人嫌い、話し合う[case麗華]
私、蔵野麗華は話すことが苦手。頭ではあれやこれや、話したいことは沢山あるのに。口から出るのはちょっとだけ。
「…秀人…ごめん。」
今私は、友達の秀人くんに酷いことをしてしまった。彼は変わっていて、なんでも人が嫌いなんだとか。前にも寝ている秀人くんを起こそうとしたら、触る前に気配で起きちゃった。触られるのは嫌みたい。
「君には僕を殺す才能がある。」
秀人くんはすごく怒ってて、私は謝る言葉を考える。でもこれは言って良いのかとか、もっと怒らせるんじゃないかなんて考えてしまう。
「…秀人…友達。」
そう私は思ってる。こうやって話下手な私の言葉を、最後まで聞いてちゃんと返してくれる。秀人くんが嫌々なのは分かってたけど、私にとっては凄く嬉しい。
「まず第一に、僕らは友人関係じゃないです。」
そう返しがくるのは分かってた。でも思っていただけで心にくるこの痛みは、想像を越えてた。
今まで私の周りには、あまり人が寄り付かなかった。みんなは私を嫌ってる訳じゃなくて、静かで近寄りがたいってイメージが邪魔してたらしい。
「…仲良く…したい。」
そんな私が自分から話しかけた相手が高山くん。クラスが一緒で、席も隣な彼は嫌そうな顔をしてても無視することはなかった。秀人くんは知らないだろうけど、私はそれだけで満足だった。
「…がーん。」
周りからしても、今の私たちは友達じゃないらしい。私自身わかってるけど、こうもはっきり言われるとちょっと悲しい。
秀人くんが違うって言っても、私には友達だ。毎日話してご飯を食べて、ちょっとは遊びに行けたら良いなって思う。この気持ちは、本心だ。
「…ありがとう。」
正子先輩の力もあって、やっと知れた彼の連絡先。一番は大山くんだけど、本当は秀人くんを一番に入れたかった。もちろん家族やら昔の友達やら、他の連絡先はあるけど。
「…この…六人で?」
今ここにいる六人で[キズナ]グループ…凄く楽しそう。みんなとはバラバラにやり取りしたことあるけど、グループで話し合う機会ができるなんて。
もちろん秀人くん以外は即決。しぶしぶ彼も参加してた。
彩花[あんまり彼に無茶させちゃ駄目よ。]
個人メッセージで彩花ちゃんから飛んできた。彼女は先週の遠足帰り、頼んだらあっさり連絡先を教えてくれた。そこから[キズナ]でも知り合い、たまに送りあう中になった。
麗華[うん。気を付ける。]
彩花ちゃんは、秀人くんの考えが分かるみたい。遠足でも意気投合してて、私だってあんな近くで会話したことないのに。
この話し合いでも、彩花ちゃんは中立として高山くんを守ろうとしてた。おかげで高山くんはギリギリ怒らないでいてくれたから、凄く助かったけど…複雑。
麗華[ありがとうね。フォローが無かったら、秀人くんがどうなってたか。]
彩花[ひいきはしないから。それに、今の環境も気に入ってるの。壊したくなかっただけ。]
本当にいてくれてよかった。私も、この六人で集まれる奇跡を壊したくない。大山くんは面白いし、正子先輩の笑顔は素敵。岸辺くんはいつの間にかいたけど、話してみるといい人だった。
どれくらい時間がかかるか分からないけど、いつか秀人くんに友達だって認めてもらう。それが今の目標!
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