第26話 皇姫とメイドの仲直り
――――少し時間が経ち、俺も体調が整い始め、取り敢えず俺は自分の部屋に行き、着替えを始める事にする。
自分の部屋に入ると、ベットの上に服が並べられていた。
ウェストコートと呼ばれるスーツの一種で今回のパーティー会場でのドレスコードだそうだ。
一人でウェストコートという服を初めて着るが、サスペンダーとか、ガーターベルトなどを着るのに苦労する。
というより、ガーターベルトって男性用の靴下にも着けるのか、てっきり女性のタイツだけだと思ったよ。
そういえば、この世界に来て一度も俺は何時間も眠るような睡眠をしていないな。
マジで疲れた。
俺はそう考えて、俺はベッドに倒れ、ゆっくりと電源が切れたロボットのようにすぐに眠った。
――――ん、もう時間かな?
俺はそう思い、壁に掛かっている時計を見る。
大体数十分位の時間が進んだか、疲れてるはずなのに全然寝れなかったな。
そういえばもう終わったかな、ヴァイスの着せ替え。
そう考えながら俺はゆっくりとベットから起き上がる。
近くに置かれていた大きな鏡で服や髪が乱れていないかを最終確認をし、部屋を出ようとする。
部屋の扉を開けると、レナがそこに立っていた。
レナは俺と目を合わせた瞬間、「キャー!」と叫び声を出し、俺に対して彼女は右手でビンタをする。
突然の平手打ちのショックで尻餅をついて、叩かれた左頬を左手で押さえる。
俺は「えっ?えっ!?」と声を出して、レナはその場からすぐさま逃げ出す。
俺はショックのあまりに立ち上がる気力が無かった。
レナの後ろに居たのはヴァイスで、彼女はレナに声を掛けようとするが、レナが逃げてしまったようだ。
ヴァイスは俺を見てお辞儀をして、謝る。
「す、すみませんなのですカズト様!私、姫様に先程の気絶していた状況を事細かく説明したら物凄く怒ってしまったのです。そして扉を開けようとしたところにカズト様が現れたのです。」
「あ、ああ、なるほどね。ヴァイスが謝る事でもないよ。」
俺はすぐに立ち上がる。
そりゃ事故だとしても胸に顔から突っ込むのは怒るだろうなぁ………俺も謝ってないし。
そう思いながら顔を上げるとヴァイスがそこに居た。
彼女は淡い黄緑色の美しいドレスを着ていた。
俺は思っていた言葉を言う。
「そういえば、そのドレス似合うね、ヴァイス。」
そこでヴァイスは悲しそうな顔をして下を向いていたが、俺がそう言うと少し笑顔になる。
「とにかく、止めろよさっきの悲しい顔なんて、俺が悪いのに、笑顔で居てくれ。」
俺がそう言うとヴァイスはニッコリと笑う。
「そう……ですか、ありがとうなのです………。」
「ところで何で俺が胸に顔面を押し付けていたのを知ってたの?気絶していただろ?」
ヴァイスは狼狽し、彼女の瞳が泳いでいた。
「な、ななな何を言ってるのですか、カズト様?私はフレイヤさんからききき聞いたのですよ??」
「フレイヤはあの現場で最初から居なかったよヴァイス。」
「…………………。」
ヴァイスは冷や汗を掻き始め、俺の方向を見ず、違う方向を向いてずっと黙っていた。
「ヴァイス、俺がオリヴィアという子に刃物を突き付けられている時、お前起きてたな。」
「………はい、というより胸を揉まれていた時も起きていたのです、だから………。」
それを聞いて、俺は呆れを通り越し、笑ってしまった。
すると俺が笑うと、ヴァイスはいきなり怒り出す。
「な、何故カズト様が笑うんです!?」
「いや、胸を揉んだ事に怒らないなんて、ヴァイスは優しいな、と思ってな。」
「………それは私がカズト様の事が好きだから許してるのです。記憶を失ってから一ヶ月の間、私は暴力や暴言に脅える毎日でした。だけど、カズト様が助けてくれたのです。私はこれを『運命』だと感じたのです。だからありがとうございますなのです。」
俺はこれほど人に感謝された事が無かった。
正直に言って嬉しかった。
ヴァイスはモジモジしながら話す。
「だからカズト様、私、カズト様の事―――」
すると突然、ヴァイスと俺の間に誰かが割り込む。
そこに居たのはレナだった。
「な、何してるのよカズト、早く来なさい!パーティーに遅れるわよ。」
レナは手を引っ張り、俺の左腕に抱きつく。
ヴァイスはそれを見て目を丸くする。
「さ、さっきのビンタは、突然貴方が現れたから、お、驚いただけだから、べ、別にあの子が言った私の胸の上に寝ていた事に怒ってないからねっ!!」
突然のツンデレスイッチを発動するレナは慌てている様だったが、すぐにションボリと悲しそうにする。
「だから、叩いてごめんなさいカズト………。」
「えっ、ああ……まあ、叩かれたことは気にして無いから別に良いよ。」
本当はめっちゃ気にしてたけど、嘘を言わないとダメな気がした。
だが、問題なのは横にヴァイスが居ることだ!
ヴァイスは最初は驚いていたが、勃然としてレナに敵意を向ける。
するとレナはヴァイスを見て、突然彼女を嘲笑う。
「あら、貴女はメイドなのに何故そんなに近くに居るの?話が終わったなら早くカズトから離れなさいよ。」
俺はヴァイスに対しての言葉でそれはあんまりだと感じ、俺はレナに対して注意をする。
「レナ、ちょっとそれは無いんじゃないか?」
するとレナの発言にヴァイスは激怒し、俺の右腕に強く抱きついた。
俺の腕に抱きついたヴァイスは声を
「私はメイドじゃないです!今着てるのはドレスだし、あのメイド服はカズト様が可愛いと言ってくれて買ったんです!!そ・れ・に、一国の皇女が人間と抱きついても良いのですかねぇ??」
ヴァイスは興奮しながらそう言うと、レナは溜め息を吐くと同時に話し出す。
「………それもそうね、じゃあ貴女も一緒にカズトと腕を組んで行きましょう、今回だけ許すわよ、ヴァイス。」
レナが初めて彼女の名前の『ヴァイス』と呼んだ………だと?
俺とヴァイスは揃って「「えっ!?」」と声を出す。
どういう風の吹き回しなんだろうか。
俺がそう思うと、ヴァイスは先程まで怒っていたのに、笑顔になっていた。
「な、なによ二人して、私何か変なこと言った?」
「ゆ、許すも何も貴女の命令に従わなくても私はカズト様に抱きつくのです!」
「あらそう、好きになさい。」
………これは仲が良いのか悪いのか分からないけど、多分仲良さそうだし別に良いや。
「レナ、ヴァイス、早く行こう。パーティーに遅れるんだろ?」
「そうですね、行きましょう。」
「は、はいなのです!」
俺はレナとヴァイスと一緒にエレベーターに乗り込み、一階のロビーへと向かう。
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