第13話 二大列強の会談

~ブリタニア百科事典④~

【ゲルマニア帝国】


 ユーラ大陸の中央に位置する強大な魔法帝国で主要民族はエルフである。

 千年の歴史を持ち、格式高い国家でもある。

 効率的な経済システムと伝統のあるプルーセン王室をゲルマニア皇帝に戴く連邦立憲君主制を維持している。

 人口は約4000万人で、首都はグロース・シュパンダウ。

 自然を愛する民族が故、国土の大半は森林に覆われ、

 首都も近代化した地域を除けば殆どが緑豊かな地域である。

 多くの魔法技術を輸出し、ユーラでも屈指の列強であった。だが日本人を中心とした異世界人により、

 魔王が倒され、彼らが持ち込んだ科学技術により魔法が廃れ始め、落ちぶれてしまうが、その科学技術を魔術と融合させた魔科学が誕生すると、また列強の仲間入りを果たした。

 その魔科学の技術を応用し、軍事技術にも採用し、軍事大国の顔を持つ。

 水、雷、風属性の魔法を中心に研究していたため、電灯や電化製品を生産し、輸出している。

 国際協同連盟の永続理事国である。

 亜人国家の中心的存在の国家であるが、帝国主義であるため、

 領土的野心が強く、ヒューマンのみならず亜人などの周辺諸国と何度も戦争を起こしては勝利し、領土を割譲するため、国内外の亜人達から「エルフは千年負け知らず」と言われてきたが、

 エトルリアとの亜人戦争では建国してから初めての敗戦を喫してしまった。




 俺達が馬車に乗車し、講和会議場に向かっている時、そのヘルヴェティアの第二の都市、ジェネヴラで行われる。

 ジェネヴラ(ゲルマニア語でゲンフ)は高く聳える山脈と湖に囲まれ、二つの川が都市に流れている。

 この都市はヘルヴェティアで有数の経済都市であり、金融センターの数はトゥリクムという都市に続いてヘルヴェティア国内で二番目である。

 この都市は他に国際協同連盟の議場であり今回の講和会議の開催場、万国宮殿がそこにある。

 その講和会議場の万国宮殿のとある一室では二ヶ国の外務大臣が話し合いが紛糾していた。


 「我がゲルマニアはエスターシュタットのニホンジン居住地の土地の譲渡は約束できるが、魔科学製品の生産、他国での販売禁止と莫大な賠償金は認めることは出来ないな。」

 「だが、貴殿の国が敗北を認めたのは事実、無条件で呑むのが普通であろう?」

 「我が国は負けてなどいないっ!休戦を望んでいるんだ!そんな事をすれば我が国の反エトルリア派が黙っていないぞ!良いのか!?」

 「その時はまた貴国を叩き潰せば良かろう?」


 ゲルマニアの外務大臣のヘルマンとエトルリアの外務大臣のムッツリーニは激しい討論が続いていた。


 「叩き潰すだと!?貴様はそれでもエトルリアの外務大臣かっ!」

 「申し訳無いね、私はまだ外務大臣に成ったばかりだから、エルフの外交のルールというものが知らなくてね。」


 ムッツリーニの失礼な言動にヘルマンは呆れるしかなかった。

 ヘルマンは小さくエトルリアの外相の悪口を呟く。


 「………このムッツリハゲ野郎が。」


 ムッツリーニは耳をピクリとする。


 「………おいヘルマン貴様、今言ってはならない事を言ったな。」


 ムッツリーニは顔を赤くし、体を小刻みに震わせる。

 ヘルマンはムッツリーニのその反応を見て、我慢が出来なかったのか彼は鼻で笑う。


 「ああ!言ったさ!このムッツリハゲ野郎ってな!」

 「き、貴様!その名前を呼ぶなァァ!!!」


 ムッツリーニはヘルマンの襟元を掴み、殴りにかかろうとする。

 その瞬間、国際協商連盟の職員のハーフエルフが彼らの部屋に許可無しに入室する。


 「双方、この場での殴り合いは厳禁です!神聖な議場ですよ!!」


 そう職員が言うと、ムッツリーニは舌打ちをして襟元から手を離す。

 ヘルマンは乱れた襟を直す。


 「まったく!これだから君って奴は。」

 「なんだと、貴様も大学時代と変わらず頑固者だぞ!?」

 「だから、もう止めてください!そんなに喧嘩をしたいなら、お互い自分の国に帰って戦争を継続したら良いじゃないですか!」


 職員がそう言うと、二人は職員に対して睨みながら言う。


 「「お前がそんな事を言う立場か?」」


 が、そう言った後、二人はすぐに静かに自分の席に座る。


 「い、今から仲介のフーサンの全権の方々が来るのに、そんなに争っていたら周辺国での貴殿方の国の評判が下がるだけですよ。」


 職員に言われ、彼らはお互いを見つめ合い、ため息を吐く。


 「………そうだな、もう戦争が終わったんだ。平和的な話し合いをすべきだな。」

 「ああ、少し落ち着いてから話し合おうか。おい君、俺と彼にコーヒーを注いでくれ。」


 そう彼らは言い、職員にコーヒーを頼む。


 「そういえば、陸軍大臣と一緒に来る予定ではないのか?」


 ムッツリーニはヘルマンに尋ねる。


 「ああ、少し用事を頼ませたんだ。もう少しで来るさ。」

 「私もその人に会いたくてね!魔王討伐戦争の時に私も若かった頃参加してて、冬の最前線の塹壕で魔王軍による突撃に多くの国の兵士が凍え、怯えながら戦っていると、俺の目の前にか細い彼が立っていたんだ。」

 「ああ、あの多数の戦死者が出た悪名高いトリエストの戦いか………。」


 皆が彼を必死に塹壕の中に戻そうとしたが、彼は敵の陣地の方へゆっくりと向かい、次の瞬間、彼は消えて敵の塹壕から悲鳴と銃声が前線に響いていたんだよ。

 数分後に彼は戻ってきた時は身体中が鮮血を浴びていて、敵の塹壕には魂が抜かれたような多くの捕虜と山のように斬殺された多くの死体がそこにあった。

 敵の情報を聞き出すため魔族の捕虜を尋問しようとしたが、彼らは『あいつはどの魔族より魔族だ。』と何度も呟くため、何も情報を吐かなかったので尋問が出来なかったそうだ。


 ムッツリーニは自慢げにフレイヤの長話を話すが、それを聞いて溜め息を吐くヘルマン。

 彼はズボンのポケットから煙草と魔石アナプティラスを取り出す。

 ヘルマンは魔石を叩き、煙草に火を付けくわえる。


 「その話は他の人から何回も聞いているから知っている。だがお前を含めて多くの人が勘違いしている。フレイヤ元帥は女だぞ。」


 ヘルマンはムッツリーニにそう言うとムッツリーニは首を傾げる。


 「嘘を言うなヘルマン、見た目がか弱そうだからってそれはあり得ない。どう考えたってあれは男性だ。話し方だって男性っぽい感じだったぞ。」


 ムッツリーニはそう言うと、ヘルマンは首を横に振る。


 「いや、フレイヤ元帥は女性だ。王室の特例で彼女を入隊したという情報は国内では大騒ぎになった。『血塗られた金色の貴公子』は実は『貴公子』ではなく『貴婦人』だった、と。」

 「それがどうした?彼女が女性だからって、彼女のしてきた功績は永遠に消えないんだ。すばらしい事だ!女性はこれまでよりもっと活躍する時代が来るという事だよ。」


 ヘルマンはムッツリーニの発言に頷く。

 すると、近くにいた職員が懐中時計を胸ポケットから取り出す。

 そして彼は二人の外務大臣の前に来て話す。


 「時間です。お二方、準備をしてください、仲介国のフーサンの全権が来ます。」


 ヘルマンはくわえた煙草を灰皿に擦る。

 そしてムッツリーニは飲んでいた珈琲を最後まで飲み干す。


 「野蛮な軍人達の戦争は終わったが、外交官同士の紳士的に自国の利益を優先するための戦いは今から始まるのだ。」


 ヘルマンはムッツリーニの発言に頷く。


 「その通り、我が国は戦争では負けたが、外交戦ではまだ負けてはいない。絶対に我がゲルマニアが有利にする!覚悟しておけ!!」


 ヘルマンが宣言すると、国連の職員が部屋の扉を開き、部屋全体に響くような声を出す。


 「エトルリアとゲルマニアの平和条約会議を開始します!フーサンの全権の入室です!!」


 そう職員が言うと、大勢の人々が会議室に入ってくる。

 神々の住まう国として唯一独立している扶桑は神様の階級の神民は官僚などの代表者だけであり、殆どの出席者は軍民の鬼族と平民の一種族の兎人とじんに構成されていた。

 各国の全権が席の位置に着くと、職員が椅子を後ろに引いて全権の彼らを座らせる。

 他の外交官や大臣関係者は近くで立っていた。

 円卓の片側にはエトルリアの全権、ムッツリーニが中央に座り、彼の後ろには多くの人間がズラリと並ぶと同時に彼らはムッツリーニに様々な助言をしていた。

 もう片方はエトルリア側から見て左から扶桑、ゲルマニアの全権が座り、後ろには様々なゲルマニアと扶桑の民族が立ちながら講和や休戦による様々な議論していた。

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