第8話 当たってるんじゃなくて、当ててたんだよ!

お弁当を食べ終えた俺と杏奈は近くにいる生徒のほとんどの視線を集めていた。それもそのはず、お互いに肩を寄せ合って座っている。そして、杏奈は俺にペタッとくっついているのが主な原因で、さらに、平均より少し大きなものが俺の腕に当たるたびに顔を赤くする俺を見て、周りの男子たちから殺気が飛ばしてくるのだ。


「ね、ねぇ、杏奈」


「ん、何、たっくん?」


「いや、その〜、あ、当たってるんだけど…」


というのも肩を寄せ合うだけなら登校中にもあるのでドキドキするだけで済む。しかし、今はそれに加えて、とても心地の良い柔らかなもの、多くの人がメロンと例える大きなものが二つ、まさに今腕に当たって形を変え…俺の理性は吹っ飛びそうなのである。


「あ、バレちゃった! 当たってるじゃなくて、当ててたんだよ!」


可愛い! もしかして、言わなかったらあの感触を休憩時間の間ずっと感じられたのか……勿体無いことしたな…


「残念そうな顔してるよ。ねぇ、たっくん、耳貸して」


「いいけど」


なんでだろうと思っていると、杏奈は耳元で


「私の胸は、どうだった?」


と囁いた。な、ななな、何を聞いてるんですか!? あと、どのように答えるのが正解なんだ? と慌てる俺の姿を見て満足した杏奈はまた耳元で「二人っきりの時に教えてね」と言われすぐに予鈴がなり、昼休憩は終わり教室に戻った。


***

「お、拓馬、おかえり。なかなかに目立ってたらしいな」


「周りからの視線を集めすぎでしょ、ふふ」


「笑い事じゃないんだよ、まあ、最高の時間なのは間違いないけど」


「確かに彼女とイチャイチャできるのは良いことだよな〜」


うんうんと頷きながら、裕也と侑芽の三人で話している時は、大体クラスの彼女(彼氏)持ちじゃないクラスの人たちはひどく心を抉られ、心ここに在らずのような様子だった。


「なあ、拓馬。提案なんだが、今週末の日曜日って部活休みか?」


「日曜日は休みだけど」


「ダブルデートしないか?」


と裕也が聞いてきた…は?


「なんで?」


と聞き返すと侑芽がすぐに答える


「その方が、お互い緊張しすぎないでいいし、先輩には聞きたいこともあるしね。これは私たちからのアドバイスだよ」


なるほど、相談相手が増えるのはいいことだし、杏奈がオッケーならそうするのも悪くないかも、それにこれなら確かに、変に緊張しなくて済む。


「わかった。杏奈に聞いてからになるけどいいか?」


「ああ、わかった。あとで連絡してくれ」


と言って午後の授業が始まるのだった。


***

一方、杏奈が教室に戻ると


「杏奈、どうしたのそんなにニコニコして?」


「なになに、彼氏くんといいことでもあったの?」


と女子の質問に男子も聞き耳を立てている。でも、今はそんな質問などどうでもよい。だって、明日はたっくんの愛妻弁当? が食べられるのだから。


「ふふ、実はね、たっくんがお弁当作ってくれるの!」


と答えると「いいな〜」や「彼氏が作ってくれるの羨ましい」などの声が聞こえる。


「杏奈は作らないの?」


とあるクラスの女子は聞いてきたが


「私、料理はあまりできないから」


「えー! 以外、杏奈にも苦手なことがあるんだ」


と言う声に七海が


「杏奈に料理をさせると色々大変だよ。だって、調理実習の時--」


と私の黒歴史を…


「七海…、ちょっとこっち行こうか…」


「あ、ヤバ、た、助けて〜」


と七海は杏奈にチャイムが鳴る少し前までひどく怒られたのだった。

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