13-6(65)
私は来る日も来る日もひなの帰りを待ち続けたが彼女が戻って
来ることはなかった。
ひなと共に暮らした風景に心が押し潰されそうになる毎日に加え、
ひなに対する自責の念や空虚感、そういった様々な思いに耐えかね
た私は遂に限界を迎え村を去る覚悟を決めた。
村を去る前日、あの地で全面的にお世話になったショ―ちゃん、
楽しませてくれたうさぎクラブの女の子達、そして愛しいひなに
最初で最後のメモを残した。
当時を振り返ると早朝まだ薄暗い中を私は村を訪れた時以来の
リュックを背負い足早に村を出たような記憶はあるが実はその後の
行動がどうにも思い出せない。
いや正確には思い出せないのではなく意図的に意識を遮断し、
何も考えないようにしていたのかもしれない。
それでも特区の改札通り抜けの際、突如襲い掛かったペナルティー
による体全体の激しい痛みは今も尚忘れられず、それはまるで骨が
砕け散るかのような激痛だった。
もちろん未だに節々に痛みは残り、あの時感じた42年分の急激な
老化による激痛に比べればはるかにマシだが私の心の傷みは今も
当時と変わらず私を締め付ける。
私はひなに対し本当に申し訳なく思ってるし、ずっと悔やんでいる。
その辛さから逃れるため私はずっとこの事実に背を向けてきたが
人生残り少なくなったせいなのかここ最近初めてひなと過ごした日々
を詳細に思い巡らせてしまった。
ひな……。
夢でもいいからもう一度ひなに……、ひなに会いたい。
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