人嫌い、勤めの終わり

「ありがとうございました。」


「みゃー。」


バイト最終日、秀人は変わらずレンタル屋にて仕事をこなしていた。


「今日で終わりか…疲れたよ。」


「みゃー。」


「にしても、今回の稼ぎを何に使おうかな…」


今の秀人に欲しいものは特になかった。思い付くのは親へ金を返す、タマの餌を豪華にしてみるくらいだった。


「他にはないかな。」


「みゃー。」


「まあ帰ってからでいいか。今こんなこと考えても、思い付かないしね。」


最終日は特に問題もなく、秀人の仕事は順調に終わったのだった。そして最後の日とあってか、博人は近くの店を貸しきり豪華な晩飯を振る舞ってくれた。


「今日は気にせずー好きに食べろー!」


「…美味しそう。」


「こんなに贅沢なご飯、疲れが吹き飛びますね!」


「こ、これだけあると選べないね。」


「今日は無礼講だな。私にも敬語はなしでいいからな。」


「空腹。」


「いやーこんなに食べるとー後が怖いねー。」


「何言ってんだよ心愛、食べても太らないじゃんか。」


「その点私たちはね…」


「部屋で食べたい。」


「みゃー。」


それぞれが自由に食べ始めた。秀人は料理を皿に集めては端のほうでタマと食べる、他メンバーは親交を深めあっていた。


「…そっちの…学校はどう?」


「んーとねー自由だよー。」


「うちの学校は校則がキツいですから!羨ましく思いますよ!」


「でも面倒事も多いぜ?少しはキツくないと、やり過ぎる奴ってのが必ずいるからよ。」


「ま、まあうちで大きな問題は高山くんの事件だけだよね。」


「それ初耳かも。詳しく教えて?」


「詳しく。」


「私もその頃の話、聞いたことがなかったわね。ついでに聞かせてもらおうかしら。」


「そうか、彩花くんも林くんもいなかったからな。ここは原因となった、私が話そうじゃないか。」


「…いよ…待ってました。」


「自分等も知る限りフォローします!」


「…何盛り上がってんだか。」


「みゃー。」


「おうおうー!1人で何してんだー?」


「見ての通り食事、あと猫と交流してます。」


「にしてもよー高山くんは1人が多いよなー。」


「ええ。1人でいる方が、楽なんですよ。」


「そうかー…心愛たちのことはーどう思うよー?」


「失礼と思いますが、正直うっとおしいと言うしか。なんで僕を引っ張るのか分からないです。」


「…その内分かるといいなー。」


「そうですかね。」


「秀人ー何してんのさーうりうりー。」


「やめろ。」


「はははー!楽しもうぜー若者ー!」


話の盛り上がりもそこそこに、遅くなってはいけないと切り上げられたお疲れ会。各自部屋へ戻っていき、明日の帰宅まで休むことになった。


「あー疲れた。」


「みゃー。」


「…いつか他人の気持ちが分かって、それで何になるんだろうね。」


「みゃー。」


「まあ聞いてもわからないよね、おやすみ。」


秀人は休みながら、いずれは他人がわかるのかと考えるのだった。

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