第31話 ロボットものは小説で描写するのが難しい?

 よう。古城ろっくだ。

 今日は黒霧島を飲みながら書いていこうと思う。ねっとりとした甘さがたまらない。低コスト(輸送コスト含む)なくせにここまで美味いのだから、きっと優秀な酒に違いないぜ。

 黒薩摩とか、黒白波とか……とにかく僕は芋と言ったら黒が好きでさ。その中でも指標となるのがこの黒霧島だと思うんだよ。まだ黒霧島EXは飲んだことないんだけど、一回飲んでみたい。


 さて、このまま芋の話を続けてもいい気分だが、そろそろ本題。


 先々週……そのさらに前か?

 僕は某所で、こんな記述のエッセイを見かけた。

「ロボものは小説では受けない。なぜならロボットの外見を、文章では描写できないからだ。ドラゴンならみんな知っているから説明が簡単だけど、例えばガンダムを1ミリも知らない人にガンダムの外見を説明できるか?」

 みたいな内容だ。

 これに対して、僕の友人はこう語る。

「え?逆にドラゴンを1ミリも知らない人にドラゴンの見た目を、文章で描写することって難しくないですか?」

 と……


 ふむ。なるほど。

 実を言えば僕は、後者の意見に賛成だ。このエッセイの第3話でも語った通りだが、文章の方が繊細で実感のある描写がしやすい。ドラゴンにしても、ロボットにしても、だ。

 まあ、ぱっと見の薄っぺらい外見描写ならイラストの方が向いているんだけどね。

 自転車で例えるなら、11段変速ギアの写真(あるいはそれを忠実に模した絵)を見せられるのと、小説で「ギアは11段」とか書かれるのと、どっちが11段を上手く(分かりやすく)表現していると思う?

 そういう話さ。


 今日のまとめ。

 ロボもの小説を書いている人で「ロボの外見描写は小説じゃ不利だからな」とか言ってるアホ作者ども。自分の文章力の無さを認めたくないのは分かるが、そこを認めて行かないと先は無い。

 お前らが先を失うのは結構だが、それが増え過ぎれば小説業界全体の衰退につながるぞ。

 まあ、そうさせないために、日夜研究を続ける僕のような勤勉なSF作家がいるのだけどな。


 末筆になるが、一応その『ロボもの受けない』エッセイを書いた人のフォローもしておこう。

 そいつは「下手な鉄砲は数撃てば当たる」と思ってるたちで、とにかく仮説を立てるときに質より量を重視する。

 今回はその中から選りすぐりの悪いところをピックアップしたが、本文内では他の仮説も提供されているから、決して質の悪い言い訳エッセイってわけでもないんだよなぁ。









 さて、少し時間が余っているので、実験をしてみよう。

 本当にドラゴンを小説で描写するのが楽だからファンタジーが受けているのか?

 本当にロボットを小説で描写するのが難しいからロボものが受けないのか?

 それを確かめるため、僕がこれから『ドラゴンを1ミリも知らん人に説明する文章』と、そのロボ版をやってみようと思う。僕の文章力テストだ。

 まずは、ドラゴンの紹介をさせてくれ。とあるエッセイスト曰く簡単なことらしいから、僕の拙い文章でも書けるはずだ。行くぞ?




 一言で言えば、それは巨大な生物だった。雄大に空を飛ぶそれは、しかし鳥や虫のような姿をしているわけではない。

 ありていに言えば、ヘビ。

 全身を覆う緑色のうろこは、おおよそ空飛ぶ生き物と思えない姿をしているが、それが間違いなく天を駆け、雲にとぐろを巻いているのだ。

 大きな二本の角を持つその生き物は、ぞろりと生えた牙を見せつけて、息を吐いた。その息は煙のように立ち込める。

 真っ赤な目……その相貌は、どこまでも赤く、そこにどんな景色も人も映していなかった。白目も黒目もない。ただ、赤い。

 その生物は、足元に置く七つの球を見て、それから重苦しく言った。

「願いを3つ、叶えてやろう」




 いかがだろうか?もう言うまでもないと思うが、読者のみんなが簡単に想像できた通り『ドラゴンボールの神龍』だ。

 仮にドラゴンボールを知らない人にも分かりやすく書けただろ。だってドラゴンの描写は簡単なんだもんな。

 次、ロボットを1ミリも知らない人に説明する文章だ。これは難易度が高いらしいな。イラストの方がいいらしい。




 大きい。

 最初に思ったのが、それだった。全高は18メートル。建造物としては驚くほどの大きさじゃないが、それが人型をしているのなら驚くだろう。

 銀色をむき出しにした未塗装の手足。それに青い胸部と、赤や黄色のワンポイントが目立つ。

 戦闘兵器なのにどうして迷彩塗装ではなく、こんなに目立つ色なのか。それは、この機体がまだ研究途中の実験機であるからだ。未塗装の銀色も、この機体を構成するルナ・チタニウムそのものの色である。

 そのチタン製の顔立ちは……ああ、何とも人間らしい愛嬌を称えている。鼻も唇も無いが、ひさしの無い兜のような頭部に、切れ長の大きな相貌。ツインアイカメラと呼ばれるそれは、人間の目と変わりないぬくもりを持っていた。

 それが、戦闘兵器だというのだ。そしてそれを動かす15歳ほどのパイロットが、戦闘員だというのだ。

 彼の顔も、その兵器の顔と同じ、あどけなさを持っていた。




 まあ、お馴染み『機動戦士ガンダムのRX 78-2 GUNDAM』をイメージしてくれたら正解だ。

 ちなみに『連邦の白い悪魔』として知られるアレだが、実は『もともと銀色の予定だったが、当時のセル画で表現できなかったから白にした』という説があってな。そういう絵で表現できないことが、文章だと表現できる。

 実際、当時真っ先に発売された超合金は銀色だったよな。


 ……うん。

 どっちも難しいので、ロボットの外見が描写できないから不利って話は嘘だな。

 あ、念のために言うと、「ロボット好きは見た目にこだわるからどーのこーの」とか、読者を舐め腐ったことは言うなよ?

 それは「じゃあ裏を返したら、ファンタジー好きは見た目どうでもいいと思って読んでる人ばっかだと思ってるんですか?」って切り返しになっちゃうからな。

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