第42話 物語の教訓とバッドエンド
よう。ストロングゼロのダブルレモンが無性に飲みたくなった古城ろっくだ。いまやいろんなレモンハイがコンビニに並ぶようになったが、やっぱり僕が帰るべき場所はストロングゼロだと思う。あと氷結を最近見かけてない気がして寂しい。
まあ、いいや。飲みながら話を進めていくぜ。なんかぐびぐび飲めるから、あっという間になくなりそうだ。
さて、諸君。じつは古城ろっくが、そこそこのバッドエンド好きであることは知っていただろうか?
いや、知らんよな。多分僕もあんまり熱く語った覚えがないわ。あ、でも打ち切り漫画が好きだとか、そもそもエンディングまで読まないことが多いとか言う話はしたっけ?
ほぼエンディングを見ない僕なんだが、仮にエンディングが見られるならバッドエンドも好きなんだよ。あ、同じくらいハッピーエンドも好きだぜ。
え?バッドエンドの魅力って何なのかって?
うーん……そうだな。これは分かる人だけ分かってくれればいいや。なので、今回は多くの人の共感を求めない。――いや、いつもそうか。
君たちは、物語に何を求める?
うんうん……「楽しさ」か。まあ、物語が好きな人はそう答えるよね。物語の目的や実用性なんか度外視。楽しければそれでいい。
いや、解るよ。僕だって「自転車でどこ行くの?」と聞かれて「目的地なんかないよ」と答えたことは多いからね。どこかに行くわけでもないのに自転車に乗るのは、自転車好きの性。何かの足しになるわけでもないのに物語を読むのは、物語好きの性。
でも僕はもう一歩踏み込んで、物語から『教訓』を得たいと思うことがあるんだ。きっと作者は物語を通じて、読者に言いたいことがあったんだろうと思ってね。
ちなみに、鋭い人は気づいているだろう。僕のメイン作品である『チャリンコマンズ・チャンピオンシップ』は、自転車は素晴らしいのだって教訓を込めている。
え?知ってた?……ふふふ、鋭いな。
この『教訓』ってやつはさ。大きく分けて2種類ある。
ひとつが『○○しようね(○○は素晴らしい)』って教訓。人にやさしくしようとか、友達は素晴らしいとか、ね。
もう一つは『○○しちゃだめ(○○は悪いことだ)』って教訓。嘘をついたらだめとか、暴力は悪いことだとか、かな。
で、前者はものすごくハッピーエンド向き。後者はものすごくバッドエンド向きなんだ。
たとえば――そうだな。『鶴の恩返し』とか、『浦島太郎』の教訓って何だろう?
まあ、「鶴や亀にも優しくしよう」って教訓も含まれてるかもしれないけど、どちらかと言うと「約束は守らなきゃだめだ」じゃないかな。
鶴は扉を開けないでと言ったのに、おじいさんはそれを破った。
乙姫様は玉手箱を開けないでと言ったのに、浦島太郎はそれを破った。
結果はどちらもバッドエンドで間違いないと思う。
ちなみに「見ず知らずにも優しくしよう」って教訓なら、傘地蔵とかは有名だよね。あれはまさにハッピーエンドじゃないかな?
この手の話って、教訓だけを言葉で語ると薄っぺらくてね。それでも物語をつければ厚みや実感が出る。
バッドエンドの良いところは、やってはいけない教訓を主人公に(あるいは読者に)深く刻むところにあるんじゃないかな。って思うんだ。
今日の話は、ここまで。
以下、余談。若干ファークライ5のネタバレあり。
ファークライ5って知ってるかな?
UBIから販売されているゲームだ。ジャンルはオープンワールドFPSだね。なんとムービーシーンまで一人称視点で描くこだわりようだ。
来年は同シリーズの6が出るね。こちらも期待しているよ。
さて、このファークライ5の話。
物語の舞台はモンタナ州のホープカウンティという町。ここはカルト教団が支配しているところだ。
主人公は名も無き新米保安官。性別も決まってないから好きな方を選ぶといいよ。どちらにしてもみんなからは『ルーキー』とか『保安官』とか呼ばれる。
彼はカルト教団から、攫われた人々を助けていくんだ。ゲームの特性と相まって、プレイヤーは主人公になり切った気持ちで楽しめると思う。ときどき共感できなくてイライラするけどね。
途中まで……というか、終盤まで、主人公は間違いなく『ヒーロー』なんだよ。銃を使って相手を殺し、捕まった人たちを自由にするヒーロー。それこそ俺tueee!系が好きなら、間違いなく中盤までは楽しめると思う。
でも、結果的に主人公は、無駄に人を殺してしまう結果になる。具体的には言わないけど、主人公が戦わなければ、たくさんの命が(味方も含めて)救われるはずだったんだ。カルト教団は、人々を助けるために強引な手段を取っていただけだったんだよ。
敵のボスである、教祖ジョゼフ・シードは、主人公に何度も言っていた。「過去は変えられる」「時として何もしないのも選択だ」「立ち去れ」「君が我々を裁かなければ、我々も君を裁かない」と。
ジョゼフは最終決戦前にも言った。「いつになったら、銃で解決できない問題があると理解するんだ」と。
彼の説教は、主人公である保安官以上に、プレイヤーである僕に響いたよ。銃を使って相手を殺し、それで英雄気取りをしていたのは間違いなく僕だったんだ。
1週目の総プレイ時間は30時間くらいになるかな。いや、もっとかもしれない。期間としては2週間ほどかかった。
そのプレイ時間と、それまでの銃を信頼しきっていた気持ちが、この教訓を強くするんだ。
まさかシューティングゲームで暴力のむなしさを知ることになるとは思わなかった。
こういう教訓は、言葉にすれば薄っぺらい。だからこそ、実際に直面したとき(あるいはそれを疑似体験したとき)に強く響くんだ。
これが、バッドエンドの良さだと思う。
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