第45話 例の漫画に見る帰属意識の話でもする?
よう、古城ろっくだ。なんか噂で聞いたんだが、今度15万円が国から給付されるんだって?
わーお、僕の手取り2か月分だ!……いや、マジで。
さて、せっかくの給付金だから、自転車にでも回そうかな。今僕が乗っているのが、GIANTのTCR-SL1なんだ。アルミフレームでチューブレスタイヤ。基本的には105のコンポを使っているが、ブレーキはTEK-TROでクランクはshimanoのSR-510だ。
これ、迷うよな。クランクを105の純正ホローテックにして、パワーメーターでも組み込んだら楽しいか?
それともTEK-TROのブレーキを何とかするか。とはいえ、タイヤ自体もしょせんはGAVIA AC 0だからな。あんまりハイエンドなブレーキを搭載しても、タイヤの質の問題でスリップするだけのような……
ああ、そうなんだ。そもそもタイヤどころかホイールから見直すのも一つの手かもしれない。PR-2の最近の評判が悪いもんな。やっぱここは王道のSHIMANOかな?それともMAVICかな?定番のカンパニョーロから新進気鋭のフルクラムまで、選択肢は多いぜ。
……さて、読者の大半が置いてけぼりになっている気がするので、そろそろ真面目に本題に行こう。
ツイッター上で『例の漫画』というやつが話題になっている。ざっくりと内容を紹介すると、
『とあるゲーム会社が、学生イラストレーターを格安で雇ってくる話。
そのイラストレーターは、ゲーム会社から「もっとなんか良い感じの絵を描いて」と、ふわっとした依頼をされる。
それに対して、もっと具体的な指示が欲しいと言うイラストレーター。しかしその願いは叶わなかった。
ゲーム会社の人間は言う。「私たちの想像を超えるような作品を描いてほしい。だから具体的な指示を避ける。あとは専門家であるあなたが何とかして」と……
その無茶振りに応えたイラストレーターは、無事に今回の仕事をこなし、ゲーム会社と強い絆で結ばれたのだった。
めでたし、めでたし』
さて、こんな感じの話(若干の齟齬があるけどね)なんだが、ツイッター上で論争を巻き起こしている。
「学生に無茶振りしすぎ」
「新人を潰すような仕事の押し付けだ」
「効率的じゃない」
「いい話みたいになってるけどゲーム会社ひどすぎ」
などなど。
元フリーランスのイラストレーターでもある僕に言わせれば、たしかにこの以来の仕方はとても困ることだ。何しろ、絵を描くという仕事は描いたことない人が思うより数倍キツイ。そしてちょっとだけ描いたことがある人が思うより数十倍はキツイ。
一部の絵描きが「30分で描きました」なんて落書きをツイッターやようつべにアップしているが、あれと同じ労力で作品が描けると思ったら大間違いだ。
いや……いっそ落書きを出して「ほれ描いたぞ金よこせ」って言えるほど厚顔であればどれほど楽に生きられたことか。ぶっちゃけ素人を騙すのは簡単だしなぁ。
まあ、ハッキリ言ってしまうと、これはフリーランスの相手にいきなり頼むときの頼み方じゃない。依頼の出し方を適当にしてしまうと、真面目な方が損をするような詐欺合戦になるからな。業界が腐るぜ。
……ところで、僕はこの漫画を読んだ時、また別なことを思い出していた。
えっと、僕がバンドやってることは話したっけ?まあ、やってんだよ。
基本的に、うちのバンドはリーダーが曲を書いてくる。これは歌詞とメロディとコード進行までリーダーが作る感じだな。
で、それに各パートの人たちが、自分たちなりに自分のパートを決めるわけだ。僕はギターパートを考えるわけだが、リーダーもギターを弾きながら歌うので、コード進行はそっちに任せて、僕はカウンターメロディとかをやればいい。
で、連中の無茶振りが酷いのよ。
「ギター、もっとなんか良い感じで」
「そんなメロディアスなのじゃなくていいんで、音数少なくして」
「古城ろっくさんの手癖でいいんで」
「あ、やっぱ速弾きはいらないです。ゆっくりで」
「もうずっと同じフレーズだけ弾いててください」
「何か考えてください」
「全休符はダメです。何か弾いてください」
いい加減にしろよ、と。
ギター弾いてる人にしか伝わらない話かもしれないけど、「ゆっくり弾くのは簡単」って理屈はコピー曲をやっとやっと弾いている素人に毛が生えた段階の人間にしか通じない理屈だからな。
オリジナル曲で音数を減らしながらやるとなると、コードに使われている音のどれを取捨選択するかっていう音感センスとか、リズムのどこにピッキングを持ってくるかという話とか、グルーヴに合わせられるかとか、そんな難しさがある。
小説に例えるなら「文字数減らして、カタカナを使わないで書いてください。文字数が少ないなら簡単だし、カタカナつかわないなら楽でしょ?」みたいなことを言われている気分だ。んなわけねーだろが!と何度叫んだことか。
でもな。不思議とこの無茶振りは嫌じゃないんだよ。
どいつもこいつも自分の楽器しか知らないような奴が、適当な無茶振りを他の楽器に出していくようなバンドだ。そんで頑張って譜面を決めた後になって、「やっぱリズム変えたいです」「やっぱテンポ変えます」とちゃぶ台返す野郎ばっかだ。
でもさ。だからこそ僕は胸を張って言えるんだ。このUKETMELZのギターが務まるのは僕しかいないってな。
僕らは誰が欠けてもいつもの演奏が出来なくなる。誰も代わりなんかいない。
仮に僕じゃないメンバーがギターを弾いたら、それはそれで良い演奏になるのだろう。そしてファンの間で「古城ろっくとどっちが良いかな?」とか、「両方のバージョンにそれぞれの違いがあるよな」とか話題になるわけだ。
要するに、組織に貢献する帰属意識だ。それが僕を気分良くさせる。
例の漫画のイラストレーターは、どうだったんだろうな?
そのゲーム会社が自分にとって『金なんかどうでもいいと思えるくらい大切な仲間』だと思えるなら――そのゲームが『自分が心血を注いででも世に出したいと思えるほどの名作ゲーム』だと思えるなら、
無茶振りをされ続けたイラストレーターは、きっと幸せだったんじゃないかな。
ただ、『金貰って仕事をするだけの関係』になってしまっていたら、それは不幸だ。
……これ、みんなにどれほど伝わる話なんだろう?
要するに、芸術分野は金より気持ちが大事だよな。みたいなことを言いたかった。うん。
伝われー
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