シロツメクサの光
星莉
第1話
___シロツメクサってさ、すっごいロマンチックな花なんだよ!!知ってた?
__え?あんな道端にいくらでもあるものが?
___そう!実はね?
夢のなかで聞いたその言葉
続きは残念ながら覚えていない。
学校。いつも通り自転車を漕いで高校に通い、頭に残らない授業を聞く。最後の授業のチャイムを合図に、帰ってすぐさまゲームに没頭する。
そんな日々に僕が違和感を覚えたのはつい先週のこと。最初の違和感は放課後の教室でクラスメイト、天宮優斗によるカラオケのお誘いだ。
「今日の放課後駅前のカラオケいかね?俺と美希と松居……と?誰…………あっ、瑞希も!」
違和感。それは僕が誘われなかったことではない。この言葉の"なにか"が僕の心のどこかに引っかかったことをさしていた。
天宮優斗。彼はクラスのいわゆる"陽キャ"で、僕には到底関わりようのない人だ。もちろん佐藤さんも松居くんも、そして小野田さんも。
もっとも僕からすれば僕以外はみなその部類に入るのだが、この4人は中でもクラスの中心だということで認識している。
4人は幼馴染で、部外者の僕でもわかるほどに仲がいいからだ。
本当は僕も彼らの近所に住んでいるのだが、もう少し家が近ければ僕も"陽キャ"になれていただろうか。
…無駄なことを考えた。
それよりも。彼が一瞬、およそ17年間も近い存在にいたであろ小野田瑞希を忘れた。
"目の前に小野田瑞希がいながらも、「誰だっけ」という間があったこと"
それが僕に引っかかった"なにか"だろう。
この違和感が先週の火曜日のことだ。
でも僕が感じた違和感はその一瞬だけで、他には特になにもなかった。
むしろ、小野田さんのことを気にする自分を気持ち悪いと思っていたところだ。
しかしそれが間違いだったことが分かったのが今週の木曜日。今日である。
SHRの時間。「小野田はまだ来てないか?」担任のその一言には僕も耳を疑った。同時に目も疑ったのは言うまでもなかった。
僕には小野田瑞希がしっかり見えていたのだから。
そうにもかかわらず、クラスメイトは小野田さんを心配していた。
見えていなかったのだ。
先生にも、彼らにも。
僕がおかしいのか、彼らがおかしいのか、小野田さんがおかしいのか。
その答えを知るには、小野田さんと話す他ない。
でも、その一歩が、怖かった。
その数分後、SHRを終えた頃。
「あれ?瑞希いるじゃん?」と聞こえたことは
なかったことにすべきだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます