第5話 約束
夕食と風呂を終えた拓馬は、課題を終わらせた。そして、杏奈の連絡先を開いて電話するかしないかで悩んでいた。
「うーん、どうしよう!? 開くまでは良かったけど…いざとなると」
あと一つボタンを押すだけで、杏奈に電話がつながる。だが、それを押すには勇気がいる。みんなもわかるはず。だって、好きな人とのはじめての電話で緊張しない人などいるはずない! 拓馬は電話するか悩み続けた。電話をかけようとした時、電話が掛かってきた。しかも、相手は杏奈からだ。拓馬はびっくりすると同時にすぐに電話に出た。
「も、もしもし」
「あ、たっくん。こ、こんばんは」
「こ、こんばんは」
「も、もしかして、緊張してる?」
「してるよ。杏奈もそうなの?」
「そうだよ! だって、たっくんとは…はじめてだし…」
「そっか、思ってること同じだったんだね」
「そうだね。…それで…さ、明日なんだけど一緒に学校行かない?」
「ぜ、ぜひ一緒に行きたいです!」
「もう、敬語は使わない約束でしょ!」
「ご、ごめん、やっぱり慣れなくて」
「ふふっ、少しずつでいいから慣れてよね!」
「頑張るよ。それで、明日は迎えに行こうか?」
「ううん、私が迎えに行くから」
「わかった。待ってる」
と言ってからも話は絶えなかった。
「それじゃあ、おやすみ、杏奈」
「おやすみ、たっくん」
と言って通話を終わり、明日を楽しみにしながら寝るのだった。
***翌朝***
「ふぁ〜、いつもより眠いな…」
というのも、昨日は、杏奈との電話で杏奈が迎えにきてくれるということが嬉しすぎるがあまりすぐに寝付けなかったのだ。
「今日は、自分の弁当も作れそうだな」
拓馬は、朝食と昼食の準備を始めた。
大体の準備を終えて、唯香を起こす時間になった。唯香の部屋は、二階の俺の部屋の向かい側にある。
「唯香〜、起きろ」
「あと…5分だけ…」
唯香がこんなことで起きないことくらいは知っている。はぁ、妹とはいえ、胸元の谷間や太ももなどが見え隠れしていて、目のやり場に困るくらい寝間着がはだけている。しかし、起こさないわけにも行かず、脇やお腹周りをツンツンと突いた。
「ふあっ、いにゅっ、ンンッ、お、起きる! 起きたから! やめて、こそばいから!」
と少し息を荒らしながら唯香は言い、その言葉を聞いてすぐに、拓馬は唯香を突くのをやめた。
あ〜、少し突いただけであの可愛い反応されると楽しくてもっとやりたくなる。だが、一度だけやりすぎてその日、一日中口を聞いてくれなかったことがあり、それ以来、唯香が起きたらすぐにやめることにしている。
今後、唯香に嫌われたら、俺はきっと泣いてしまう。…言っておくが、シスコンじゃないからな!
「おはよ、唯香。朝ごはんできてるから」
「ありがとう、お兄ちゃん。すぐ行くから」
と言う唯香の言葉を聞いて拓馬はリビングに向かった。そして、唯香にとっての事件は、これから始まるのだった。
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