第70話 開幕ポエムが不評?それ、どこの異世界の話?

 よう。古城ろっくだ。今日は麒麟の氷結ストロングのレモンを飲んでいる。シチリア産レモンを使っているとのことだったが、普通のレモンと何が違うのかはちょっと分からん。

 サントリーのストロングゼロ・ダブルレモンと比べると、多分氷結の方がレモンらしい酸味とフルーティさはある。まあ、どっちが好きかは迷いどころだ。

 うーむ……なんか、ずっとストロング系はストロングゼロに決まってると勝手に思っていたが、氷結も侮れないな。


 さて、本題。今日は『開幕ポエム』ってやつについて。

 知らない人のために説明しよう。『開幕ポエム(冒頭ポエム)』とは、小説の最初にいきなり詩的な表現で始まることだ。主人公の意味不明なモノローグとか、何やらその世界に伝わっているらしい伝承とか、な。

 これに関して、あまりにも浅い見解がツイッターで出回っていたので、僕が本当の見解というのを見せてやろうと思う。つまり、役に立つ創作論だ。拝読したまえ。


 ぶっちゃけ、この『開幕ポエム』ってやつを『伏線』とか『作者の自己満足』とかと勘違いして「結局その伏線が回収されないから嫌われる」などと言ってしまう人がいる。

 彼らは間違っている。そんなもん回収されてもされなくてもどうでもいいんだ。

 結論を述べるなら、開幕ポエムとは『伏線』でも『作者の自己満足』でもない。

 アニメで言うなら『オープニングテーマ』で、映画で言うなら『予告編』だ。


 だってさ。「これからシリアスで泣けるような話をします」と言いながら、その始まりがギャグ一辺倒だったらどう思う?

 まあ、わけ分からんよな。シリアスパートに行く前に「いや、これ詐欺じゃん」ってなると思う。

 そこで開幕ポエムですよ。ちょっとこれを挟むだけで、実はこのストーリーの裏に何か隠されていると思ってしまうでしょ?

 そう。そういう気分にさせることが重要なんだよ。つまり、開幕ポエムとは『そういう雰囲気を作る』という役割を持つ。


 変な話だけど、君が夜のトンネルを自転車で走っているとする。で、そのトンネルを走っている時、君は何を考える?

 もし事前に「ここは車通りも少ないから、自転車が自由に飛ばせるぜ」と聞かされていたら、君は速度を上げてすっ飛ばしただろう。もしそれなのに路面状況が悪かったら、思ったほど飛ばせないことにイライラしたかもな。

 でも、それが「事故多発により追突注意」だと聞かされていたら、同じ走りをするかい?後ろが気になってしょうがないだろ?

 あるいは、「目の前に白い服を着た髪の長い女が出てくるんだ」という噂の幽霊トンネルなら?その場合は後ろを振り返る余裕なんかないよね。


 同じような話なんだけど、オープニングとは雰囲気を作るだけの強さがあるんだよ。

 開幕ポエムの強みは、仮に第一話が『普通の高校生の普通の日常』だったとしても、ちゃんと重い印象を与えてくれることにある。


 ……え?「でも、なろうで開幕ポエムは受けないじゃん」って?

 当たり前だろ。あのサイトでそもそも重厚なストーリーがウケるかって話だよ。さっきも言ったけど、『普通の日常に重さを与える』のが開幕ポエムだぞ。それが向いているのはハードSFやダークファンタジーだ。なろう系じゃない。

 つまり、「なろう系を軽快に書きたいんだけど、開幕ポエムはアリですか?」って質問なら、自信をもって「無しに決まってんだろ。お前はうんこの話をしてからカレーライスを提供するのか?」って答えるね。

 要するに、相性の問題だ。開幕ポエムそのものが忌避されているのではなく、開幕ポエムを最大限に生かせるジャンルが忌避されている。

 つまり、ターゲット層の問題さ。開幕ポエムそのものが嫌われていると実証したいなら、同じ作品を開幕ポエム有りと無しで実験しなくちゃ答えが出ない。

 なのに、なんで開幕ポエム有りのダークファンタジーVS開幕ポエム無しのなろうテンプレで比較してるんだ?


 まあ、要するにターゲット層の問題なんだよ。と、まるでマーケティングのプロみたいな言葉で締めくくったところで、今回はここまで。






 さて、余談なんだが、僕のなろう時代を知る人には懐かしい話をしよう。

 僕は昔、『底辺採掘日誌 第一話だけを集めるぞ』って企画を、なろうでやっていたことがある。

 ざっくり説明すると、誰かが持ってきてくれた連載小説の第一話目『だけ』を読んで、その感想を僕が辛口で思った通りに書くっていう企画だったんだけどね。

 その中で、明らかに冒頭ポエムから始まった1作があったのさ。それはポエムとしては完成度が高かったんだけど、連載の1話目として見るなら面白くないのね。

 ……別に、冒頭ポエムだからダメだと言うわけじゃないんだよ。ただ、その作品はヒューマンドラマだった(というより、恋愛ものだったとすら言える)のに、主人公の素性がポエムから伝わってこないのが減点ポイントだったんだ。

 こんな感じで、ポエムから始まるときは、読者の視点に立って、あくまで冒頭の掴みとして使う必要がある。

 伏線回収だとか、エンディングにつながるとか、そんなのは大した問題ではない。一見さんに出す食前酒かお通しのような気持ちで出してもらえると助かる。

 オープニングテーマって、そういうこと。


 それじゃ、僕は気分が乗ってきたので、もう1話ほどエッセイを書いてから寝ようと思う。

 クソみたいな話題は連続するもんだ。無い時は全然ないくせに、ある時は有り余るほど沢山やってくる。しかも長期保存に向かない。

 これを一言で表現するなら『稀によくある』だな。エッセイのネタは稀によくある。

 やれやれだぜ。

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