第3話 近くにいたいの!

「それじゃあ、聞かせてもらおうかな〜!」


と言って、拓馬と杏奈への質問攻めは始まった。


*一時間後*


顧問の先生が来たことにより、やっとの事で質問責めから解放された拓馬と杏奈は、疲れ果てたような顔をしていた。


「やっと、解放された…」


「そうだね…まだ、体を動かしてないのにすごく疲れた気がする」


と拓馬と杏奈が話していると、


「今日は二人でペアになってね、私は先輩とペア組むから」


と白井先輩はニヤッとしながら、行ってしまった。


「じゃあ、今日はよろしくね」


と言われただけなのに、目の前の彼女を見ると拓馬は顔が熱くなるのを感じながら、頷くことしかできなかった。


***


部活が終わり、下校時間になった。

拓馬は着替えを済ませ、校門前で杏奈を待っていた。


「たっくん、おまたせ」


「それじゃあ、帰ろうか」


「うん。たっくん…手、繋ぎたい…な」


と顔を赤くして小さな声で杏奈は言った。


「あ、ああ」


としか言えなかった。だって、こんな小動物が泣くような小さな声で呟かれ、手を掴まれては思考回路が停止するのは仕方のないことだろう。

そして、杏奈は手を繋ぐだけではなく肩が触れ合う距離までくっついて来た。


「この状態で帰るの?」


「たっくんは嫌だった?」


「嫌じゃないけど、目立つし…」


「じゃあ、みんなが見てないところなら良い?」


「え、う、うん。…でやっぱり、このままの状態で帰るの?」


「私は、たっくんの近くにいたいの!」


あぁ、可愛い! じゃなくて、さっきからいろんな男子生徒から殺気のこもった視線が、そして、女子生徒からは「杏奈の好きな人って、もしかして、あの子!?」というような声も聞こえるけど我慢するしかないなと思いながら帰宅するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る