人嫌い、少し休憩

「さて、どこに行こうかな?」


「3時間しかないわね。」


「…短い。」


「ではまず!あちらの公園などどうでしょう?」


「ぼ、僕はついてくだけだから。」


「まあ、平日の公園ならいいや。」


「分かりました!こちらです!」


手短に目的地を決め歩いてあると、彩花が話してきた。


「さっきは申し訳なかったわ。まさか、あそこまでしつこいなんて。」


「にしても、どうして絡まれるのさ。」


「私自身、会話が苦手なの。誰とも喋らなくて良いならと図書委員になったし、今回の遠足も一人で良かったのよ。」


「ですが、遠足は少なくても三人1組のグループ分けがされますね!」


「…私達…ちょうど。」


「僕は一人でも良かったんだけど。」


「い、良いねすぐ組めて…僕は余り物で組んだよ。着いたらいなかったけど。」


「私も余ったの。クラスで仲良しなんて作らなかったから。そしたらあのグループが誘ってきて、入ったの。」


「すると想像以上に絡まれたってこと?」


「あの二人、見てわかる通りカップルよ?私になんて構わずイチャイチャしてれば、まだ楽だったわ。」


「面倒見がいいんですかね!」


「…単に…女性を…置きたい…とか。」


「わ、分かりやすいステータスだよね。男にとって。」


男女が一緒にいる。ましてや、男一人に何人も女性が側にいればそれだけで周りから注目される。人によるだろうが、自分を目立たせるための道具として使う人間もいる。


「で、現地について別行動したと。」


「そうよ。いる意味もなかったもの。」


「先生!見えました!」


「…広い。」


「ちょっとは人がいるか…ちっ。」


「で、でも静かだから。」


「なかなかね。」


公園にしては広く、秀人達はここで休むことにした。


「では先生!自分、向こうのアスレチック行ってみます!」


「…自販機…行く。」


「に、荷物持ちしてくる。」


「他のところも見てみるわ、面白い発見でもないかしら。」



各自の自由性が発揮され、秀人は今日初めて一人になれた。


「やっと1人か…このまま何処かへ消えたい。」


しかし自分が消えれば、探すために他の四人が動き回る。時間に戻る約束で外に出ているからこそ、少しでも事故要因は減らしたかった。


「まあ探されるほど、子供でもないけど。」


「…なんの…話?」


「僕が平和に生きる話。」


「…そう。」


「飲み物は買えたの?」


「…想汰が…行っちゃった。」


「ここで待ってるのが、間違いないわけだ。」


「…そう。」


この二人になるのも久しぶりだと、秀人は感じていた。最初はこうだったが、気づけば周りが増えてきて今では少なくても3人が当たり前だった。


「…人には…慣れた?」


「全然。僕が我慢してなきゃ、どっかで破綻してるよ。」


「…最初より…話してる。」


「かわし方が上手くなったのさ。変に口数少ないと、余計詰め寄られるからね。」


「…喋るの…嫌?」


「一言も喋らないで良いなら、とっくに喋り方なんて忘れてるさ。生きてく上で必要なことだから、我慢してる。」


「…我慢…多い。」


「僕にとっては、僕以外がストレスさ。我慢してなきゃ今ごろ刑務所にでも入ってるよ。」


「…大変…だね。」


「それこそ慣れたよ。この15年、一人の日以外はずっとやってる。」


常にストレスにさらされる。普通なら耐えきれず、自殺や精神がおかしくなるだろう。秀人は幼い頃からそれらに耐え抜き、知らずと鍛えられていた。


「それでもふと思うよ。楽になっちゃえば、次はましな生き方ができるかもって。」


「…秀人は…死にたい?」


「死んで次も人間なら嫌だけど、なれるなら他の動物がいいや。」


「…死んじゃ…だめ。」


「君に禁止される理由もないよ。」


「…初めての…友達。」


「だから違うって。それに今は、僕以外の繋がりがあるじゃないか。」


「…秀人が…いたから。」


「いてもいなくても、君なら上手くやれただろ。」


「…ううん…無理。」


「そんなに自身ないの?」


「…話すの…苦手。」


「そうかい。」


「…ありがと…ね。」


「それは、何に対する感謝?」


「…今…楽しいの…秀人の…おかげ。」


「あーそうですか。」


二人が会話してる内に、残りの三人も集まってきた。


「いやー動くと気持ちいいですね!先生も、お暇でしたらぜひ!」


「特に珍しい物もない、普通の公園ね。」


「み、皆何飲むかわからないから、適当に買ったよ。」


また騒がしくなったと感じる秀人だった。

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