第74話 一杯のスープ
場所は戻って、前線の街グラデツ――――――
俺とヴァイスは一緒にベッドに寝ていたが、俺は目を覚ます。
すると俺の顔の目の前にヴァイスが添い寝しながら微笑み、こちらを見ている。
小悪魔的な微笑に俺は最初は気づかなかったが、一瞬で目覚めた。
「フフッ、お目覚めですか?カズト様。」
「ヴァ、ヴァイス!!」
ヴァイスがそう言うと、俺の顔が赤くなり、そして熱くなる。
ヴァイスが可愛いのは確かなんだが、俺にはレ、レナが居るんだよぉ!!
と言ってもレナが俺を好きになっているという保証は無いが………。
「何故、私の名前を大声で呼んだんですか?それにしてもカズト様は長い時間寝ていたのですね。寝顔がとても可愛らしかったのです。」
「寝顔が可愛いなんて言うな!それに俺はそんな長い時間寝てたの………かっ!?」
ヴァイスがそう言うと俺はゆっくりと外を見る。
すると外の景色は見えず、暗くなっていた。
まさか嵐か?………いや、それなら風や雨の音や聴こえるはず。
………まさかホントに明るい時間帯を俺は寝過ごしたのか!?
アアアア、セバスを見送ろうと思ったのに、しくじったなー。
「ヴ、ヴァイス、今は何時なんだ?」
「今は……ちょっと待って下さいなのです。どこかに懐中時計が……あっ、8時なのです。」
「うーん、どうしようか。………一緒に夕食でも食べようかヴァイス。」
「か、畏まりましたなのです、カズト様!今から用意をするのです!!」
それにしても俺は長い時間寝ていたのに、砲撃の音すらしないのは、本当に敵とは休戦をしているんだな。
俺とヴァイスはテントの外を出る。
外を出ると、周りから美味しそうな匂いが漂っている。
すると俺のお腹の音が鳴る。
「へへっ、カズト様お腹空いているんですね。」
「あ、まあ、うん、だから外に出たんだよ。」
「じゃあ私が取ってきますね、カズト様はここでお待ち下さい。」
「ありがとう、ヴァイス。」
俺は近くにあった丸太の上に腰掛ける。
その時、周りから囁くような声が聴こえる。
周りを見てみると、俺を睨みつけたり、奇怪な目で見る兵士達が遠くに居る。
もう段々と慣れている俺の頭はどうかしてるな。
すると一人の兵士が近寄って来る。
顔のシワで分かるほどの年老いたダークエルフだ。
逆にこんな所に来て大丈夫なのかと思うくらいの老け顔である
「オイ、若いニホンジン。ワシと少し話をしよう。」
「あっはい、どうぞここに。」
老兵は俺の近くに座り、一息ついてからこちらを向く。
そして笑顔で会話をし始めた。
「ワシも昔、ニホンジンとは仲良く暮らしていた事が有ったんじゃよ。」
「昔って、いつですか?」
「そうだね………400年前位かねぇ?」
よ、400年前………だと……………。
まあそりゃそうか、長生きするダークエルフなんだからそんな年が話に出て来ても当たり前だな。
でも400年前って事は、多分この時代的には中世辺りの頃だな………。
いわゆる日本人転移転生がよく描かれるファンタジー全盛期の頃か。
「へぇー、大分昔ですね。」
「そう、あの頃の大半のニホンジンは優しかったが、少なからず悪いニホンジンも居たんじゃよ。それがあんな事になるなんてな………。」
あ、あんな事?
あんな事とは一体どういう事なんだろうか?
「………あんな事って一体何なんですか?」
「ああ、それはだな―――――」
「カズト様!持ってきましたのですスープ!!………どうしたんですか?」
ヴァイスがスープを両手に持ち、目の前に立つ。
「ううん、何でもない。この老人と話していたんだ。」
「いや、ワシも年寄りで寂しくて話し相手が欲しかったんだ。もうここから退くよ。」
すると老兵はゆっくりと立ち上がり、尻の汚れをポンポンと軽く払う。
俺はこの老兵の話をもっと聞きたいと思って、老兵を制止させようとする。
「………もう少し、貴方の話を聞きたかったのに。」
「いやいや、メイドだからといって、こんな可愛らしいお嬢さんをスープ持たせながら立たせたままにさせるのは失礼だ。さあお嬢さんどうぞ。」
ヴァイスはその老兵の行為に頭を下げる。
「あ、ありがとうなのです。」
「それじゃ、ワシは元の仕事に戻るかのぅ。」
ヴァイスは老兵に再び軽くお辞儀をする。
そしてヴァイスは座り、老兵は自分の仕事に戻る為、ここから去っていった。
「優しいお方なのです。さあカズト様、スープ持ってきたので一緒に食べるのです。」
「ああ、そうだな………。」
それにしても、あんな事って何だろうな。
それだけはマジで気になる………。
一体何なんだろう。
俺はそんな事を考えながらスープを皿で一気に飲む。
「……………ウマッ!」
俺は夜空を見た後、ヴァイスがウトウトとし始めた為、俺はヴァイスをベッドに連れて行く。
ヴァイスをベッドに寝かせた時にはもう既に眠っていた。
全く、ヴァイスはまだ子供だな………。
俺がニコニコしながらそんな事を思っていると、一人の兵士が入って来る
「失礼します、陛下!」
一人の兵士が敬礼をして、急いでテント内に入って来る。
大声で入ってくる兵士の声にヴァイスは不機嫌な顔をしながら起きそうになる。
「すまないがもう少し静かにしてくれ……どうした?」
「はい………えー、ウィンドボナから伝令です。先程マルクスとヘラが出発し、明日の朝到着との報告です。」
「わかった、伝令御苦労、下がっても良いぞ。」
「ハッ!」
「だから静かにしてくれ!」
「す、すみません……。」
兵士は謝りながら、そそくさとテントから退出する。
………なるほど、二人がこちらに向かってるのかぁ。
だけど、こんな所に来ても暇なだけだろうなぁ。
戦争も無いし、楽しくもないし。
というか、何で俺は戦争を楽しみにしてるんだろう……。
祭りじゃあるまいし、馬鹿馬鹿しい……。
………はあ、そんな事を考えるのめんどくさいな、もう一度寝よ。
俺は大きな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます