第84話 批判で折れる作品は折れろ

 よう、古城ろっくだ。今日のBGMは……何にしようかな。

 よし、あえてブルーハーツのロクデナシでも聴くか。僕が高校時代に、初めてステージに立ったとき弾いた曲だ。歌詞を引用するとJASRACが飛んでくるかもしれんが、各々ググってくれ。良い歌詞だ。

 そういや、ヒロトの名言のひとつにこんなのがある。

「ギタリストのピークは、初めてギターを持って感動した瞬間だ。あとは平行線か、落ちていくだけ」

 つまり、初心が最高にロックだし、初心を忘れたらロックじゃないってことだね。これに当てはまる人は多いと思う。……というか、僕に言わせればヒロトがそうだった。

 クロマニョンズのヒロトは、良くも悪くも歌が上手くなっちゃってたもんなぁ。ブルーハーツ時代の正統派なパンクさっていうのか、そういうのがテクニックの裏に隠れてしまった印象がある。


 さて、今日は創作界隈でたびたび話題になる『批判について』を、ちょっと深く語ろうと思う。うん。何度もこの連載で取り上げたテーマだな。

 みんな、批判の是非を語るときにさ。そもそも何をもって「やってはいけない批判」ってのを決定している?

 僕が聞いた限りだと、「名指ししたらダメ」だとか「本人に伝えてはダメ」だとか「拡散してはいけない」とかが上げられる。あとは「正当な批判はいいけど的外れな批判はダメ」とかかな。

 まあ、最後の一つに関しては「お前の視野が狭いだけだろ」の一言で済む話なんだけどね。何をもって正当と呼ぶかがポイントだ。

 ……そういや、ツイッターで「読解力がないのはどう見ても古城ろっくさんでは?」とか喧嘩売ってきて、あげくに「古城ろっくさんに欠けているのは読解力ではなく礼儀だね」と前言撤回してから僕をブロックした敗走野郎は元気かな?

 礼儀知らずはどっちだろうね。そこは「古城ろっくさんに読解力が無いと言ったのは間違いでした。失礼しました」って言うのが礼儀じゃないの?お前の礼儀ってのは、自分の見立てが違っていた時に相手の人格否定をしてごまかすことを言うの?

 まあ、僕が他人の礼儀にとやかく言うのも変だけどさ。




 やべ。今日はちょっと酔いすぎているかも。

 閑話休題。本題に戻るぞ。

 僕が思うに、やってはいけない批判の定義はたったひとつだけ。たったひとつだけなんだ。

 それは――


『相手の権利を奪ってはいけない』


 ただこれだけだ。

 例えば、商業作品にネガティブキャンペーンをした場合、その拡散の具合によっては威力業務妨害や名誉棄損罪に当たる可能性がある。

 何故かと言うと、これ別に拡散したからとかじゃないんだよ。その結果として編集部の売り上げ予想が落ち込み、結果的に本来ならあったはずの『書き続ける権利』を作者から奪った(あるいは編集部から出版する権利を奪った)から問題なんだよ。

 この時点で、そういった行為は『批判』の域を超える。批判の先にあるのは何だと思う?『誹謗中傷』か?『人格否定』か?

 いや、違うね。批判を越えた先にあるのは『脅迫』や『強要』だ。僕だってその域に踏み込んだ批判を批判だとは思わない。

 一方で、ネット小説に批判が寄せられたからと言って、一体それが作者のどんな権利を侵害すると言うんだい?

 ここは好きなように書き続けていい場所だ。批判があるとBANされるわけでも、批判があれば更新できなくなるわけでもない。

 すべては、自分の意思決定によるものだろう?






 さて、例え話だ。

 僕らのバンドの話でもしよう。いや、新しいバンドがそうそう結成されたわけじゃないから、これまたUKETMELZの話なんだけどね。実話をもとにしたフィクションだと思って聞いてくれ。

 ある日、僕らのバンドはCDの収録をしていた。そして音源は無事にミキシングされて、そのままPVまで作成しようという話になった。そこでプロのカメラマンに依頼を出したわけだ。

 そのカメラマンは音楽にも精通していたので、僕らの曲を聴いたとき、いきなり長文で批判をしてきたらしい。――うん、それ自体はとてもいいよ。嬉しかった。

 その批判を受けたベース担当が、もう一度レコーディングからやり直したいと言い出した。これもいいさ。批判の受け止め方は人それぞれだからね。

 しかし、ここからが問題だった。


 僕は「いや、り直しは要らないよ」と言うつもりだったのだ。そしてメンバー内の会議で、録り直すかどうかを決定するつもりだった。少なくとも、僕は――

 でも、ベース担当が録り直しを勝手に決定してしまった。まあ、LINEでのやり取りだったから、だいたいツリーが流れたら話題は終わりというか、後から遅れて参戦した人が意見を出すのは向いてないのがLINEなんだよね。

 あの時、話を取りまとめる人がいるか、もしくは全員が揃って意見を出した段階で結論を出してくれていればよかったんだけどね……

 なんにしても、僕の反対意見は聞き流された。結果として、Mr.Xとかいう下手くそギタリストが僕の代わりに弾くことになり、僕の音源は消えてしまったわけだ。

 加えて、そのMr.Xの演奏が僕の演奏だと勘違いされ始めたのも腹が立った。あんな下手くそな代理のサウンドを、僕のサウンドだと思われたくはない。

 で、結果としてキーボードに移ったけど脱退したって話は、前回と前々回で語ったね。




 さて、思い出話はここで終わり。ここからは君たちへのメッセージだ。

 批判を受けて何かを変えるなら、それは良い事なんだよ。

 もし批判されたことで制作できない精神状態になるような小説があるなら、それは制作中止になって良かったんだ。

 事実、僕は今でもあのレコーディングに納得がいってない。いっそあんなCD出さなきゃよかったんだ。批判によって潰れるなら、潰れちまえばよかった。


 僕、思うんだけどさ。

 自分の好きなように作品を発表できるネット小説で、批判なんて恐れることは何もないんだよ。だって、それは少なくとも『同じバンドメンバーからの強要や脅迫』にはならないんだもん。

 少なくとも、連載を止めるのも、小説を書くのをやめるのも、書き続けるのも、自分で決定できるんだもん。

 そう、思うんだ。

 だから、小説界隈のみんな。批判されたら納得できる道をゆけ。

 君たちにはその権利がある。僕にもわずかだが、その権利は残されていた。

 これを失わない限り、僕らは批判を追い風にできる。


 あ、いつも通り、皆様からのメッセージなどはお待ちしております。ぶっちゃけカクヨムのコメント欄なら脅迫も強要もできないはずなので、何を書いてもいいよ。

 仮に脅迫っぽい事を書いても、それは『っぽい事』でしかないから、脅迫ではない。脅迫ってのはもっと――『このままじゃバンドにいられなくなるぞ』みたいなのを言うんだ。

 カクヨムはそれが出来ないから安心だな。

 小説界隈ってのはぬるま湯だぜ。公園で小学生がやる鬼ごっこだって、もうちょっと厳しい言葉が飛び交うぞ。

 その程度のことに目くじらを立てて騒げるんだから平和なもんだ。

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