第7話 昼食は一緒に

拓馬が質問ぜめはされている頃、杏奈も特に女子からの質問責めでになっていた。


「杏奈の彼氏って一年生だったの?」


「そうだよ」


「今日、手繋いで学校に来てたでしょ!」


「見てたの!?」


という言葉に男子は、「羨ましい」という声が絶えなかった。その後も、質問が飛んでくるのだった。


「やっと、終わった…」


と質問責めの波を乗り越え、机に突っ伏していると、七海がやってきた。


「おはよ! お疲れだね〜、杏奈」


「七海、バラしたでしょ! なんで勝手に言ったの!」


と杏奈は珍しく怒っていた。


「ごめんごめん。まあ、杏奈も言っちゃダメとは言ってなかったじゃん!」


と七海は言い訳をして、杏奈は口止めしなかったことを後悔していた。


「それで、ラブラブカップルはお昼はどうするのかな?」


「ラブラブカップルなんて恥ずかしいから言わないで。あ、でも、お昼はたっくんと食べるから」


「はあ、こんな幸せそうにしてる杏奈始めて見たよ」


という七海の言葉に周りはうんうんと頷いていた。


***

チャイムがなり昼休憩になった。杏奈はすぐに授業道具を片付け、拓馬の教室に向かった。

「たっくん! お昼食べよ!」


と拓馬に向かって言うとクラスの全員が杏奈に視線が集まった。


「あ、杏奈〜、今行く」


と返事をした拓馬に視線が集まる。


「くそ! なんであいつなんだ!」


という声が聞き流しながら、弁当を持って杏奈のところに向かう。


「それじゃあ、中庭に行こ!」


と杏奈に手を引っ張られながら向かった。二人が中庭に来た時には、数組のカップルと思われる生徒たちがいた。拓馬と杏奈はちょうど日陰になっているベンチに座って昼食をとることにした。


「たっくんは、お弁当いつも作ってるの?」


「いつもではないけど、作らない日の方が少ないかな。杏奈は?」


「私は、あんまり料理が得意じゃないからこの卵焼きとかくらいしか作らないから、お母さんが作ってくれてる」


「そっか、俺の場合は二人とも夜はまあまあ遅いし、朝は早いし、唯香は唯香で朝は弱いから朝食と弁当は自然と毎日俺が作るようになったんだ」


「じゃあ、明日、私の分も作ってきて欲しいな〜」


と杏奈は言って見つめてくる。そんな潤んだ目で見つめないでも作ってあげるんだけど、ちょっと意地悪しようかな


「えー、どうしようかな〜?」


「むー! 唯香ちゃんには作ってあげるのに私には作ってくれないの?」


さっきより杏奈の目が潤んでいるのを見て流石に可愛そうに思った拓馬は


「冗談だよ、可愛いからつい意地悪したくなって。ちゃんと杏奈のお弁当も作ってくるから」


「もう! そんなことするたっくんにはお仕置きです」


「え〜、ごめんって。何でもするから許して」


「それじゃあ、目を閉じて」


「これでいい?」


「まだ目を開けないでね」


「わかったけど、痛いのはな--」


拓馬の言葉はふんわりした何かによって遮られた。そっと目を開けると杏奈のお弁当にあった卵焼きが口に当たっていた。


「キスだと思った?」


と杏奈は小悪魔のような微笑みを浮かべた。


「うっ…思ったよ、あむ。美味しい!」


くそ〜、めっちゃ期待してしまった。恥ずかしい…でも、卵焼きは今まで食べた中でも格別に美味しかった。


「よかった」


杏奈は胸をなでおろし、それと同時に自分が何をしたのか理解して顔を真っ赤にしながら言った。


「…間接キスにしちゃった」


と小さな声で言った。拓馬もその言葉に恥ずかしくなり顔を同じように真っ赤に染めていき、周りのカップルたちからは暖かい視線が、そして、杏奈に振られた人たちは嫉妬と殺気の視線が送られるのだった。

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