人嫌い、ちょっと暴れる

「お前が月宮の彼氏だってか?」


それはボランティアも終わり、無事心愛のイメージを固めることが出来たと安心していた帰り道。休憩以降も拾い続け綺麗になったから解散となり、歩いていたら絡まれた。


「あれーウチのクラスのー。」


「今はんな話してねえ!俺達はこいつに聞いてるんだよ!」


「…酷い…態度。」


「女性にそんな口調とは、嘆かわしいですよ!」


「まあ見るからにヤンキーって感じね。一昔前の。」


「うえーん、怒鳴られたよ-秀人ー。」


「触んな。で、何か用ですか。」


「だ・か・ら!お前が月宮の彼氏かって聞いてんだよ!」


「声がでかいよ。そんなに大声出さなくても聞こえるし、バカなの?」


「先生のイラつきがピークに…おいお前ら、手を出すってんなら自分が相手になるぞ。」


「…暴力…だめ。」


「ひとまず110でいいかしら?」


「やーん。ウチのためにー争わないでー。」


「君の質問に答えるなら、まあ彼氏は僕らしいね。」


「やっぱお前か!俺達はな、これ以上被害者を増やさないように集まったんだ。」


「被害者?」


「そうだよ…そこの女に騙されて傷つかなあようにな!」


「…頭…悪そう。」


「きっと勘違い集団ですね!」


「ああ。そういえば勘違いした男に迫られて、嫌な思いをしてるって話だったわね。」


「なるほど君たちか。」


「ああそうさ。俺達はそいつにもてあそばれて、深い傷をおったんだ。」


「ちなみに聞きたいけど、どうして告白までいったのさ。」


「ふふ。聞きたいか…俺達の過ちを!」


数は6人ほど、正直パッとしない集まりの男達が語りだす。


「まず俺だ!あれは授業中、消しゴムを落とした時さ。そこの月宮が拾ってくれて…手を握りながらこう言ったんだ!もう落としたらだめーって!そりゃ好きになるだろ!」


「…理解…できない。」


「ここのポイントは手を握られる所です!普段異性との接触がない分、たった一度の触れ合いが強く記憶に刻まれたのでしょう!」


「そして気づけば頭に心愛ちゃんが…男子ってそんなに簡単なのかしら。」


「あれはーちゃんと渡すためにー握ったんだけどー。」


「はい分かったよ。次は?」


「ふっ、それでは僕がいきましょう。あれはとある放課後…いきなり月宮さんがこう言ったんだ。勉強教えてーと。その後は教室で二人きり!みっちり教えましたとも!」


「…終わり?」


「二人きりが不味かったですね!」


「さっきと似てるわね。強く印象づけされ、好きと勘違いかしら。」


「あの時はーありがとねー。」


「なんか君にも非があるように見えてきたけど…はい次。」


その後もモテない男達の悲しい話しは続いた。ある男はお菓子をわけてもらったとか、筆記用具を貸してくれたとか。とても信じられない話だが、それくらいでコロッと落ちる人は落ちるのだ。

もちろん相手にその気はないので、いくら本気で好きになろうとバットエンドだが。


「…秀人は…違うね。」


「まあ先生の場合、人であることが駄目ですからね!」


「理解できるけど、変な前提よね。将来は動物と結婚するのかしら。」


「えー秀人ーウチは駄目なのー?」


「いや動物と結婚てなにさ。急に毒吐かないでよ。」


「ごめんなさい。無意識にストレスが溜まってたみたい、変な話を聞かされて。」


「な、なんだと!俺達は真剣に恋をして、コケにされたんだぞ!」


「…フラれたら…相手の…幸せ…願うべき。」


「真剣に恋したならそんな台詞、間違っても言わないはずです!」


「そういう台詞を言うのはどの本だって、名前もないしたっぱだわ。ちゃんと恋して相手を見て、その上でフラれた人には名前があるもの。」


「んー…ウチも悪いのはー分かったよー。今さらだけどーごめんなさいー。」


「だそうです。あと被害者って言ってたけど、確かに僕は今回被害者だね。」


「じゃ、じゃあお前もわかるよな!」


「でもそれは彼氏を名乗らされて、こんな下らない連中に絡まれた被害さ。分かる?今は彼女よりも、君たちの方が迷惑だと感じてるよ。」


「お、お前もそのうち捨てられて、好きにならなきゃって思うぞ!」


「あいにく彼女の事好きじゃないし、なることもない。…あと。」

 

そう言うと秀人は、目の前の男に詰め寄る。振り上げた右こぶしを固く握りながら。


「今日の僕は彼氏ごっこ中なんだ。いろんなストレス含めて、彼女を馬鹿にした君達にぶつけても…いいよね!」


「ぶっ!」


秀人の拳は男の顔面に当たった。男は後ろにぶっ飛び、鼻血を出しながら気絶している。


「さて。今ので5スッキリ…でも鼻血が付いたから30ストレス。次は誰かな?」


「「す、すいませんでした!」」


男達は気絶したやつを引きずりながら帰っていった。一方秀人はスッキリできず残念、心愛は驚いた顔をしていた。


「…秀人…やりすぎ。」


「でもこれで、心愛さんの悪口言ったら彼氏が乗り込む!信憑性ができましたね!」


「そうね。あれだけの出来事、フラれたショックよりも記憶に残るはずだわ。」


「あーイライラした…スッキリできると思ったのに。」


「秀人ー大丈夫ー?怪我してないよねー?」


「これは返り血だよ。」


「よ、よかったよー。秀人がーウチのせいで怪我したらー…うえーん。」


「だからなんで泣くのさ。」


こうしてひと悶着あったがボランティアは終了。各自家に帰るのだった。


「ただいま。」


「みゃあ。」


「はあ…いろいろ疲れた。」


寝ようとした秀人のスマホが鳴った。


心愛[今日はありがとねー。]


秀人[これで話しは終わりでいいよね?僕としては、もう疲れたし。]


心愛[おけおけー…ねえ秀人ー?]


秀人[なにさ。]


心愛[この件終わってらーウチらの関係はーどうなるー?]


秀人[職場の先輩後輩かと。]


心愛[友達はー?]


秀人[おやすみなさい。]


その後何回もキズナの通知音が鳴っていたが、全てを無視した秀人は穏やかな眠りについた。

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