人嫌い、夜のBBQ

「よーし乾杯ー。」


「「いえーい!」」


「…乾杯。」


「みゃー。」


2日目の仕事も終わり、本来なら初日にやる予定だった海辺でのバーベキューが始まった。


「…美味しい。」


「いいものですね!夜の海も綺麗ですし、最高です!」


「き、来たかいがあったよ。」


「これだけの人数で食べるのは、人生始めてかもしれないな。」


「同意。」


「普通は10人も揃わないわよ。」


「そーだよねー。でもーたのしいー。」


「にしても博人さん、毎度やること派手だな。」


「わざわざ来てもらってるからなー。」


「本当に美味しいです。」


博人がどんどん焼いていき、周りが食べていく。秀人は自分の皿に取るだけ取って、少し離れて食べていた。


「いやー凄い騒がしいよ。」


「みゃー。」


「これが飲み会ってものにあたるなら、サラリーマンは苦労の連続だね。」


「みゃー。」


「…秀人…遠くない?」


「これが適正距離だよ。」


「先生!おかわり持ってきましたよ!」


「ああどうも…多くない?」


「た、高山くんはもう気分良いの?」


「じゃなきゃ部屋に籠ってるさ。」


「どうだ高山くん、大勢で食べると美味しいな!」


「ああそうですねはい。」


「秀人ーあーんしてあげるー。」


「自分で食えますから。」 


「なあ高山、なんで先生なんて呼ばれてんだ?」


「それはあいつに聞いてください。」


「何か飲むかな?」


「ジュース貰えますかね。」


「あーん。」


「やめろ。」


「駄目?」


「さっき別の相手に拒否したの、見てたでしょ?」


「忘れた。」


「適当言い過ぎでしょ。」


「おーい高山くんー。手伝ってくれー!」


「今行きます。」


秀人が離れたとしても、周りが近づくのでいつもと変わらなかった。しかしこの機に、普段学校の違いで会わない心愛たちと麗華たちは仲良くなったようだ。

沙弥は大山に先生呼びの理由を聞いたり、心愛は普段の秀人の様子を想汰や正子と話したり。


「…興味深い。」


「女の子なんだから、ちゃんとお洒落しないとね。」


「勉強。」


「ちゃんと勉強しなさいよ。」

  

明奈は麗華と林に、今時の流行りファッションを仕込んでいた。林は着飾ることに興味が薄く、麗華は動ければいい程度の服チョイスだった。彩花はその集まりを眺めながら、のんびり過ごしていた。


「どうだー高山くんー。」


「何がですか。」


「気分だよー昨日は頑張ったんだろー?」


「休みも貰えましたし、明日は働きます。」


「いい返事だー!」


「ところで、このバイトいつまででしたっけ。」


「あれー?心愛から聞いてないかー?」


「当初行けなかったので、深く聞かなかったんです。」


秀人はさらっと嘘をつく。行けないと言うよりは、行きたくなかったが大正解だ。


「3泊4日だなー。」


「つまり明日が最後で、2日後には帰るんですね。」


「そーいうことだなー。」


「まああと一日、気楽にやりますよ。」


博人に頼まれたのは食材運び。みんなが予想より食べているらしく、秀人は肉などの補充をしていた。


「ウチもやろうかー?」


「別に平気ですから。」


「遠慮しないのーうりうりー。」


「うっとおしい…」


「ところで秀人ーウチの水着どうー?」


「あ?良いんじゃないですかねはい。」


「冷たいよー。」


海で食べるのに何故水着なのか。ここまで仕事ばかりで着る機会もなく、食べた後に遊ぼうと決まったからだ。当然秀人は参加する予定もないので、私服で来ていた。


「…秀人…これ食べる?」


「君も泳いだら?」


「…泳ぐの…ちょっと苦手。」


「なるほどね。」


「…これ…似合ってるかな。」


「さあね。僕に感想も止められても、体が隠せればなんでもいいんじゃない?」


「…むう。」


麗華はワンピース型の水着を来ていた。本人は子供っぽいなど気に入らないようだが、かなり似合っていた。


「先生!おかわりは…麗華さんに負けました!」


「勝ち負けあったんだ。」


「…大山…泳ぎ上手いね。」


「そうですかね!体を動かすのは気分がいいです!」


「僕はもうお腹一杯だから、存分に動いてきたら?」


「そうですか!ではお言葉に甘えまして!」


そう言うと、大山は海へ向かって一直線。元気に泳ぎ回っていた。


「い、生山くんは凄いね。運動部に入ってたら、かなりモテそうだけど。」


「そうだな。あの動きだと、いろんなスポーツをしても上手くやれそうだが。」


「なんでこっち来るのさ。」


「せ、先輩が一人で高山くんが食べてるからって…」


「いかんぞ高山くん。私がいるのだから、一緒に食べよう!」


「…一応…私がいるけど。」


「「あっ。」」


遠目に見ると麗華は秀人に隠れ、一人離れて食べているように見えたのだ。


「ご、ごめん。隠れてて見えなかったよ。」


「すまなかった麗華くん。」


「…気にして…ないよ。」


「僕いなくてもいいよね。」


「ま、まあ一緒に食べようよ。」


「そうだな。」


「…食べる。」


「僕の意思は無いのか。」


「食べる。」


フラッと現れた林。秀人の横に座り、秀人の皿から食べ始めた。


「…なんで僕の分から食べるわけ?」


「美味しそう。」


「…もう…食べ終わり?」


「ひ、博人さんがこれでおしまいだって。」


「今は片付けに入っているそうだ。手伝おうと思ったのだが、若いのは遊んでこいと言われてな。」


「美味しい。」


「はあ、もういいよ。これあげるから。」


秀人は自分の分を林に渡し、モールへ歩き出した。


「…どっか…行くの?」


「買い物だよ。別に逃げないから、1人で行かせてよね。」


そう言って秀人は、欲しいもののためにモールへ来たのだった。


「さてと…これだね。」


「なんだそれ?」


「花火を買って何かするの?」


「…どうしてお二人が?」


「高山がどっか行くから、目を離すなって心愛に頼まれてよ。」


「平気だって伝えたけど…心愛ちゃん心配そうだったから。」


「はあ、すみませんねそんな仕事を。」


「別にいいぜ。」


「それで、その花火どうするの?」


「海辺でやろうかと。普段家の周りでなんて、いろいろ迷惑を考えるとできないですから。」


「でも以外だな。高山は何て言うか…そういうの買わないかと思ってたが。」


「失礼な。花火は1人で火をつけて、1人で楽しめる良いアイテムですよ。」


「1人が前提なんだね…」


花火を買った秀人は、見に来た沙弥たちと海に戻る。念のため博人に聞いたが、打ち上げ花火以外なら許されるそうだ。


「みゃー。」


「お、タマも見に来たの?」


「ねータマちゃーん…あれ秀人ー何するのー?」


「これですよ。」


そう言って博人から借りたライターを使い、手持ち花火に火をつける秀人。鮮やかな光が、暗い砂浜を照らすのだった。


「ウチもやりたいー!」


「…綺麗…どうしたの?」


「なにやら明るいですね…おお先生!花火とは素晴らしいですね!」


「ふ、普段はやれないもんね。」


「みんなで花火か…やろうじゃないか!」


「あら、あなたが買ってきたの?ちょっと以外だけど…本来は1人で楽しむ予定だったのでしょうけど。」


「やる。」


「俺たちも買ってきたぜ!」


「みんなで楽しみましょうね。」


「僕はこんなつもりなかったのに…明かりに集まる虫かよ。」


「みゃー。」


秀人の暴言も聞こえず、全員花火を楽しむのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る