第15話 甘噛み
「たっくん、もっとギューってして」
「いいよ、このくらい?」
「うん…たっくんにギューってされると安心する」
今の俺は、幼児退化したかのように甘えてくる杏奈を膝に乗せて、抱きしめている。意識をなるべく反らしてるのにもっとギューってしろと言われると、嫌でも反応してしまう部分がある。バレたら、恥ずかしすぎて…。よし、考えるのをやめよう。何故こうなったかを説明すると、まず、部活が終わって校門前でイチャつくのは恥ずかしいという俺の感情を優先して『二人っきりの時に』と言ったら、その場はなんとかなった。でも、杏奈が『いっぱい甘えるから、覚悟しててね』と言って、恋人繋ぎにさらには、体もピタってくっついてきた。校門前の1部の生徒から『キャー!』って声が響いていたが、杏奈の豊満な部分が密着している事もあり、そんな事を考える暇などなかった。更には、お邪魔する予定ではなかったが杏奈の家に行くこととなり、杏奈の部屋に直行。そこからは、杏奈に主導権を取られ『ここなら、二人っきりだから…甘えていい…?』と上目遣いにうるうるとした涙目という最強コンボで言われ、逆らえなかった俺は、首を縦に振った。そして、今に至るまで、杏奈の求めている事にずっと答えている。
「杏奈、一旦離れて、ずっと、正座してるから足が…」
「あ、ごめん…はしゃぎすぎた」
「いや、いいよ。さっきの杏奈可愛かったし」
「嬉しいけど、今は、言わなくてもいいの!」
と杏奈は、さっきまでの行動が恥ずかしくなったのか、顔をリンゴのように赤くして、ポカポカ俺の胸を優しく叩く。
「じゃあ、今度はたっくんが私の膝に座ってみる?」
「え、いや、俺はいいよ。恥ずかしいし…」
座りたいって言う勇気は今の俺にはない。
「じゃあ、こうする」
杏奈は俺の後ろから抱きしめてきた。杏奈の吐息が『ふぅー』と優しく耳に当たった俺は、ほんの少しビクッてしてしまった。それを見逃さなかった杏奈は、意地悪そうな笑顔で
「あれれ、たっくん。耳弱いの?」
「い、いや、そんな事はッ、ひゃぅ」
俺は出来る限り、声を出さないように我慢していたが、杏奈が耳を甘噛みした瞬間、我慢出来ずに声が出てしまった。
「たっくん、さっきの反応、女の子みたいで可愛い…じゃあ、はむはむ…」
「ひゃぅ…杏奈。そこは…耳は、ダ、ダメぇ…」
「いつもカッコいいたっくんが弱々しくなってる…可愛い、もっと見たい。これからは、学校でもいっぱい『はむはむ』あげるからね、うふふ♪」
甘噛みされた俺は全身が強張ってうまく力を入れられず、杏奈を引き剥がすどころか、杏奈にベッドへと押し倒された。そこからは、俺が悶絶するところを嬉しそうに甘噛みや息を吹き付けては、見つめることを繰り返すうっとりとした表情の杏奈が俺の体の上にあった。
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