第17話 俺は、嘘が付けない…

「おはよう、唯香ちゃん」


「おはようございます、杏奈さん。時間ありますし、上がってきます?お母さんも居ますけど」


「うーん、じゃあお言葉に甘えて上がらせてもらおうかな」


唯香は笑顔でリビングまで杏奈を連れてきた。


「おはよう、杏奈」


「うん、おはよう。たっくん。それに、お久しぶりです、たっくんのお母さん。それとも、お義母さんと言うべきでしょうか」


「呼びやすい方でいいわよ。これからも拓馬をよろしくね」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


「もし、うちの息子が浮気しようもんなら、私に言ってくれたら、叩き治すから。安心してね」


「何言っての、母さん!?」


「大丈夫ですよ、お義母さん。たっくんは誰にも渡しません、それにたっくんの弱点も知ってますよ!」


と少しだけペロッと舌なめずりをして言う杏奈を見て、昨日のことを思い出し、背筋がゾクッとした。それからは、付き合い始めた経緯やいつから好きなのか、告白はどっちがしたのかなどの話で少し盛り上がった後に、学校に向かった。


***

学校に向かう間は特に何かあることも無く、いつも通りだった。誰とは言わないが、未だ殺気に近い視線も両手で数える程度の人から感じるが、それも今では気にならなくなった。


「それじゃあ、今日は私がたっくんの教室に行くね」


「わかった。あと甘噛みは学校ではやめてね」


「むー、何で!絶対はむはむするから!」


「お願いだからやめて、そんな姿見られたら、弄られるだけではすまないから」


「んー、その時考える!」


(それって、絶対するよな…とりあえず、何とか、説得するしかないか…)


今、説得するのは無理そうだし、時間もない。ひとまず教室に向かった。


「おはよう、裕也、侑芽」


「「おはよう、拓馬」」


「息ピッタリだな、バカップル」


「それは拓馬たちもだと思うけど」


「そうそう、違うとか言ったらヤバいくらいにね」


と裕也と侑芽に茶化された。


(やっぱり、周りからは俺と杏奈はそう見えるのか?)


それは、いいとしてもなんか二人がすごい見てくる…俺の顔に何か付いてるのか?


「なぁ、さっきからどうした?二人して人の顔見て」


「いや、だってね…」


「うん…」


「なんだよ」


特に変わってないと思ってる俺は、不安になる。


「本当にどうした?言ってくれないとわからん」


「じゃあ、言うけど…耳どうしたの」


「うんうん、なんか左耳だけ少しほんのりと赤くなってるね」


「……え、マジ…」


裕也と侑芽は『うんうん』首を縦に振る。ヤバい、絶対にバレてはいけないのはこの二人だ。特に、侑芽は勢いで言っちゃうことがあるから要注意だな。でも昨日、唯香に俺はわかりやすい反応をするとまで言われたこともあり、誤魔化せる自信がない。


「…多分、蚊に刺されたんだと思うよ」


よし、これなら大丈夫だなと思った矢先に


「それにしては、膨れてないよね。耳って刺されるともっと、腫れるはずなんだよね。もしかして、キスマークだったりして?冗談よ」


「……そうだよな、冗談だよな。(はあ、良かった)」


俺の小声で出たいらない言葉を侑芽は聞き逃さなかった


「えっ、良かったって、え!これ本当に、キスマークなの!」


おい、教室全体に響く声で爆弾発言すんなや!


「そ、そんなわけにゃい!」


「「あ、噛んだ」」


「…穴があったら入りたい…」


と盛大に噛んだ俺は、顔を真っ赤にして、その場でうずくまることしか出来なかった。その姿を見て『まあまあ、後でゆっくり聞いてやるから、こっそり教えろよ。それに早く言った方が楽だぞっ!』ってニヤニヤしながら言って裕也と侑芽は席に戻っていった。その後、根掘り葉掘り聞かれたのは言うまでもない。

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