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お店が完成しオープンを間近に控え、僕達が試食を繰り返している頃
突然ショ―ちゃんが尋ねて来てくれた。
「おぉ~ いい感じに仕上がってるじゃない!」
「内装はほとんどひなやったんだ」
「ひなちゃんやるね~」
「ひな~ ショ―ちゃんにジュース持ってきて~」
ひなはジュースの入ったカップに全神経集中させ、まるでロボット
のようなしぐさで運んで来た。
「い、いらっしゃいませ!」「どうぞ……」と少し震えながらテーブルに
そぉろ~りと置いた。
「ありがとう、ひなちゃん!」
「なっ! すごいだろ、ひなは」
「うん、ひなちゃん上手だよ!」
ひなは恥ずかしかったのか顔を赤くし無言で逃げるようにキッチンに
消えてしまった。
「実は牢屋の件なんだけど今日多数決で決定したんだ」
「そっか~」
「本当にこれで良かったのかなって未だに思うんだ」
「ショ―ちゃん優しいからな~」
「札制度を提案した時も今と同じような気分だったよ」
「ふふっ」
「なんだよ!」
「僕ね、そんなショ―ちゃんが大好きだしすごく尊敬してるんだ」
「よせや~ 気持ち悪い」
「と、ところでココで何出すの?」
「基本、焼き魚や野菜スープなんだけど出来るだけ交換のハードル
下げよかと思ってるんだ」
「どうして? 焼き魚って結構交換ハードル高いよ」
「僕、ひな見てて分かったんだ。美味しい物って一瞬かもしれないけど
イヤな事を忘れさせてくれるし、とても幸せな気分にしてくれるんだよ」
「だから辛い思いしてる人に出来るだけ食べてもらいたいんだ」
「ところで味、大丈夫なのか~」
「たぶんね」
「それにしてもひなちゃん、ずいぶん楽しそうだな」
「うん、僕もひなのおかげで毎日楽しいし本当に幸せなんだ」「こんな
僕でもひなは必要としてくれるしね!」
「でもいいのか~ ソラちゃんの町じゃ今頃ソラちゃんがいなくなって
みんな困ってるんじゃないの?」
「えっ! い、いいの、いいの」
「まっ、オレとしてはここに居てもらえば相談に乗って貰えるから
大歓迎なんだけどね!」
「あっ! ショ―ちゃん誰か来たよ」
「石屋さんだよね」と若い男性がショ―ちゃんに声掛けた。
「うん、そうだけど」
「これと交換してくんない?」
「いいよ、じゃ~ いっしょに店に戻ろう!」
ショ―ちゃんが帰った後僕とひなはオープンを前に何度も何度も
シュミレーションを繰り返し来たる本番に向け着々と準備を進めた。
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