第16話 隙あらば自分語りが嫌われる理由

 よう、古城ろっくだ。前回言った通り、某少年革命家( )の話……ではないんだが、ああいうのがなんで嫌われるのかって話をしようと思う。

 いや、僕に言わせれば別に不登校が出て来ようが何しようが、知らん家のガキにまで説教してやる義理なんかないと思っていたんだがな。先日ひとつの真理にたどり着きかけたのでネタにする。


 世の中には「言ってることは一理あるけど立場で台無しにする」という輩がいるんだ。


 こないだ、僕が「ピストバイクも一台あると楽しいかもな」などと思っていた時のことだ。いや、まあ本気で買う気があるかと問われれば「ない」って答えになるんだろうけど。

 アマゾンで4万円もしないくらいのピストって、結構多く存在するのな。その性能は大体お値段相応~未満なんだが、それでもピストとしての面白さはありそうなんだよ。

 ちなみに、ピストバイクの部品点数はママチャリより圧倒的に少ない。生産も実はママチャリより簡単だ。なので、それなりの性能で良ければママチャリ並みのコスパで作れる。

 ただ、シンプルゆえに職人技が光るバイクでもあるんだよな。だから高いピストと安いピストの差は歴然になる。鋼を叩いて刃をつけただけの日本刀とか、魚を切って飯の上に乗せただけの寿司に近い。シンプルだから難しいんだ。

 さて、この無駄のないエレガントなバイクを探しているうちに、とあるyahoo知恵袋にたどり着いた。


「予算四万円でおすすめのピストバイク教えてください」


 というものだ。実にシンプルだな。ピストのようなエレガントな質問だ。質問者さんはきっと素敵なピスト乗りになれる。

 それに対して、ピスト乗りらしくない汚い回答が来ていた。長ったらしいので要約すると。


「4万円でピストが買えるわけないでしょう。そんな値段で売ってんのはピストの形したゴミ。俺なんか中学生の頃、5万もするピストに乗ってたぜ。当時の大学の初任給を考えろよ。バブル前だぞ。

 今なら130万円も出せばいいピストが買えるんじゃないかな。俺みたいに」


 というものだった。

 ……うむ。なんというか、まあ

 実は言っていることはおおむね正しい。

 130万円というのは、本格的にトラックレースをしたい人間がピスト(というより競輪自転車)を組みたいなら当然のようにかかる額になる。フルカーボンで1グラムでも軽くしたいなら常識的な値段だ。

 ピストバイクの業界は、『値段相応』の車体しか出回らない。クロスバイクやロードみたいに『お値段以上』なんてものはない。

 4万と言ったら、ママチャリのちょっと高級なやつが買えるくらいの値段だ。その値段で作るピストは、やはりママチャリのちょっと高級なやつ程度の走りしかしない。なので「そんな安物を探すな」という意見には賛成したい。


 ……しかして、どうだろう?

 おそらく質問者は、トラックレースをしたいわけではないだろうな。街乗りを楽しみたいのだろう。ならば130万のフルカーボンバイクは用途としてはオススメできないのではないか?

 その使い方なら、ブレーキ台座が付いたクロモリフレームで10万くらいの車体をオススメしたい。コグもレース用はきついな。14~16Tくらいのリアコグを持っておくと便利だ。必然、予算は数千円多めに見積もっておけばいい。

 あるいは、すでにロードバイクに乗っているうえでサブバイクとしてほしいなら、マジで4万で充分である。家に飾って楽しむなら3万でいいし、缶スプレーとステッカーでデコりたいだけなら2万でいい。


 まあ、あれだ。

 予算の話に関しては正しいことを言っているんだが、結局なにがいけなかったかと言えば、「俺様は高級自転車に乗ってるぞ。中学生のころからな」ってマウントとり始めちゃったのがよくなかった。

 その部分を「俺様は」という一人称ではなく、「レーサーなら」という業界全体の話に置き換えてみたまえ。するとあまりイライラしない。

 マウントとりたがる奴は自分語りを過分に含む。それも自慢話を中心にな。そして自慢話の相手を弱者だけに絞る傾向がある。自分と同等かそれ以上の人間に対しては自分語りをしない。そういうものだ。

 この話に出てきた『彼』は、自分が高級自転車に乗ったことで視野を狭くしたんだろう。

 僕に言わせればこの話、『一台もピストを見たことない質問者に対して、一台しかピストを見たことが無い奴がマウントとっている』ようにしか見えなかった。






 そこいくと、僕は100台のピストを見てきたからね。ママに5万のピスト買ってもらったことを自慢する中学生とは知識量が違うのさ。僕くらい広い視野を持ってしまうとね!






 と、今のがマウント取りだ。ほら台無しになっちゃっただろ(笑)

 さて、冒頭の少年革命家( )の話だが、彼も「学校に行かない選択肢がある」と言うだけなら、まだ正当性があったのだろう。問題は「学校に行ってる子供はロボットと同じじゃん」と言ってしまったこと。

 これにより、革命家と言うよりも「学校に通っている子たちにマウントとりたいだけのクソガキ」のイメージが上がってしまった。

 ついでに言えば、「俺はロボットと違うから、youtubeで面白い動画を出す」という趣旨の発言をしたことにより、周囲の目も厳しくなるのだ。

 結果として「ほう。そこまで言うなら面白い動画を出してみろ。出せないくせに粋がるな。もし動画がつまらなかったらボロクソ叩いてやる」と言われてしまうのさ。

 まあ、そのあと本当に面白い動画を出し続けていれば、評価も変わっただろうけど。

 え?僕はどうなのかって?

 僕は自分語りをしてもいいのさ。だって僕は本当に面白い小説を世に出している。どこぞのガキと違ってね!


 ……ほら台無しになっちゃっただろ。

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