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〈ザ― バシャ! バシャ! シュワ―…… シュワ―……〉


「宮下さん……、宮下さん!」


「えっ? す、すみません。考え事してたもので」

「痒い所ないですか?」

「ええ、特に」

「新人さんなのにずいぶん上手だね」

「いえ、そんな、まだまだです」

「ところでずいぶんお若いのにどうしてこの仕事選んだの?」

「私、少しでも誰かのお役に立てる仕事がしたくって初めは看護師 

も考えたんですが介護施設を見学して結局この道にって感じです」

「そうですか、大変だと思うけど頑張ってね!」

「はい! ありがとうございます」」


 私も同じだった。 

 私を必要としてくれる、それだけで十分満足だった。

 でも私は変わってしまった。

 変わりゆく私にひなは戸惑いながらも彼女にしか分からない”何か”

を感じ、片時も私の元から離れようとはしなかった。

 その意味するのは何なのか当時理解出来なかった私のせいで 

取り返しのつかない事態に発展するとは……。

 

 ひな、ごめんな、本当にごめんな。


「宮下さん、どうかされました?」

「あっ、いや、もういいんで申し訳ないけど流して下さい」

「分かりました」


 蘇る記憶を頭から降り注ぐ激しいシャワーでほんの少しでも 

洗い流してしまいたかった。

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