第40話 アンチとファン、大切なのはどっち?
よう、古城ろっくだ。今日は『こくいも橙』とかいう焼酎を飲んでいる。
これ、甲類乙類混和で安いやつだったんだが、案外悪くない。まあ、悪くないだけで、さほど良くもないが……
パッケージに書いてある通り、少し柑橘系の香りがすると言われればそんな気もする。通常の芋焼酎とはまた違った味わいだな。たまにいいかもしれない。
さて、本題……の前に、もう少し話をしよう。
いや、なに、どうってことない話さ。いまさら確認するのも恥ずかしいくらいの話なんだけどね。
この連載の冒頭でも語った通り、こんな個人的なエッセイまで読んでくれる君たちを、僕は友達だと思っている。ただの読者でも、ただのファンでもない。友人だと勝手に思っている。君たちにとって迷惑でなければ、ね。
それを踏まえたうえで、今度こそ本題。
今回は、アンチとファン、どちらを大切にするべきかと言う話だ。タイトル通りだな。
そんなもんファンの方が大事に決まっている。と言い切れた君は素晴らしい。きっと創作者の鑑みたいな存在だ。
もし君が『自分が思う面白い小説を書いて、認めてほしい』という気持ちで作品を書いているなら、わざわざアンチに構っている暇はないだろう。自分と好みの合う人間だけを集めたらいい。好みの合わない相手や、面白さを理解できない相手は切り捨てていけ。
君の愛した主人公。
君の感情を込めた登場人物。
君が思いをはせた世界。
君の自由に動かせる物語。
すべてを大切にしてほしい。アンチからの批判なんか聞くな。素晴らしい作品を書いていてくれ。
もしかしたら、僕がそれを読んで、何か思ったことを書くかもしれない。それは全く的外れな批判に見えたり(見えたり)、上から目線の批評に思えたり(思えたり)するかもしれないが、そんなことは気にしなくていい。
いちいちそんなことが気になるほど、君の作品への愛は薄っぺらじゃないはずだ。そうだろう?
たかが僕ごときの批評でビビって凹まなくていい。君に愛情があるなら、僕の言い分をいちいち気にすることなどないはずだ。……逆に言うと、たかが批評でいちいち愚痴る野郎は自分の作品を本当は愛せていないんじゃないか?
ん?どうだね?
ちなみに、僕は自分の作品を心から愛することはできない。
なので、アンチから言われたことをとても気にするんだよ。と言っても、ポジティブにね。
さあ、ようやく僕の話だ。
僕は『自分が思う面白い小説を書いて、認めてほしい』などという気持ちで小説を書いていない。きっと創作者の風上にもおけない存在だ。
なにしろ、小説投稿を始めた理由は、『自転車のすばらしさを広めたい』だったからね。
そんな僕にとって最高の顧客は、『まだ自転車の魅力を知り尽くしていない人』だ。ぶっちゃけ、その魅力を知り尽くした人に対して、僕は新しい情報を提供できない。むしろ僕に情報をくれ。ください。
つまり、自転車ファンより自転車アンチ(あるいは自転車にわか)に読んでほしい。とか思っているわけだね。ついでに言うと、今までの読者にはいろいろ語ったし、そろそろ新しい読者の獲得をしたい。
もちろん、固定ファンがつくのは嬉しいんだよ。でも、それで満足していたら僕が作り上げたのは、ただの仲良しサークルになってしまう。そんなのは地元の自転車イベントにいけば足りているんだよ。
というわけで、古城ろっくの目標のためには、固定ファンや既存読者よりも、新規客やアンチを取り込みたいわけだ。
だからこそ、アンチからのコメントこそ欲しい。僕の作品の魅力を分かっていない人からの意見で作品を作れば、きっと僕の目標達成に近づくだろう。
え?「そんなことをして本当に全員を取り込めるのか?」って?
いや、全員を取り込む必要はないんだよ。アンチの一部を取れればいい。それでも取りこぼしたアンチは、また次回作で取ればいい。
少なくとも、ブロックされて忘れられたとかでない限り、僕にとってそいつは顧客だ。アンチとしてでも敵としてでも、関わってくれる間ならチャンスはいくらでもあると思っている。
そう、某人物が小説を商売に例えて、こんな事を言っていた。
「大事なのは居場所を守る事であって、すべての顧客を満足させることではない。例えばラーメン二郎がヘルシー路線にまで手を出しても仕方ない。
あれはボリュームたっぷりラーメン路線で頑張って、今いる顧客を手放さないことを意識すればいい。響く人には響くのだから、あとはどうやって二郎を求める人に供給する方法を考えるか、だ。二郎を求めない人にまで寄り添うな」
なるほど。確かに例え話も上手い。なので納得してしまうし、飲食店ならそれでいいのだろう。
小説でもある意味そうかもな。例えば異世界テンプレは未だに人気なのだから、その層だけで十分にランキングを狙えるうちは、異世界テンプレ嫌いにまで異世界小説を読ませる意味はない。競合するジャンルが無いからだ。
では、競合相手がいたらどうだろう?
分かりやすいのがケータイキャリア。あれは今まで、どんなサービスをして生き残ってきた?
「一度契約さえしてもらえれば、固定客はなかなか離れないものだ。人は新しいものに手を出すときのハードルが高いから、自社のサービスに一度満足すればずっとついてくる。
逆に言えば、他社から自社に乗り換えてもらうのは難しい。なので、乗り換えや新規の客にだけキャンペーンだ。キャッシュバックや割引を思いっきりつける。既存の顧客にはつけない。
この方法で、自社のサービスを知ってもらう事こそ重要だ」
おおむね、ケータイキャリア3社のどれも考えていたことじゃないかな?あくまで僕の予想だがね。
ならば僕も、きっとこっち側だ。
そもそも自転車の知識について語るとなると、語れる内容は限界があるんだ。なら同じ客に同じ話をするより、今まで読んでくれなかった客に初めての話をしたほうが良いじゃないか。
僕にはマイノリティの世界で戦う競合相手がいる。だからこそ、その中でどれだけ『自転車小説』を生き残らせるかが重要になる。固定ファンだけで何とかなる問題ではない。
だからこそ、僕は強く願うんだよ。僕の小説をつまらないと思ったら、せっかくだからどこがつまらなかったか言ってくれ。と……
もちろん、それが読者にとって負担なのも承知している。そして読者の多くが、そんな批判にメリットを感じていないのも事実だろう。
僕だって、『あなたの批判にそった話を書き、きっと満足させて見せます』と言い切れるものではない。どうしても僕のキャパシティに限界があるし、君たちもそこは不安だろう?
今日のまとめ。
アンチよ。お前らを歓迎しよう。ファン以上に、だ。
ああ、ちなみに、このエッセイを読んでくれている君たちは、僕にとって『ただの読者』ではなく、『友達』だと思っている。ファンとかアンチとかの言葉では語れないし測れないほどには、
だから僕は、君たち友達も大切にしたいな。
これは人気のためではなく、掛け値なしのつながりとして――
これからも、よろしく頼む。
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