第46話 褒めてやれよ

 よう、古城ろっくだ。今日は久しぶりにバランタイン・ファイネスト。

 非常に個人的な好みの話になるが、これがなんだかんだで一番好きだ。あれからいろんなウイスキーに手を出してみたが、やっぱり帰るところはここのような気がする。

 何かこういう……自分にとってはこれがベスト。って思えるようなものに出会えたら、人生は楽しいぜ。


 さて、今日は映画の話をしよう。とはいえ、僕は滅多に映画を見ない。なので今回の話題にする作品は、全部エアプで語る。なんなら原作さえ読んでない(笑)


 なにやら、ジャンプ漫画のアニメ映画版が人気を博しているらしいな。タイトルは、えーっと『鬼詰のォメk……じゃないよな。分かってるよ。『鬼滅の刃』だろ。

 ファンたちが言うには、ヒットした理由はひとえに『原作通りにやったから』だそうだ。

 まあ、どこの作品でも原作ファンたちはみんな似たような事を言う。記憶に新しいのだと、『シティーハンター』とかも、な。

 逆にオリジナル要素を追加した作品はわりと叩かれがちだ。えーと、近年だと『極主夫道』とかか?

 まあ、何にしても大盛況のようで、よかったよかった。僕は見てないからどーでもいいけどな。


 さて、「どーでもよくない」「原作を忠実に再現することは大切だ」と主張する諸君。きみたちに是非ともオススメしたいことがある。

 外崎 春雄監督を、盛大に褒め讃えておけ。

 原作である吾峠 呼世晴先生のシナリオを褒める声ばかりが聞こえて来るが、監督に対するリスペクトが足りんぞ?ん?


 そもそも、何で映画業界が毎度、原作にないオリジナルキャラだの何だのを入れたがるか。その理由を聞いたことがあるか?

 それは、映画監督だって自分の好きな映画を撮りたいからだ。

 え?「撮ればいいじゃん」って?……まあ、ことがそう単純ならどれほど良かったかな。

 ぶっちゃけ、映画の製作費を出すスポンサーたちは、現在『売れるかどうか分からないけど監督が自信作だと言い張る作品』よりも『すでに売れている原作付きの作品』に出資したい傾向がある。

 つまり、ここで外崎監督がもし「スポンサーさん。俺、古城ろっく先生のチャリンコマンズ・チャンピオンシップを映画化したいです」と言ったとしても、スポンサーは首を縦に振らないわけである。




 いいか?スポンサーは別にエンターテインメント業界のプロではない。なので、彼らには何が売れる見込みがあるのかを判断する能力は無い。

 そこで、求められるのは二つのうちのどちらかだ。


1.監督がすでに有名であり、何本かのヒット作を出している。

2.原作がすでに有名であり、タイトルだけで売れる可能性が高い。


 このどちらかだ。

 大概の監督は1に当てはまるような資格を持っていない。なので、まずは2を狙う。原作が既に有名な方、な。

 それでヒットを出せれば、1のパターンに格上げされる可能性が高い。そうなったら今度こそ、監督は好きな作品が出せる。なんならシナリオから自分で考える事さえできる。

 だからみんな、必死で売れてる原作付きの作品を撮るんだ。それが監督としての実績に繋がると信じて、な。


 ところが原作通り忠実にやってしまうと、みんなは「原作者すげー」「原作者万歳」と、原作ばかりを褒める結果になる。

 それじゃダメなんだ。スポンサーに「監督くん。キミの作品が売れたのは、キミの実力じゃなくて原作さんの実力じゃないかね?」とか言われるようでは、監督は自らの目標を果たせない。そのままでは上記の1に進む資格を得られない。


 だからこそ、監督は「いいえ。自分のおかげでヒットを飛ばしました。ダメな原作にオリジナル要素を追加して、それがヒットの要因になったのです。だから俺を褒めてくれ」って言いたくもなっていく。

 これが、監督がこぞって余計なオリジナル設定をつけたがる理由である。

 彼らは純粋に、「今はダメでも、いつかは自分の物語を映画にしたい」と願っているだけなんだ。


 だから、君たちが今後も『原作を忠実に再現した映画』を見たいなら、

 監督を褒めろ。称えろ。「あなたが監督を務めたおかげで、原作ファンが歓喜しております」と大声で叫べ。スポンサーに届くように、だ。

 そうすれば、それを見た他の監督たちも原作を忠実に再現し始めるだろう。






 さて、余談だが『なろう系』と呼ばれる小説に飽き飽きしている諸君。同じようなことが君たちにも言える。

 現在の編集者たちがこぞってネット小説の(それも自社とつながりのない『小説家になろう』などというサイトの)ランキング上位を書籍化するのは、もちろん理由がある。

 売れるかどうか分からない作品に金をかけたくないからだ。

 だから、もしランキングに不満があるなら、ランキング下位から書籍化された稀有な作品を褒め讃えてみてくれ。

 たかがそれだけのことでも、編集社に声が届けば、認識は変わるかもしれない。

 時代を変えるのは、常に消費者の声だ。今の時代を作ってしまったのもまた、少し前の消費者たちの声だ。

 自分の住みやすい世界が欲しいなら、今からでも声を上げろ。

 僕は自転車が走りやすい日本を求めて、小説作品と言う形で声を上げたぞ。その声はまだ国土交通省にも警察にも届いていないが、きっといつか届くと信じている。


 いつもならここで『そんなことよりチャリチャン読んでくれ』と締めるところなんだが、生憎とあの作品は書籍化を狙っていない。

 なので、『そんなことより君たちが書籍化してほしい作品を応援してやってくれ』という言葉で、今回を締めくくろう。

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