人嫌い、友達の定義

「ねえ秀人ーウチは友達なのー?」


「先生!ここはびしっと言いましょう!」


「…付き合いは…長い。」


「ぼ、僕はクラスメイトがピッタリだから。」


「私は…何かしらね。」


「私は先輩だな。」


「なんなんだこれ。」


ボランティアの件も終わり、穏やかな生活に戻ると考えていた秀人。それは甘かったようで、昨日のキズナチャットの件で校門前に心愛が立っていた。


「あのさ、人を待ち伏せといて急になにさ。」


「なにって秀人ーウチのメッセ無視したじゃーん。」


「…それは…よくない。」


「先生もお疲れだったのでは!」


「き、昨日のボランティアのこと?」


「うまくいったと聞いたが。」


「それとは関係無さそうよ。」


「今後の関係はーってやつ?」


「それそれー。」


「…詳しく。」


「ウチとしてはー秀人と友達かなってー。でもー秀人はどうかなーって。」


「職場の先輩かと。」


「それ昨日も聞いたしー。」


「それだと私と被ってしまう…ゆゆしき事態だぞ。」


「大丈夫です!まだ生徒会長が残ってますよ!」


「…正子先輩…そこじゃない。」


「よ、ようは友達かどうか?」


「それなら、ここにいる全員分かってるわ。」


「本当ー?教えて教えてー。」


「おっ、僕の気持ちが分かってきたかな?」


「…せーの。」


「「違います。」」


「えー嘘でしょー!」


「大正解だよ。花丸つけるくらい。」


「…花丸…もらった。」


「まあ当然ですよね!」


「ま、まあなんとなくね。」


「高山くんは甘くないぞ。」


「もし友達だって言えば、彼を偽物扱いしなくちゃいけないもの。」


「で、でもー麗華ちゃん達はー友達でしょー?」


「「違います。」」


「…どゆことー!」 


「あのさ、長くなるなら場所変えない?立ってるのも疲れるし、大勢に注目されるのは気分が悪い。」


場所は校門、全校生徒さらには先生すらこの騒ぎを見ている。


「…どこ…行こうか。」


「先生のお部屋は…この人数だとパンクですね!」


「他校の生徒を教室にいれるのは、少し困るな。」


「じゃ、じゃあそこら辺の店に。」


「またファミレスかしら?」


「ならー寄り道行こうかー。」


「は?」


話し合いの場に決まったのは、秀人のバイト先でもある喫茶寄り道。秀人としてはバイト先がバレるのは避けたかったが、あそこほど静かな場所もない。


「…こないだの…喫茶店。」


「いいですね!」


「ど、どこにあるのかな。」


「うん。では今日もみんなで食事だな!」


「以外と近いわよ。」


「それじゃー出発ー。」


「…はあ。新しいバイト先探そうかな。」


こうして一同は寄り道へ向かった。その道中も、友達か否かの話しは続く。


「じゃあー秀人は友達0ってことー?」


「そうだけど。」


「じゃあー麗華ちゃんはー?」


「隣の席にいる人。」


「…私は…友達…なりたい。」

 

「大山くんはー?」


「他クラスの騒がしい奴。」


「そして先生と慕うものです!」


「えーと…あの子はー?」


「ぼ、僕は岸辺想汰だよ。」


「クラスメイト。」


「生徒会長さんだっけー?」


「生徒会長であり、高山くんの先輩だ。」


「昼飯を食べる人かな。」


「彩花ちゃんはー?」


「他のクラスの図書委員。」


「そうね。」


「ウチはー?」


「仕事の先輩。」


「…言い返せないー。」


「というわけで、友達0な寂しい奴だから。僕なんて友達にしたら笑われるよ、止めときなよ。」


「…止め方…雑。」


「でも先生!このパターンですと、もう無理かと思いますが!」


「に、逃げ切れるとは思えないよ。」


「どうだろう高山くん。1人友達を作れば、あと2人3人増えても平気なのでは?」


「それ、会長が友達になりたいだけじゃないの?」


「そもそも友達ってなにさ。自慢じゃないけど、今まで1人も友達は作ってないんだ。そこの線引きはあるわけ?」


「…難しい。」


「共通の話題があって盛り上がるとか!」


「ないね。」


「一緒にいると楽しいと聞く。高山くん、そんな人はいないかい?」


「ないです。」


「ご、ご飯おごったりジュース買いに走ったり?」


「パシりと財布だよそれ。それは友達じゃないって、僕でもわかるよ。」


「今のあなたに当てはめるなら…一緒にご飯を食べる人かしら。」


「でも君達は友達じゃない。」


「この人だーってビビっと来たりー。」


「イライラしかしないね。」


友達の定義。人によって変わるものだが、今の秀人達を見て友達じゃないと思う人などいるだろうか。

本人がそう思わないだけで、この関係は十分に、いや他の人よりも友人に見えているかもしれない。


「あーついたよー。」


「…今日こそ…友達に。」


「先生の職場…勉強させてもらいます!」


「こんなところにあるとは、今後も通おうか悩むな。」


「ま、前を通ったことあるけど、1人じゃ入れなかったな…」


「行きましょ。」


「疲れそうだな。」


この後心愛の友人である沙弥や明奈が来ることを、秀人は知らない。

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