無い…」

その場にうずくまり項垂れる。


いつもメイドにお金を払わせていたので自分では銅貨1枚足りとも持っていなかった。


「…どうかしたのかい?」

声に振り返ると怪しい風体の男が立っていた。


「いえ…大丈夫です!」

その怪しさの余り反射的に拒絶して後退りする。


「え!?」

何故見たいな顔をしているがお構いなしに逃げ出す。


怪しい風体の男…シャドウは焦った。

世間知らずのお姫様なら優しい言葉で誘い出し楽々と連れ去れるだろうとたかをくくっていた。

計算外だったのは…自分の見た目が怪しすぎたということであろう。


「誰か助けて!」

叫びながら町の中を疾走するフィーネ。


「な!?」

ここまで騒がれると今しか仕止められるチャンスが無いと腹をくくりそのまま追いかける事にしたシャドウ。


「アイツ…どこに…」

いきなり走り出したシャドウを見失いうろうろしていたシリウス…


「…助けて!」

突如聞こえた叫び声に反応しその方角に向かうと…


「きゃ!」

フィーネと激突寸前になるもとっさに回避したがバランスを崩し片膝をつきもう片方の足を伸ばすような形に倒れ込み…


「ちょっと…待てってッ!」

そこに全力疾走で追いかけてきたシャドウが足に躓き…

壁に激突…


「は!?」

シャドウは完全にのびていた。


「え、えーとありがとうございました。」

助けられたのは事実なのでお礼をいう。

(あれ?この子もしかして…?)

「いや…怪我が無くて良かった。コイツが武器を隠し持ってこそこそしていたから見張っていたんだ。」


シャドウの懐から隠してあったナイフを取りだし両手を縛る。


「恐らく暗殺者だろう」


「え!?」

自分の命が狙われていたと知り青ざめるフィーネ。

…確かに暗殺依頼を受ける時もある…が今回は誘拐が目当てであるので微妙に外れている。


暗殺なんて…私を殺す?下に兄弟はいないから継承権とかには影響しないはずだけど?


あーでもないこーでもないと考えを巡らせるが理由がわからない。

ふと目の前の少年が目に入る。

そういえばこの子いつもの子よね…


「私はフィーネ…あなたは?」

とりあえず挨拶することにしたがて

「俺はシリ…「ゴーン!ゴーン!」 だ」

え!?何!?


「あ!もうこんな時間!師匠にしばかれる!」

慌てて立ち去るシリウス。


「え!?ちょっと!?シリ何よ!?」

そこにもうシリウスはいなかった。



その頃忘れ去られたシャドウは…

「くっ!いったい何が…」

気がついた時には鉄線でグルグル巻きにされていた。


「…こんな奴が闇ギルドの一員だと?…質が下がってるな…」

頭に女の声が響く。


「だ、誰だ!」

目隠しがされ視認することができない。


「あなたの敵よ…」

それだけ告げるとおもむろに足にナイフが突き刺さる。


「ギャッ!」

思わず声をあげるがすぐに黙る。


「ふーん拷問の訓練は受けてるか…」


「お前何が目的だ…」

痛みをこらえながら絞り出す。


「それはこっちの台詞よを狙って何のつもり?」


「…」

黙るシャドウだが…


「なるほど…誘拐ね…」


「な!?」


「依頼者はオクライン卿か…あのゴミ虫が…」


「何故それを…」


「企業秘密♥」

フッと笑いナイフを引き抜く。


「後は衛兵にでも任せるか…」

イザベラは呼んでおいた衛兵にシャドウを引き渡すとフィーネの様子を確認する。


「私が助けに入って好かれるつもりだったのに…」

折角そのためにコイツをというのに横取りしやがって…。


このあと遅刻したシリウスはディアスにいつもの倍しごかれた。

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