第105話 芸術家は芸術を作らない
よう、古城ろっくだ。
今日はASIAN KUNG-FU GENERATIONのリライトを聴きながら執筆しよう。
まあ、懐かしい曲だよな。この曲がリリースされた当時、僕は中学生だった。で、初めて聴いたのは高校生になってから。ちなみにアニメ版ハガレンは未だに見たことがない(笑)
……ちょっとマニアックな閑話を挟んでいい? 興味ない人は次の行間まで読み飛ばして良いから。
このリライトって曲の、Aメロのギターパート。あれってどうやって弾いてると思う? 僕にもサッパリ分からないんだ。
これ実はスコアブックを販売しているメーカーによって解釈が違っててさ。AM7(9)のローコードを使ったアルペジオの中に、一瞬だけ入るF#をどうやって出しているのか。そこが問題なんだ。
一説によると半音下げチューニングで3弦解放だとか、実は3弦だけ半音下げる変則チューニングだとか、ド根性で小指を4弦4フレットに届かせるんだとか、まあ諸説ある。
ちなみに僕が原曲を聞いた限りだと、『実はアルペジオは途中で終わっていて、リバーブ・エコーをかけ過ぎていた結果アルペジオが続いていたように聞こえただけ』って感じだと思う。
リバーブ嫌いな僕は、4弦4フレットをタッピングしてアルペジオを保ってた。これも難しいんだよなぁ。ちょっと間違うと5弦か3弦に触れて音が止まる。
でもまあ、ここは個人的にリバーブをかけたくないところなんだ。こればっかりは強いこだわりであり、譲れない所だったりする。
さて、本題。閑話休題。お待たせしました!って感じだな。
今回の話題になるのは、『芸術って何?』っていう、哲学的な話だ。具体的には、「僕はどうして読者の権利を大切にするのか?」って話と、「いま話題のイラスト制作AIについて」の豪華二本立てになる。
いやー、時代は進んだもんだよなぁ。今やAIにキーワードをいくつか入力しただけで、そのキーワードに沿ったイラストをAIが自動で制作してくれるらしい。
特定のイラストレーターが描いた手書きイラストをいくつかインプットすると、その人の画風までコピーするって話だ。いよいよペンタブもマウスもドローイングソフトも要らない時代がやってきたぜ。僕としては大歓迎! 素晴らしい時代だ。
ところで、一部の人が「AIに芸術なんか分かるわけがない」と言っているんだが、君たちはそれをどう思う?
僕はまあ、その通りだと思うんだ。AIが芸術を理解することは(何らかのシンギュラリティが無い限り)あり得ないと思うし、そもそもAIは感情を持たない。
まあ、感情のようなものをパターン化して、ある程度ランダム性を持たせることで『疑似感情』『疑似芸術性』を出すことはできるかもしれないが、所詮は偽物だ。例えば多角形の角を増やせば円形に近づくが、どこまでやっても円形そのものにはならない。それと似ている。
では、「AIに芸術作品は作れないのか?」というと、答えは「作れるよ」だ。
芸術作品を生み出すのと、芸術を理解するのは全く別のスキルだ。なので、芸術を理解しない奴が芸術作品を生み出す可能性はあるし、AIが芸術を理解しないまま芸術作品を出力している現状がそれを示している。
なんせ芸術なんか、見た人が勝手に「これは芸術だ」と言えば芸術になるだけで、作った人の意思なんか関係ないんよ。
作者がどれほどの歳月と労力をかけた作品を出したとしても、それが見向きもされないなら芸術とは呼べない。逆に、誰かが「これは芸術だ」と言えば、路傍の石も野山も空も芸術になり得る。AIが適当に出力した画像も、見る人に感情があれば芸術になり得るわけだ。
この法則、じつは小説なんかだと顕著だと思う。
小説は音声も画像も入っていない媒介なので、その辺はもっぱら読者の想像に任せるしかない。つまり、君たちが想像することで僕の小説は完成する。
例えば、僕はこのエッセイを書く時、自分の部屋に読者(君だよ。君)を呼んで、音楽でも聴きながらゆっくり話をしているつもりで書いている。
しかし、君は僕の顔も多分知らないし、声もきっと分からない。だから君の脳内でそれを補完してもらうしかない。
そのイメージ次第では、このエッセイに対する好感度も変わってくるだろう。是非とも君が好きな声優さんの美声で脳内再生してくれたまえ。はっはっは。
――と、まあそんなわけだから、僕は自分の小説を書く時、「自分だけで芸術を書き上げた」とは思ってないんだよ。
僕はただ作品を出力しただけで、それを読んでくれる君たちがいるから芸術が完成すると思っている。
僕が作曲家だとしたら、君たちは演奏者だ。
僕が書けるのはせいぜい楽譜だけで、これを独自に解釈しながら演奏する君たちがいるから楽曲が完成する。
僕がゲームを作ったら、君たちがプレイして初めて完成する。
僕がドミノを並べたら、君たちが倒すことで初めて完成する。
僕が料理を作ったら、君たちが食べることで初めて完成する。
芸術なんてそんなものさ。
だから僕は、いつでも読者からの感想や意見、批判や評価を待っているんだ。
今日も僕の話を聞いてくれてありがとう。このエッセイはカクヨムに投稿された段階で完成したのではなく、ここまで君が読んだこの瞬間に、完成したのだよ。
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