第27話 金色のカツラ

 エレベーターが一階に着く。

 俺はゆっくりとレバーを戻し、蛇腹状のドアを開ける。

 このエレベーター、意外に操作が難しいな。

 今考えると俺の世界にあったボタン押して行きたい階に行けるエレベーターは凄いものだった事が分かるな………。

 俺はそんな事を考えながら、ロビーに着くとそこにゲルマニアの綺麗な軍服を着たフレイヤが待っていた。

 彼女の軍服には沢山のキラキラと輝く勲章を左胸に身に付けている。

 レナはフレイヤに気づくと「ありがとうカズト。」と軽く感謝し、俺の腕から離れ、フレイヤの所に行く。

 フレイヤはレナを見つけると、彼女は笑顔で迎える。


 「ヴィルヘルミナ様、そのドレス凄く似合っておりますよ!」

 「ありがとうフレイヤ、貴女の軍服も格好いいわよ。」


 フレイヤはレナにそう言われると、フレイヤは軽く頭を下げ、敬礼する。


 「ありがとうございます、皇女殿下に褒められるなんて恐悦至極に存じます。」

 「フレイヤ、私をヴィルヘルミナではなく、レナと呼びなさいって言ってるでしょ!」

 「申し訳ありません、ですがやはり皇女殿下なので大勢の前ではレナ様よりヴィルヘルミナ様で御願いできませんか?」

 「………判りました、良いでしょう。」


 彼女らはにこやかに話しているが、周りは俺を睨んだり、ボソボソと陰口を言われているように感じる。

 殆どは小声ではっきりとは聞こえなかったが、異世界人は悪魔だとかそんな言葉が聞こえたりした。

 マジでこの世界の転移者は何しでかしたんだよ。

 そこにヘルマンが俺の方にゆっくりと近づく。


 「カズトさんにヴァイスさん、二人ともとてもお似合いですよ。」


 そうへルマンに言われた俺とヴァイスは軽く礼をし、「ありがとうございます。」と二人揃って言う。

 ヘルマンは話を続ける。


 「ところでカズトさん。」

 「何ですか?」

 「パーティーに今から行きますが、やはりニホンジンというより異世界人は珍しいから会場で混乱が生じると思うからこれを。」


 すると、ヘルマンが手にしていたのは金髪のカツラである。


 「………あの、これは?」

 「カツラだ、サイズは自動的に変更可能だから心配はするな。」


 そう言われてヘルマンからカツラを手に入れ、鏡を見ながらそれを頭に着けた。

 すると、耳が変形しエルフのような耳になる。

 だが、目の色は変わらず黒い瞳のままである。


 「それ着けながら領主をすればいいじゃないか?似合ってるぞ。」


 フレイヤは自分をチラッと見ながらそう言い、ヘルマンもそれを聞いて、納得するように頷く。


 「良い事言うじゃないか、あの地域は異世界人に対する憎悪が高いからな。それ私の祝いの品として貰ってくれ。」


 そう言って、ヘルマンは俺の肩を叩く。


 「それじゃ行こうか!姫様も君も来たことだし、私達は最初の馬車に乗るけど、君達は最後の馬車に乗ってくれ。」


 そう言って、レナと他の外交官、軍人などが一斉に歩き始める。

 勿論、レナはその軍団の中心に居て、完全に彼女を守っていた。

 その群衆の真ん中にレナを気づいたここのホテルの客は彼女に対して手を振ったり、歓声が聞こえた。

 最初にレナとヘルマンが一番最初の馬車に乗り込む。

 順々に外交官や軍人が色々な馬車に乗り込む。

 そして俺達が乗る馬車が来た。

 レナの馬車と比べたら少し地味な馬車だが、それでも内装は豪華である。

 最初にヴァイスを乗せ、次に俺が乗り込む。

 すると、フレイヤも俺たちの馬車に乗り込む。


 「何で、俺がレナ様の馬車じゃなくてこのニホンジンが乗車している馬車に乗らないといけないんだ。」


 イライラしながら馬車に乗車する。


 「何だオマエ?何か言いたいなら言えよ。」

 「いや、特に何も………。」


 フレイヤは俺に対して睨みつけるが、すぐにヴァイスを見るとニヤけ始め、俺の正面に座っていたヴァイスの隣に座ろうとする。

 だがヴァイスはそそくさと俺の隣に来る。

 ヴァイスが自分の隣に来たことにより、フレイヤはまた自分を睨みつける。


 「な、何かご用ですか?」

 「何でもない!」


 俺が優しく問いかけると、フレイヤは怒って舌打ちをして、頬を膨らませ不満を表す。

 だが、扉は閉まらないまま御者はドアの前に待つ。

 

 「ドア閉めるの遅いですね、カズト様。」

 「そうだな、誰か待ってるのか?」


 俺とヴァイスは不安になって、フレイヤに理由を聞いた。


 「なあフレイヤ、一体誰を待っているんだ?」

 「…………………。」


 フレイヤは不貞腐れているのか分からないが、俺をずっと無視する。

 続いてヴァイスが聞いた。


 「フレイヤさん、何で発車しないのか教えて下さいなのです。」

 「ああ、大丈夫だ安心しろ、まだ来ていない人が居るから待っているんだ。」


 いや、ヴァイスとなら話すんかい!

 ………まあ、良いや。

 俺はそう思いながらフレイヤの話を聞く。


 「着替えているだけだからすぐ来るさ、ほら!」


 フレイヤがそう言うと一人の女性の軍人が軍服のスカートをひらひらさせながら走って来る。

 髪型はツインテールの人だが、はて?どこかで見たようなツインテールだが………。


 「すみません、遅れました!!」


 そう言って馬車に飛び乗り込んで席に座る。


 「ふぅ………危なかった!」


 フレイヤは普通の顔をしていたが、ヴァイスは青ざめる。


 「どうしたヴァイス?」

 「か、カズト様、あの人ですよあの人!」

 「あの子って?」


 俺はヴァイスにそう言われながら、軍服の子を見ると、ニッコリと彼女は見ていた。

 俺は狂気じみた笑顔を思い出す。

 何故ならそこに居たのはあの時のラッキースケベで俺を殺す勢いに暴れていたあのメイドだったからだ………。

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