6-5(29)
しばらく歩くと河川独特の匂いが鼻をつき、その先から賑やかな
村人達の声と共に土手が現れ、下方にゆったりと流れる川が見えた。
川は幅15メートルほどで川底が透けて見えるぐらい透明度が高く、
そこで数名の村人達が洗濯したり容器のような物に水を酌んでる
様子はまさにココは彼らにとって必要不可欠な場所のようだ。
僕は川から少し離れた川原に腰を下ろしおにぎりをほうばり
ながらしばらく様子を伺うことにした。
しかしみんな仲がいいというか、いい大人なのにキャ―キャ―と
テンションが異様に高いことに再び疑問を感じ始めた。
あのショ―タっておじさんも年のわりに妙にテンション高かったし
言葉使いも幼いと言うか、まるで子供と話してるようなそんな
錯覚すら覚えたのは……!
も、もしや!!
これはあくまで仮説だか、もしかすると見た目はおじさんでも
中身は子供なのかもしれない。
そうだ! そう考えると彼らの言動に説明が付く。
子供だから怖くてお肉を捌(さば)けない。
子供だからお酒が飲めない。
子供だから言葉をあまり知らない。
子供だから環境整備が遅れてる。
……きっとそういう事だ。
ショ―タさんはもちろんのこと今日僕が話した村人は皆そろって
笑顔が素敵で純真な目をしていた事が全てを物語っているじゃないか。
では何才ぐらいなんだろうか? 僕は再び川辺に目を向けた。
あのはしゃぎ様から推測すると小学校1~2年ぐらいだろうか。
1~2年って事はたぶん6、7才ぐらいかな。
あれ? この駅確か7番駅だったような……えっ! まさか駅の
番号が年齢って事?
待てよ、待てよ、ここは冷静に冷静に。
まず最初に訪れた町は確か15番だったよな。
あそこはえ~っとやたら町全体が活気があって前向きで、
たしかカフェでお茶した時近くのOL風のおねえさんが
愛に生きるのとか言ってたような言ってなかったような……。
あと中年風の男性2人は将来についてかなり熱く語っていた事に
加え今考えてみるとあのカフェ自体もどことなく学園祭や
文化祭っぽかったってことは……!
そっか― 彼らは皆中身が15歳、何事にも前向きで野心的、
そして愛を重んじるティーンエイジャーだったんだ。
15歳の能力では携帯電話や電車についてまだ未開発なのは
分かるような気がする。
そう考えると2回目の75番の町も容易に説明がつく。
女子高生達が話した旦那は空気のような存在というセリフや
不慣れな携帯電話の扱いに大きな呼び出し音、あとトイレが
近かったり忘れ物専用ボックスの設置に歩く歩道の整備など
全てがしっくりくる。
そういう事だったのか、タイムマシンなんかじゃなかったんだ。
でもこれはまだ僕の勝手な憶測にすぎず明日この村で更に
詳しく検証する価値がありそうだ。
すでに辺りは一面真っ暗となり僕は手を洗うべく川辺に近づいた。
すると暗闇の奥の方から微かな音がするので恐々凝視すると
恐れていた野生動物ではなくこの村に住む女の子と分かり
僕はホッと息を吐いた。
その少女は何か塊のような物を抱えキョロキョロと辺りを伺ってる
ようにも見えるがはたして彼女は何をしているんだろうか……。
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