第77話 衝突
アオイは俺の頭を押さえ、地面に伏せさせた。
周りに居た兵士は厳戒態勢を取り、銃を構える。
アオイは小声でこちらに対して話す。
(貴方はもしやカズト様ではないですか?)
(いやー、エヘヘバレちゃった。)
するとアオイは立ち上がり、自分を強く抱き締める。
「やっぱり!カズト様、ご無事で良かった!!」
だが俺はこの時、天国と地獄を見ていた。
顔には大きな胸を押し付けられ、最高な状況だが、強く抱き締められている為、背骨がメキメキと音を立てている。
更にヴァイスの目から光が失われ、殺気を出しまくるヤンデレモードになる。
「カズト………サマ?」
「あ、アオイ、は、離してくれ!」
「あっ、すみません」
アオイが俺を離すと、ヴァイスはすぐに腕を掴む。
「そういえばそんな場合ではありませんね、今の発砲音がどこからだ?」
アオイは周りの兵士に状況を聞く。
一人の兵士はそれに答える。
「分かりません、狙撃兵の可能性が高いと思われます」
「そうか、私と数名の兵士は私と行動し、残りの兵士どもは彼らの保護を!」
「「「ハッ!」」」
近くにいた兵士は俺の腕を掴み、連行しようとした瞬間、どこからか声がした。
「させません………」
すると、俺の近くに居た兵士は突然地面に倒れる。
「すみません、遅れてしまいましたカズト様。お怪我はありませんか?」
俺は声のする方を見るとそこに居たのは黒い軍服姿のスラが居た。
「安心して下さい、峰打ちです。休戦中は殺人は行いませんので」
スラは短刀を逆手に持ちながら構える。
アオイは大太刀を構え、他の兵士は銃口をスラに向ける。
「あら、狙撃兵を置いているのに、殺しをしないのは虚言では?」
「もしもの時です。あと狙撃兵ではありません、カズト様の忠実なる僕です」
するとアオイの後ろにいた兵士がざわめき始める。
「つまりあいつが例のニホンジンか」
「手は簡単に出さない方が良い。何をしでかすか分からないぞ」
「卑しい種族め………」
俺はもうそういった言葉に言葉には慣れていた。
するとアオイは大太刀をエルフの方に向ける。
「少しは黙れ貴様等、一応あの方はバーベンベルク王国の国王になる予定のお方だ。私は彼を連れて行くぞ」
すると兵士達はそのアオイの発言に黙る。
アオイは力があるのか、それともただ恐怖を与えているのか分からなかった。
「大扶桑帝国陸軍欧羅地域担当アオイ中尉、推して参る………」
そう言って、アオイはスラの方に刀を構える。
するとスラも興味を持つようになる。
「ラシアの名乗りの文化ですか……興味深いですね」
「ラシアではなく、扶桑の文化よ!!」
するとスラはナイフを持ちながら突撃をする。
アオイは大太刀をスラに向けて切り捨てようとするが、スラはすぐにそれを避け、アオイの顔に斬りかかろうとする。
だが、アオイは一瞬で判断し、避けたが、頬にかすり傷が出来る。
かすり傷から真っ赤な血が垂れると、アオイはそれを親指で拭き取る。
「へぇ、少しは腕があるようね……」
「こんな事は普通です。逆に極東のモノノフがこれほどの力しかないという事に失望しております」
スラはそう言いながら、溜め息を吐く。
というか、俺もこいつらの戦いを止めなければ……。
「二人とも?落ち着こう?」
「「カズト様はお黙り下さい!!」」
二人は物凄い形相でこちらを見る。
「あっ、はい」
俺は彼女らの態度にすぐに黙る。
正直、俺はマジで情けない。
本当に俺に異世界的な力でもあるのかな……。
するとアオイは大太刀を鞘に直す。
スラはその行動に頭を傾げる。
「どうしました?まさかカズト様の言うことを聞いたのですか?」
「フン、馬鹿言わないで、極東の鬼の力を見せてあげるわ、兵士!金棒!!」
そう言ってアオイはすぐさまエルフ兵に大太刀を渡し、ゆっくりと車輪で運ばれた金棒を手に取る。
アオイはすぐにバットより少し大きめな金棒を手に取る。
すると横に居たエルフ兵が心配そうに聞く。
「………アオイ様、戦いは避けるべきです」
「別に大丈夫よ、すぐに片付けるから」
そう言って自信満々な表情をしながらアオイは金棒を肩に乗せる。
すると何を考えたのか、スラが話し出す。
「金棒って………まるで棍棒を持ったオーグみたいで勇敢なるフーサンのモノノフとはとても感じられませんね………」
するとアオイはピクッと反応する。
アオイはニッコリとしながら聞き直す。
「あら?先程、我が国の勇敢なる
俺は嫌な予感がする。
そう感じ、彼女らの間に入って制止させようとする。
「スラ止めろ!アオイも手を引いてくれ、頼む!!」
するとアオイは申し訳なさそうな声で返答する。
「カズト様、申し訳ありませんが止めないで下さい!あとお前!私の国の戦士を侮辱したから絶対にぶっ殺してやる!!」
まさか、アオイのキャラが崩壊しちゃった!?
アオイって暴走したらこうなるのか………。
するとスラは右手で招くように指を動かし、挑発する。
アオイは完全に冷静さを失い、スラに向かって突撃し、金棒を振りかぶる。
だがスラは何もせず、そのまま直立で立ち尽くす。
「逃げろスラ!」
俺はそう叫んだが、もう遅かった。
アオイの金棒はスラの頭を直撃し、首がもげる。
そしてスラは膝から崩れ落ち、その場で倒れた。
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