第6話 彼女との初登校
朝食を終えた二人は、身支度を済ませてあとは出発するだけとなった。
ピンポーン、ピンポーン
とチャイムがなった。
「唯香〜、準備終わってないから出てくれ」
「仕方ないな〜、はーい、今出まーす」
と唯香は返事をして、玄関へ向かいドアを開けると、
「どちら様で…って杏奈さん! おはようございます! どうしたんですか?」
唯香は挨拶すると同時に、なぜ杏奈が家に来たのか全くわからなかった。
「おはよ、唯香ちゃん。たっくんいる? 迎えに来たんだけど」
「たっくん? 迎え? も、もしかして、お兄ちゃんのことですか!?」
「うん、そうだよ! …もしかして、たっくんから聞いてないかな、私たちが付き合ってること?」
「!? 初耳です! ってお兄ちゃん! 杏奈さん来てるよ」
と唯香は言うと、すぐに
「今すぐ行く。あと唯香〜弁当忘れてる!」
と拓馬は唯香と自分の弁当袋を持って来た。
「お、おはよ、杏奈」
「おはよ! たっくん」
唯香はすごく驚いていたが、時間が迫っていたので、
「もう時間がないので、またゆっくり話を聞かせてくださいね、杏奈さん!」
「うん、いいよ。それじゃあ、行ってらっしゃい」
「あとお兄ちゃんには、帰ったら色々聞くからね! 行ってきます」
「はいはい、行ってらっしゃい」
と言って杏奈は急いで行ってしまった。
「そろそろ私たちも行こっか?」
「そうだね」
昨日の今日だからまだそこまで付き合っていることはバレていないと思っていたので、大変な一日にはならないだろうと思いながら、仲良く、手を繋ぎながら学校に歩く二人だった。
***
学校に近づくにつれて同じ学校の生徒も多くなってきて、周りからの視線がすごくなってきた。特に男子の多分先輩にあたる人たちだろう。すごく怖い視線が刺さってくる。まあ、学校一可愛いと言われる杏奈が男と手を繋ぎながら今まで見せたことのないような幸せそうな笑顔を浮かべていれば仕方のないことだろう。そんなことを考えていると、
「たっくん、お昼一緒に食べない? 教室まで行くし」
「それは、嬉しんだけど、杏奈は大丈夫なの? いつも一緒に食べてるグループとかあるじゃないの…」
というのも、友達関係とは難しいもので、万が一にも杏奈の友達関係とかで問題を起こすわけにはいかないと拓馬は思っているのだ。
「大丈夫だよ。だって、もうみんな知ってるもん…部活のみんなと一緒にいることが多いだけし。それに七海が昼休憩になったらバラしちゃうと思うし」
「ああ、たしかに白井先輩が好きそうなことですからね…」
とても嫌な予感がする。と拓馬は直感的にそう思った。でも、お昼を一緒に食べることとは関係ない。
「それなら、中庭で一緒に食べようか」
「わかった。迎えに行くから勝手にどっか行かないでね」
「わかってる。それじゃ、昼休憩でね」
と言ってお互いクラスの教室へ向かった。
***
拓馬は、教室に入るとまずクラスの男子や女子からの質問責めにあった。
「音無先輩と付き合ってるって本当なのか、拓馬?」
「誰から聞いた?」
「先輩たちがそんな話をしてたのを聞いた。それで、否定しないということは付き合ってるんだな」
「黙秘していいか?」
「「ダメに決まってるだろ」」
と男女問わず全員に言われた。
「裕也助けてくれ」
「大変なことになってるな」
「そういえば、さっき音無先輩と一緒に学校来てたでしょ、ユウと見たけど?」
と裕也は笑いながら言って、侑芽は爆弾発言をした。
橘 裕也(たちばな ゆうや)は俺の親友でそして、すでに幼馴染の侑芽と付き合っている。
中森 侑芽(なかもり ゆめ)は裕也の彼女であり、名前で呼び合う数少ない女子の友達である。
「侑芽ちゃん、それは言わないという約束でバレないようにこっそり見てたんだけど」
「あ、そうだった。まあ、いいや」
良くないよ! と拓馬は心の中で叫んだ。その後も、質問責めは終わることがなく結局、先生が入ってきてやっと終わるのだった。
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