人嫌い、帰宅する
「そろそろ時間ですし、帰りましょう!」
「そうね。これで遅れたら、何言われるか分からないわ。」
「め、目立ちたくないよ。」
「…急ぐ。」
「そうだね。時間に間に合うって約束したし、さっさと帰ろうか。」
公園で時間を過ごした秀人達だったが、気づけばバスの出発時間が迫っていた。
「そういえば!彩花さんは別のクラスでしたね!」
「あなたもね。それがどうしたの?」
「…昼は…校舎裏…いるから。」
「ちょっと何教えてんの。こういうときは、また会おうねって言葉を送る。そして消えるんだよ。」
「な、なかなかゲスいね。」
「それはお誘い?私がいても、特に喋らないけど。」
「大丈夫です!先生も喋りませんから!」
「…秀人は…置物。」
「ずいぶん僕の扱いが酷いね。でも置物か…反論できないな。」
「き、今日もほとんど話してないよね。」
「そりゃね。話すときはちゃんと話すけど、必要ないならしない主義だから。」
「…分かったわ。お言葉に甘えて、明日からよろしくね。」
「また増えるのか…はあ。」
その間にも歩き続け、秀人達は無事に間に合った。すでに半分ほどの生徒が乗っており、秀人達も乗ることにした。
「では先生!また明日会いましょう!」
「今日は楽しかったわ、また明日。」
大山と彩花は違うバスに乗り込み、残った三人も自分の席に座った。
「忘れてたけど、君が隣だったんだね。」
「…よろ。」
「僕は疲れたから寝るけど、間違っても起こさないでよ。」
「…私も…疲れた。」
「あれだけ動けば、そりゃ眠くもなるよ。」
話してる間にもあくびが出る2人、バス出発前から寝てしまった。一方想汰は行きと同様、周りのグループが騒ぐなか静かに座っていた。変に絡まれるのも嫌なので、イヤホンをして寝たフリである。
「皆揃ったか?委員長は点呼をとって、先生に報告しろ。」
幡山の指示で騒いでいたクラスも静かになり、一部生徒がまだ来ていないことがわかった。
「ったく、やっぱりこうなるか…分かってると思うが、揃うまでうちのバスは出発できない。誰か連絡とれる奴いないのか?」
「…うるさいな。」
「おう高山間に合って…おいそんな怖い顔やめてくれ、先生は仕事してるだけだからな。」
「僕も疲れてまして、静かに寝たいんですけど。」
「ならまだ来ない奴に言ってくれ。揃わないと、俺だって帰れないんだから。」
「もしかして、校則違反な髪染めしてる連中ですか?」
「お?知ってるのか。」
「ええ。僕らが引き返してる途中で、モールに入っていくのを見ましたが。」
「その時に止めてくれよ…いや、お前にそんな義理も理由もないもんな。」
「後で怒られて、内申に響くのは向こうですから。」
「その情報だけでも助かった。」
そう言って幡山は探しに出た。秀人は自分に寄りかかっていた麗華との間に鞄をいれ、眠りについた。
次に秀人が目を覚ますと、バスは発車していた。学校まであとわずからしく、他の生徒は自分の鞄を持って待機していた。秀人の鞄は麗華避けのため座席間に挟んでいたが、いつの間にか取り外されていた。そのため、秀人の肩にもたれて麗華は寝ていた。
「うわっいつの間に。ほら、早く起きてよ。」
「…おは。」
「なんで寄りかかるかな…それに鞄もどけて。」
「…鞄は…硬い…秀人…寝やすい。」
「僕は枕じゃないよ。ましてや、他人に貸す肩はないから。」
「…けち。」
「文句あるなら、今後二度とやらないでよ。」
「…感謝…してます。」
「はいはい。もう着くってさ、やっと一人になれるよ。」
「…また…明日ね。」
「ちゃんと登校してたらね。こんだけ疲れると、体調崩しそうだよ。」
それからすぐにバスは着き、秀人は特に別れを言うこともなくさっさと帰った。
「た、高山くん!今日はありが…あれ?」
「…秀人…帰った。」
「そ、そっか…蔵野さんも、今日はありがとね。」
「…ん…また…明日。」
「ぼ、僕なんかでよければ、また明日ね。」
2人は挨拶を交わし、それぞれ帰宅する。こうして、長い遠足は終わったのだった。
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