2-14(15)

 僕の切実な願いが叶ったようで27番駅通過後列車の速度が徐々に 

減速し無事特区に到着した。

 良かった― ホント良かった。 

 扉が開くと同時に飛び降り、あの長~いエスカレーターを駆け上がり 

出口方面に向かった。

 なぜか館内が異常に寒く、吐く息の白いのが気になったが実際 

出口を出ると更に驚きの光景が目の前に広がっていた。

 それはまだ10月下旬だというのに辺り一面真っ白な雪景色だった。

 うそ~ 東京ってこんなに早く雪降るの?

 当初の予定ではあの居酒屋で一杯やろうと思ってたが雪で電車が

動かなくなったら困る為、仕方なく寮に直行することにした。

 寮に無事着き、部屋に入ると突然強烈な睡魔に襲われ、夕食も

取らずそのままの姿で僕はでまるでベッドに吸い寄せられるように 

深い眠りについた。

――

――――

――――――

 朝いつもより少し遅めに目覚めインスタントコーヒーにお湯を注ぎ 

テレビを点けた。

 するといつも日曜にやるはずの旅番組が始まらないのに多少 

違和感を覚えたが、仕方ないのでニュース番組に変えたところ  

テレビからまさに耳を疑うようなセリフが飛び込んできた。


『週末いかがでしたか? さあ! 今日から週の始め、気合を

入れて頑張りましょう!』


 えっ? 週の始めってことは今日は月曜日? あれ? 昨日 

土曜日だったから今日は日曜日じゃないの。

 慌てて時計を確認すると確かに月曜日となっていた。

「うわっ!」

 僕は急いでスーツに着替え、寮を飛び出し殆ど空きスペースの

ない満員電車に押し入った。

 今までまったく経験のないすしずめ状態になんとか耐え会社に

到着したのは就業時間3分前だった。

「お、おはようございます」と息を切らし挨拶するとみなさん何故か

キョトンとされてる。

 僕は異様な空気を感じながらも席に着こうとすると島田課長から  

あきれ顔で注意された。 

「宮下くん、まだ正月ボケか?」

「は?」

「キミは地下、地下の資料部だろ!」

「えっ? どういう意味ですか?」

「どういう意味ってキミ大丈夫か?」と課長はカレンダーを指さした。

 僕は意味が分からずふとカレンダーに目を向けると一瞬思考が

止まった。

「1月? 年が明けてる……」

 突然混乱状態に陥った僕は急に気分が悪くなりその場にしゃがみ 

込んでしまった。

 だがその後記憶があまりなく気づくと社内の医務室に横たわり微かに

聞こえる課長の声に耳を傾けていた。

「彼の状態が落ち着いたら今日は帰るように言ってやって下さい」

 そしてその言葉を最後に再び意識を失った。

 何時間経ったろうか……目覚めると既に夕方過ぎのようで

窓の外は小雪がチラホラ舞う中、医務室の先生が心配そうに

僕の顔を覗き込んでいた。

「ご気分はどうですか?」

「はい、なんとか、大丈夫みたいです」

「特に問題ないみたいだけど今後の経過次第では病院で検査して

もらった方がイイかもね」

「そうですね、お世話になりました」とベッドを降りようとすると

もう少しの間ベッドでゆっくりするよう先生に促された。

 僕は先生に従い小雪が舞う窓の外を見つめながら今回の一連  

の不可思議な出来事について考え巡らせた。

 はたして今が夢なのか? 或いはあのループラインが夢なのか。

 土曜日の出来事が真実だとすればこの加速度的な時間経過と 

何か関連があるのだろうか?

 僕はまったく答えが出せぬまま、ただひたすら窓の外を見つめ 

続けた。

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