第83話 古城ろっく、バンドすら辞めたってさ(リーダーとしての資質について)

 よう、古城ろっくだ。今日はまあ、サブタイでは『バンドすら辞めたってさ』と銘打っているけど、実際には『リーダーとしての資質』について語っていこうと思う。

 あ。今日のBGMか?

 今日はLOOP H☆Rの『孤独のとり(もしくは孤独の鳥居)』って曲を聴いている。

 え?知らないのか?

 おいおい、2016年に『HOTLINE』っていうライブオーディションに出場して、それからずっと伝説のバンドの名前を欲しいままにしてきた二人だぞ。

 このF-1と呼ばれる歌唱法で歌われたメロディに、わざわざタッピングしなくても弾けるパートをタッピングで弾くギター。独特のタイム感(何故これでタイミングが取れるのか逆に不思議)とか、いろいろ最高だよな。

 ちなみに、冗談抜きで僕の憧れのバンドだ。……いや、まあいつか語ったけど、syamuに憧れて小説を書き始めた僕だしなぁ。

 まあ、彼らの話をしだすと、それだけで5000~10000文字は語れてしまうのだけど、今回はパス。


 さて、本題。

 今回の本題とは、サブタイとは打って変わって『リーダーの資質について』だ。

 あ、勘違いするなよ。UKETMELZ(こないだまで僕がいたバンド)のリーダーにその資質が備わっていなかったとか、そんな話をする気はない。つーか、そんな話なら直接本人にしているはずだ。何が悲しくてこんなところでそんな話を披露しなきゃならんのだ。さすがに筋違いも甚だしいぞ。

 今回こんな話をした理由は、『僕が次のバンドのリーダーになるから』だ。

 そう。僕は新しいバンドを結成しようと思う。メンバーは募集中だが、もちろん僕がリーダーだ。

 それに当たって、僕が長い人生でいろいろ経験した中で、『これはリーダーにとって必要不可欠だ』と思える内容を語ろう。


 それじゃ、行くぞ。

 ぶっちゃけると、そんなに難しい事を話すつもりは無い。

 一言でまとめるなら……




『リーダーは何もしない、べきだ』




 これに尽きる。

 極端に言えば、バンドのリーダーなんて作曲も作詞も、何なら演奏も歌唱も出来なくていい。音楽の事を何も知らなくてもいい。いや、まあ出来るならやってもいいんだが……

 要するに『余計なことはしない』に尽きるわけだ。もっと言うなら、『全員の自由を保障する』以外の状況でリーダー権限を使うべきじゃない。

 逆に『余計なことを誰にもさせないためにリーダーがいる』と言えば分かりやすいか?


 例えば、近年の内閣総理大臣をはじめとする政治家たちに対して、一番多い意見は何だろう?

 ほとんどの人が『余計なことをするな』と答えると思う。

 消費増税に酒税改正。緊急事態宣言。自粛要請や時短要請という名の強制。それからSDGs。レジ袋有料化に紙のストロー。どれを取っても『やらんでいい』『中途半端にやるな』という意見が多数だ。

 いや、もうね。日本国民って意外と優秀で、日本の法律って思ったより完成度が高いんだよ(自転車関連に関しても、意外と……な)。

 つまり、政治家は今までで十分なものを作って来たし、国民は現状でも(一部を除いて)それなりに満足な暮らしをしている。

 そこに対して、余計な新ルールを付け加えるのは愚策なんだよ。せっかく今の状態でも生きる術を見つけてきた国民たちに、また次のルールを課すのは悪戯にも似ている。


 上り調子の企業の――『社長』を見てみるといい。彼らはだいたい、思ったほど仕事をしない。いつも暇そうに他のオフィスを見て回ったり、ゆっくりと休憩をしていたりする。

 そして多くのエリート社員が、社長不在でもしっかりと働いて実績を出している。社長は彼らを信じて任せるだけだ。

 それでいいんだよ。

 少なくとも、社員や部下が信頼できる人間であれば、上の立場の人間がやるべきなのは『彼らが自由に思ったことをやれる環境を構築する』だけでいい。もっと端的に言うなら『自由を保障する』だけでいい。

 あとは皆がやってくれる。プチ共産主義だな。まあ能力の高い人間ばかりを集めた場合なら、それが実現できるんだ。


 さて、じゃあバンドのリーダーに必要なスキルは何だ?

 答えは簡単。『演奏者がそれぞれの楽器を思うように演奏できる』という環境を保全するだけだ。

 ギター担当はギターを好きに鳴らしていい。ベース担当はベースを自由に弾いていい。ドラム担当はドラムを勝手に叩いていい。ボーカル担当はもう何でも好きに喋っていい。

 その自由を、バンドリーダーが保証する。逆に言えば、それを保証できないような事態に陥ったとき、バンドリーダーはその権限を行使して過干渉を防ぐ。

 つまり、ギター担当が誰かのせいで自由にギターを弾けなくなったら、バンドリーダーはギター担当を救うために、自由を奪っている諸悪の根源を引き離す必要がある。


 さて、UKETMELZを抜けた僕がやるべきことは、新しいバンドを組み直すことなんだが、

 僕がリーダーになるなら、ルールはたった一つだ。

『自分のパート以外に批判を出すのはいい。ただ、その批判を受けてからどうするかは各パートの人間に任せる』

 ただこれだけだ。

 大事なのは後半部分だな。誰もが自分の演奏を捻じ曲げられたら、いい気分しないだろ。僕だっていい気分はしない。

 なので、例えば他のメンバー全員が納得しなくても、ギター担当が『これが最高のギタープレイだ』と言ったなら、それを採用する。何しろ、ギター担当以外でギタープレイに決定権を持つ人物はいないからだ。

 世の中には『踏み入れられたくない領域(パーソナルスペース)』がある。そこに土足で入り込むのは、たとえメンバーでもダメだ。

 例えば僕は、勝手に他人の自転車に跨る人と、勝手に他人の楽器に触る人と、勝手に他人の演奏を録音し直そうとか言い出す人が嫌いだ。……ちなみに、僕も小学生のころまでは他人の事を言えない立場だった。

 ……うん。反省している。

 そんな具合で、やっぱり他人に過剰干渉するなんて――ましてそれを擁護するなんて、同じバンドのメンバーだったとしてもダメなのさ。やり過ぎなんだよ。


 だから僕は、自分がリーダーのバンドを組むなら、誰も自分の個性を否定されないバンドを作りたい。少なくとも楽器演奏に至っては、だ。

 そして、誰かが他人の演奏に文句を言うのは結構だが、それ以上の強要や脅迫をさせないようにしたい。

 そのうえで、僕らが演奏する曲は、誰の予想も超えたものになる。ぶっちゃけリーダーである僕の予想すら超えるだろう。


 そうなったらいいな――


 本当のことを言うなら、UKETMELZも最初はそうだった。そのはずだったんだよな。

 今となっては懐かしい、ずっと前の話だ。

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