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ストーンは瞬く間に村人達へ浸透し高価なレアストーンは裕福な層へ、
通常のストーンは中間層へと渡り、物々交換に代わりストーンが硬貨として
広く普及し始めるようになった。
そのおかげで僕達のお店もすこぶる好調で裕福な村人達の社交場と
して村では知らぬ者はいないほど有名になりつつあった。
「ひな、今日も儲かったな!」「見てみ! レアストーンだらけやで」
「キラキラしてて色が変わるんやね!」
「そやろ! そんだけ貴重ってことや」
「ひな、まだ明るいし今から市場に買いモン行こか!」
「うん! 行く! 行く!」
この頃を境に僕達の生活が大きく変わり、戸惑うひなを尻目にかつて
経験した事がない贅沢な暮らしに僕は完全に有頂天になっていた。
「ひな~ どれにする? 好きなん選び」
「ひな、これがいい」
「え~っ、こんなんでええの?」
「ねぇ~ もうちょっと豪華で可愛い服ないの?」と店主に尋ねると
奥から複雑な編み方に珍しい貝殻がセンス良くあしらわれた
見るからに高そうな服を出してきた。
「ひな、アレどうや」
「ええよ、高そうやし」
「そんなん気にせんでエエよ」
「そやけど~」
「じゃ~ それと今ひなが持ってるコレ2つともちょうだい」
「ええのん?」
「ええよ、ひなお店頑張ってるもんな!」
その後も僕達は珍しい果物や野菜など買い物を続け、お互い両手
いっぱいの荷物を抱え、ひなと鼻歌まじりに市場を闊歩するようす
がこの日だけでなく毎週のように続き、時には店主に対し横柄な
態度を取ることもしばしばあった。
「なんだ~ こんな物しかないの?」
「うん、今日はこれだけだよ」
「今日はって、いつもたいしたモン置いてないけどな」
「ひな行こか!」
またある時は自身の私欲を抑えきれずかなり強引な手法で
相手を困らせることも多々あった。
「え――っ! もう売り切れちゃったの?」
「うん、人気商品だから昨日の昼には全部売れちゃったよ」
「もう残ってないの?」
「採れる数に限りがあるんだよ、あるわけないじゃん」
「あのさ~ 僕のこと知ってるよね?」
「ソ、ソラさん…… だろ」
「そうだよ、僕だったら他の村人の2倍、いや3倍の値段で買ったのに」
「本当に?」
「もちろんだよ、だから今度入荷したら3つばかし奥にしまっといてよ」
「えぇ~」
「えぇ~って何だよ」
「オレウソ付きたくないもん!」
「なに言ってんだよ、商売ってそういうもんなんだよ! ウソがイヤ
ならハナから値段上げちゃえよ」
「わ、わかったよ……、次入ったらソラさんの分置いとくよ」
「そう、なんか悪いね。じゃ、よろしくね!」
「ひな行こか!」
無言のひなの手を引き、当初予定していたお店に寄るはずが突然
ひなが帰りたいと言い始めた。
「どないしたん? ひな、おなか痛いんか?」
無言のまま首を横に振るひなの顔を覗き込んだ。
すると今まで見せたことがないひなの表情に僕は一瞬戸惑ったが
気にせず続けた。
「何スネてんの? お友達となんかあったんか?」
僕は買い物袋から果物を取り出しひなに渡そうとするもあっさり
拒絶されひなはこちらを振り向くことなく1人で歩き始めた。
「ひな、待って~な~」「何怒てんの~」
「ひぃ~な~ぁ!」
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