近所の錆びれたカトリック教会に行って、そこで出会ったひとたちと妙なよそよそしさをもったままにも仲よくなり、個室居酒屋でオールをしてみた、金色のようで、にぶい鋼鉄が反射するかのような灰色のゆめ。

 近所に、カトリックの教会があった。

 カトリックというのはローマ教皇を中心に完全でピシッときれいなピラミッド型を描いているし、だからこそそこに救済があるし、だからそこの近所の錆びれた教会だってカトリックというのだからまあしっかりしているのだろう、と私は夢のなかでそんなことを思いつつ(実際のカトリックの事実がそうであるかどうかは、ここでは置いておく)、そしてまたしてもみどりいろの愛する自転車「ルクトゥットゥットゥル」を漕いでいた。

 ちなみにその名前は私が中学生のときにじっさいその自転車に名づけていた名前だ。

 私はやけに軽快に楽しく、でもちょっと浮つきすぎて捉えどころなく不安な気持ちで、つまりしてなにかすべてをうしなってしまったゆえの一瞬の高揚みたいなきもちで、だからつまり教会に行ったのだろう、ああ、そういう気持ちでとかく私はすいすいるんるんとルクトゥットゥットゥルを漕いでいたのだ。


 教会前にたどりつき、門の前に自転車を停める。きっとほんとはそこに停めてはいけない。けど、ほかに停められそうな場所がなかった。

 日本、というよりは、フィリピンの街のすみっこみたいなひっそりさ。

 お砂場があり、小さな公園みたいな。でも、そこは公園ではなくきっと幼稚園なんだと思った。なぜだか私はそのことを知っていた。

 教会の建物は右にあった。金色のしっぽみたいなミサの服を垂らしているひと、おそらく神父さんなんだと思った。私と同年代か、もっと若い高校生くらいのひとたちが、ふたりかさんにん、ゾンビのようになにも言わず静かな礼拝堂に吸い込まれていく。

 私も、従った。


 ミサのあいだの記憶はない。

 ……ろうそくがゆらめいていて金色だったかな。でも、背景、やけに暗く。


 そして次に気がついたときには、ひっそりと暗いままの教会の、フリースペースの背の高い焦げ茶色の木目のところで、お菓子をつかみながら、同年代の教会員のひとたちと、気まずさをお互い抱えたままの気をつかった親しさを装った、雑談を、繰り返していた。

 まあせっかくだから飲みに行こうって、なぜかそうなって、近所の安居酒屋へ。


 急に踊り出しちゃうひとや、やたらと声を上げて手をたたいて笑うひとや。

 ……帰りたいなあ、って、思いながら私は引きつった愛想笑いでさかずき、かかげていたけれど、

 ……それでもオールまでして最後までつきあちゃってやがては夢のなかなのに夢のように意識が朦朧としてきた、

 あのときの、

 あのときの和風の鳳凰みたいな金色がまたキラリきらめたのは、


 ほうおう。

 なにか、……意味があったの、かな?

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