第2話
それからの学校は、何事もなく過ぎた。
小野田さんはいつも通り友達と話していたし、
僕はいつも通り誰とも話さなかった。
家に帰ってゲームをしようとスマホのパスワードを解除したその時。
ゲーム以外の通知が来た。
久しく見ていなかった通知アイコンに少し戸惑う。
クラスのグループには入っているものの、個人で連絡を取り合う人なんてまるでいない僕なのに。
通知の相手は、小野田さんだった。
"今から話せますか?"と。
天宮くんのような人達といつもはしゃいでいる彼女の敬語は、僕をより戸惑わせた。
最初はスルーした。
急ぎの用ではないと判断したからだ。
しかしそれは僕が自分にした言い訳で、本当は、彼女と話すのが少し怖かった。
僕にとって"人付き合い"というものは、近所のおばさんに挨拶をする程度のものであって、決して同い年の女子とするものではなかったから。
いや、それすらも言い訳であった。本当はずっと、彼女への返信を考えていた。いつの間にか彼女に恋をしているかのように悩む自分が嫌になってやめたのだ。
僕はそのアプリを閉じ、ゲームを開き、ログインボーナスを受け取った。彼女の返信で悩む間に終わってしまった限定クエストが、少しショックだった。
僕はゲームに没頭した。リズムゲームの最強難度をフルコンボ。きっと先程の悩みなんか、とっくに消えたのだろう。単純なヤツだ。
しかし、僕のその集中力は突然途切れた。
画面に現れる"GAME OVER"の文字を眺める。
リズムゲームにおいての最大の敵である通知とともに。
僕は彼女にスルーを決めたことを反省した。
ゲームを閉じ、また彼女とのトーク画面に逆戻り。
どれほどの時間がかかったかは分からないけれど、近所の公園で話をしようと僕が送るのは、最高難度のフルコンボを達成するより凄いことということだけは明確だった。
でもこれは、彼女の家がさほど遠くないことをたまたま知っていたから言えたもの。
これじゃストーカーみたいだ、とだけ自分に言い聞かせた。
僕の気持ちが暴走する前に。
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