第59話 作者は経験したことしか書けない?

 よう、古城ろっくだ。今夜(2021/02/14/02:00)は眠れそうにないな。

 あ、上記の時間はこのページを開いた大体の時間だ。そこから編集を始めている。……あー、僕が福島県の郡山市に住んでいることは言ったっけか?じつはそうなんだよ。

 震度6だってな。

 え?「東日本大震災を思い出したか」って?

 まあ、そうだな。半分正解、半分は違う。確かにあの時の悪夢を思い出させてくれるにふさわしい家の惨状。そして振動だった。

 地震そのものの特性としては、まったく違う。3.11の時はこう……大した揺れでもない時間が2分間も続いた。つまり、予告があった。今回はそれすらない。いきなりドカンだ。僕は今回、会社の駐輪所にいたんだけどな。脳震盪しかけたよ。


 まあ、そんなわけで、今日はコンビニに行ってストロングゼロを買ってきた。これを飲みながら筆を執っている次第だ。眠れないからな。

 本当に、停電などの被害を受けなかったのは運が良いとしか言いようがない。無事に会社から帰還できたのも、な。ちなみに近所のコンビニは酷い状態だったぞ。何とか開店はしていたが、店長の顔色が目に見えて悪かった。




 ああ、こんな話ばかりして悪いな。さて本題、ってやつだ。

 ちまたでよく言われる『作者は経験したことしか書けない』って理論があるだろ。まあ、ここで創作物に関わっている人ならすぐに分かるだろう。あの理論は間違っている。

 ハリーポッターの作者だって箒に跨って球技をしたことは無いだろうし、スターウォーズの作者だって光の剣で宇宙戦争したことは無いだろう。ツイッターなどでも反論をしている作者が多いな。


 ……反論している作者たちの大半が、ファンタジー作家であるような気がする。いや、僕の気のせいならゴメン。

 でも、じつは納得してるんだよなぁ。


 この『作者は経験したことしか書けない』という理論、あながち間違ってないというか、一理あるようにも思える。

 正確には『作者は経験したこと以外を嘘で塗り固めるしかない』だ。別な言い方をするなら、『作者は経験したことしか真実として語れない』ってところだな。


 例えば、僕は『ママチャリ無双』という作品の中で、明らかな嘘もついているし、嘘を吐いたつもりはないが事実と異なる可能性のある部分も書いている。

 そうだな……具体的な例を挙げるなら、

 作中ではユイちゃんが、市販のママチャリ(特に足回りに改造なし)で、時速50km/h近い速度を出している。これは恐らく不可能だ。少なくとも、僕が経験した中ではありえない。

 これは、物語があくまでフィクションである前提で語られているからこそのインフレだ。作者自身もそこにリアリティなんぞ求めてないし、読者にもそのつもりで読んでもらえていれば幸いだ。

 あ、でも自転車自体は平然とそのくらいの速度を出すものもあるし、何より速度だけが自転車の魅力ではない。その辺も合わせて楽しんでくれ。


 もう一つ、例を上げよう。こちらの方は僕にとって大問題だ。

 じつは、ママチャリ無双でいま書いている『アルバイト編』は、全て作者の妄想である。僕自身は自転車店でバイトをしたことも無いし、そもそも接客業をやったことが無い。

 なので、もし経験者に『これは事実と大きくかけ離れています』と指摘されれば、ぐうの音も出ないってもんだ。

 これでも作者は、そこそこリアルにその内容を描いている自信がある。のにもかかわらず、もし齟齬があったとしたら、それは作者も『書き切れていなかった』と認めざるを得ないだろう。

 これをして『作者は経験したことしか書けない』と言われているなら、僕は反論する余地を失う(逆に言えば、経験者なら『お前の店ではどうか知らんが、うちの店ではこうだったぞ』と反論できる)。


 こんな具合で、ファンタジーやSFを書いている作家ほど、この理論には反論できるだろう。そして僕のように、なまじリアルな現代社会ものを書く人ほど、この理論に反論できないのだ。

 まあ、だから『現代ドラマ』と銘打ってても、それはどこまで行ってもフィクションだと思ってほしいって話さ。認めたくないものだがな。




 さて、余震……じゃなかった。余談。さっきも地震が来たのは事実なんだけどね。うー、また眠れないよ。明日の演奏に眠気が出たらどうしよう。恥ずかしい……


 えっと、去年くらいまで、僕の作品の感想を、ツイッターの個人メッセージから送って来てくれていた読者がいたのね。

 その読者さんが、ママチャリ無双の第2話を読んで、指摘してくれた点があるんだ。


『出力にまだ余裕がある状態で「必死に逃げてるのに追い付かれてビックリ」なリアクションしてて違和感。

 まだアクセル全開にしてないやん……みたいな?

 たぶん自転車感覚(スポーツ系の感覚)で書いてると推測。

 自動車やらバイクは機械操作だから簡単にアクセル全開できちゃうところを安全運転のために抑えて走ってます。

 100%ではない(意図的に速度を抑えてる)状態で、スポーツ漫画で力を出し尽くしてるキャラみたいな言動はチグハグ感』


 とか何とか。

 まあ、それって問題のシーンはこの話……

https://kakuyomu.jp/works/1177354054938692953/episodes/1177354054949542196

 ……の、


――――――――――――


>意外にも、原付と言えど本気を出せば、時速50キロほどは出るものである。普段は法定速度でセーブしてあるが、その出力にはゆとりがある。

 とっさに、右手でアクセルをひねっていた。九条の乗る原付が、加速する。

「うわぁぁあああ!」

 殺戮ベアがどのようにしてすれ違った相手を倒すのか、それは分かっていない。ただ、追い抜かれた相手はみんな、病院送りにされたらしい。

(冗談じゃない。俺までやられてたまるか!)

 メーターを見れば、もう45km/h(時速45キロ)を超えている。これなら自転車も追い付けないはずだ。

「ど、どうだ?」


――――――――――――


 のあたりなんだけどさ。

 ……うん。確かに九条君は、まだフルスロットルを使ってないんだよね。

 でも、そう簡単にフルスロットルを使えてしまうと、いろいろとマズイわけだよ。具体的には、それをしてしまうと九条君の更なる成長が見込めないんだよね。

 たしかに彼の言う通り、オートバイとは『アクセル捻れば誰でも同じ速度が出る』のがリアルなのかもしれない(知らんけど)。

 でも、それを小説にしたら楽しいかと言えば、そうではないんだ。

 だからせめて、ここはフィクションでも『車体を制御できる者だけがフルスロットルを実現できる』『恐怖心を乗り越えた者だけが最高速度に到達できる』ということにしたい。


 あれだよね。『俺の宇宙では音が出るんだよ』理論。

 某爆走兄弟だって「いっけぇ!マグナム!」「負けるな!ソニック!」とかやってるじゃん。いや、まあ「それってスイッチ入れたら置くだけのオモチャだろ」って誰もが突っ込んだけどさ。

 某遊戯王だって「俺のターン!ドロー!」とか「フィールド上の三体を生贄に、青眼の白龍ブルー・アイズ・ホワイト・ドラゴンを召喚!」「滅びのバースト・ストリーム!!」とかやりたいよね。

 つまり、そこはフィクションとして割り切ってほしかったし、受け入れてほしかった部分ではある。

 同時に、原付が適当にアクセル回すだけで最高速度(つまり最も高い速度。それ以上はない)に到達できる車体だなんて、知りたくなかった。仮にそれが本当なら、原付ってクソつまんねー車体だな。嘘でも「あれはやりがいのある車体なんだよ」って言ってほしかったよ。

 ただ、こういうリアル路線バリバリの、○○警察的な人から感想を貰えたっていうのは、僕にしてみれば凄くありがたい話なわけだよ。

 だって、最初からリアリティのかけらもない作品に、こういう層の読者は食いつかないし噛みつかないじゃない。

 つまり僕の作品は、少なくともリアルと見紛みまごうほどにはリアリティに溢れていたってことでしょ。


 古城ろっくは常に、そういったご意見などをお待ちしております。

 そして、案外そういったご意見から、新しいアイデアを得られるほどの能力者だという自負がある。僕の引き出しを甘く見るなよ。毎回いろんなネタを仕込んでいくことくらい、そんなに難しい話ではないんだ。

 さて、それじゃあ気が向いたら、ガチのレース体験でもノンフィクションで書こうかな。リアリティ重視の人にうってつけの、まさに『作者が体験したことを書いた』内容になるかもしれない。

 その前に、ちゃんとしたレースに出場してくる必要はあるね(笑)


 さて、そろそろ余震も止んだかな。僕はまだ眠れそうにないけど、そろそろエッセイは終わりにしようか。

 ここまで長話に付き合ってくれて、ありがとうね。おかげで怖くなくなったよ。

 それじゃ、おやすみなさい。

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