人嫌い、話し合う[case秀人]

全くなんでこうなったのか…考えるのも嫌になるよ。


「では、麗華くんの話から。」


今僕は親しき学友たちとの、楽しい食事中だ。そうでも思わないと、頭の血管がちぎれて死にそうな気分。


「…さっきは…ごめん…秀人の事…知ってたのに。」


「知っててあの仕打ちとは、いやはや感心するよ。君には僕を殺す才能がある。」


なんでここまで怒るか?僕に触れたから以外ないよ。お隣さんは分かっててやってくれたみたいだけど、僕にとって他人からの接触は虫が這ったような感覚なんだ。

これからご飯ってときに、腕に虫が止まれば気分は最悪。その虫を潰そうとしたら周りは止めるし…僕が悪いのかな?それはないか。


「落ち着いてくれ高山くん。」


「僕は落ち着いてますよ。冷静に、彼女を誉めてるんです。」


「…秀人は…友達…連絡…取りたかった。」


これだよ。彼女は何故か僕を友達認定してる、そこが間違いだって訴えてるのに周りは笑ってるだけだ。僕は友達になんてなってないし、こうやって面倒を起こされるたび嫌気しかしてない。

高校で学べとは言われたけど、社会人はこんなトラブルやストレスまみれの生活なのかな。


「つまり麗華くんは、彼という友人の連絡先を知りたかったと。」


「…そう。」


「麗華くんに悪気はあったのか?」


「…ない…秀人と…交換…したかった。」


「ふむ。次に高山くん、どうだろう?」


何がどうなんだ?この先輩は、僕が本当に彼女と友達だなんて思ってるんだろうか?


「まず第一に、僕らは友人関係じゃないです。単なるクラスメイト、席が隣なだけです。」


「…つまり、彼女の認識が間違ってる。」


「その通りです!やっと分かってくれる人ができたよ。」


「そして友人でもない相手に教えるのは、おかしいと?」


「先輩は顔見知りに、自分の連絡先を配りますか?僕はそんなリスク捨てます。」


僕の連絡先なんて価値はないけど、他人に悪用されたりネットで流されたり…近代の事件はそうやって起きることもあるのに。この人は危機管理を知ってるのかな?


「確かに、君の言うことは分かる。1つ言わせてくれ。何回か君たちと過ごした私だが、少なくとも他人やら顔見知りといった関係ではないように見えたが?」


「…私は…仲良く…なりたい。」


「僕は嫌だよ。」


何が悲しくて他人とつるんで、この生活を脅かされなきゃいけないんだ。僕は1人、窓際で本でも読む方があってるのに。


「うん。双方真逆だな。」


「なら私から1つ。」


おっ、僕に味方がいたとは。自慢じゃないが、今まで誰かに援護されたことはない。むしろ僕以外が敵の方が多かったのに。


「では姫野くん、何かな?」


「この前の遠足で混ぜてもらったけど、彼は自主的に話しかけることは無かったわ。むしろ、常に1人距離を取ろうとしてた。」


わお、まさかバレてるとは。あわよくば誰の注目もないときに逃げようとしてたのが、えーと姫野さんとやらには分かってたみたいだね。


「それに、最初博物館を回ってた1人の方が笑顔だったわ。」


「良いこと言うね。あの瞬間こそ、僕は生き生きしてたよ。」


「なるほど。高山くんは1人が好きだと、誰かといる方が嫌なんだね?」


「ええ。それでも社会に出るためと、人付き合いを学べと親に言われて。こうして誰かと話す事は、勉強と認識してます。」


「…普通に…お話…したい。」


「君には僕以外にも、付き合いが多いじゃないか。特に声のうるさい彼、気が合うんじゃない?」


「呼びましたか先生!」


うわ出た。なんで先生なんだろ、あの時はムカついたから止めに入っただけなのに。


「呼んでないよ。頭は冷えた?」


「はい!」


「なら君からも聞かせてよ。僕と彼女、表すならどんな関係さ。」


「難しいですね…クラスメイトなのは違いないです!それ以外だと、話し相手とか!」


「君の目から見ても、友達とは言えないのかな?この中だと一番付き合いが長いと、岸辺くんから聞いたよ。」


「た、確かですけど。僕なんて、たった1週間もない付き合いですから。」


いたんだあいつ。この前しつこく絡んできたのを突き放したら、何故かこうして後ろをついてきてる変な奴。


「残念ながら、自分の目から見ても友人とは言えないです!」


「よくわかったよ。」


「ありがとう、君のその発言は助かるよ。」


「こんな形で先生の力になるとは…複雑な気分です!」


「…がーん。」


これで僕の勝ちだ!彼女が友人ではないなら、無理に交換する必要もない。なんなら、友達でもないのに気安くするなって離すチャンスにすら…


「では、私から提案がある。」


「…まだ続きます?解決したように見えましたが。」


「あるとも。高山くんは人付き合いを学ぶのだろ?君は今後誰とも、番号1つ交換しないのかい?」


「必要があればしますが。」


「なら早いうちに慣れるといい。社会に出れば、会ったばかりの他人とさえ連絡先を交換する事があるぞ。」


「つまりなんですか、彼女と交換しろと?」


「まだ顔見知りに、話し相手との交換ならましだろ?もし彼女が悪用することがあれば、私がなんとかして見せる。」


「1学生、ましてや個人に何ができるんですか?」


「信じてくれとしか、返す言葉がないよ。」


「…悪いこと…しない。」


「君も電話をとる、メールでの受け答えを知る機会と捉えてはくれないか。先輩のわがままだ。」


なんなんだこいつら。今までの流れは?僕の勝利はどこに行ったんだ…集団に消されたか。まあ当然だよね。個人の僕が歯向かったって、集団には勝てない。意見なんて食い潰されて、無かったことにされるだけだ。


「待って。彼の意見も必要じゃない?」


「姫野くん。」


「私はあくまでも中立でいたいわ。それに、ここで彼に無理をかけるとどうなるか。」


「や、やめといた方がいいよ。多分、高山くんキレるとこわいもん。」


以外にも蚊帳の外連中が味方になってくれたよ。嬉しくないけど。にしても姫野さんとやら、ずいぶんとこっちの肩を持つねー。何を企んでるんだろ。


「先輩の意見を無視したら、後輩失格ですから。」


「その嫌そうな顔はあれだが…無理強いした私が悪いな。助かるよ。」


分かってんなら最初から言うなよ…くそが。


「さて、まとまったことだし。交換しよう。」


「ちっ、ほら。」


「…ありがとう。」


あーあ。こうして折れるのも必要らしいけど、本当に嫌なものだよ。


「ではその流れで、ここに昼食会グループの発足をしよう!」


「…は?」


何言ってんだこの人。


「高山くんは、このメッセージアプリは入っているかね?」


「ああ、この[キズナ]って反吐が出そうなやつですか。」


「反吐が出る…まあ置いとこう。この[キズナ]にはグループ機能がある。知り合った中同士が集まり、会話をする機能だ。」


「…この…六人で?」


「まさかとは思いますが、作るんですか?」


「ぐ、グループ機能は初めて使うよ…うまくできるかな。」


「私も。少し個人で使ったことはあるけど…久しぶりね。」


「自分はそこそこです!」


「恥ずかしながら、私もあまり慣れてないんだ。この六人で集まって、機械上でのやり取りを学びたい。この理由ならどうかな、高山くん。」


この人…いやこいつでいいや。僕の扱い方としてはあってるが、そうまでする価値は僕にないのに。


「ええ良いですよ。」


「ありがとう。」


はあ、やっとご飯が食べれるよ…手を洗いにいこうかな。どっと疲れた。

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