第5話

白詰草という題名のその本は、ほかの絵本とは違った何かを感じさせた。

ほかと絵本の童話と同じように、現実味をまったく帯びていないものだと僕は思っていたのに。


読み始めて思った。この感じは嘘ではないと。この絵本は実際、現実味を帯びていた。"僕ら"にとっての話だが。


読み進めていくに連れて確信に変わった"それ"はあまりに切ないものだった。


読み終わったあとには小野田さんを恨んでしまおうかとも思ったし、気付かなかった自分が恥ずかしくて仕方なかった。

そこから一つ一つ、過去の自分をふりかえっていった。

不覚にも確かにと思ってしまった。



"小野田さんの存在は見えなくなってきている"



"僕には小野田さんが見えている"



"彼女がこれに気付いたのはなぜ?"



"彼女にはたくさんの友達がいた"



"僕には小野田さんほどの友達はいない"



"気付けなかった"





"僕は確かに周りが見えていなかった"




目まぐるしく動く脳に、甘い物食べたいなぁ。なんて、そんなことを考えた。


とりあえず白詰草を探しに行こう。小野田さんとともに。いや、瑞希さんとともに。


僕の光る左手の小指とともに。

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