人嫌い、放課後を奪われる

「…どこ…行ってた?」


「あっ先生!お帰りなさい!」


「ああうん、ただいま。」


今後の楽園から戻った秀人、麗華は頬を膨らませ怒っているようだが、大山は笑顔で迎えた。


「…他の…女の…匂い。」


「ええと…流石に先生でも、浮気は良くないかと…」


「まず第一に、僕とあれは何の関係も無い。強いて言えばクラスメイトだ。そして第二に、僕が何処でなにしても問題はない。」


「…女と…会ったの…認めた。」


「まあまあ麗華さん、先生も青春したいんですよ!」


「先生はやめろ、何が青春だよ…昼から追い回されて逃げただけだから。」


午後の授業開始チャイムが鳴り、秀人と麗華は席に座る。大山は別クラスなので、一言別れを言って自分のクラスへ戻っていった。


「…放課後…時間は?」


「ないね。家に帰って猫の世話しないと。買い出しもあるし、独り暮らしはやることが多くてね。」


「…ついて…いく。」


「やめてください。」


授業が始まる。昼全力で追い回した姿を見るに、放課後も追われると確信した秀人。どうやら授業を受けながら、作戦をたてる必要があるらしい。


午後の授業はあっという間に終わり、秀人の前には麗華が立ち塞がっていた。


「…じゃあ…帰ろ?」


「本気だったの?てっきり嘘かと。」


「…嘘は…嫌い。」


「なるほどね。で?男の買い物なんて、つまらないと思うけど。」


「…一緒に…遊ぶ。」


「いやいや、僕は買い物がしたいの。」


「…買い物の…後に…秀人の…家で。」


「…嘘でしょ?」


「…嘘は…嫌い。」


さっき聞いた台詞と共に、麗華は言い切ってみせた。


「先生!今日1日お疲れ様です!」


そして厄介なことに大山が合流、秀人は頭を抱える。


「…生山も…来る?」


「え?この後何処か行くんですか?」


「…秀人の…家で…ご飯。」


「まじですか先生!お供します!」


麗華はこれまで友達付き合いが少なく、他人の家に上がったことなど数少ない。ましてや男友達(一方的)など初めてで、警戒心は皆無だった。


「あのさ…本当にやるの?」


「荷物持ちなら任せてください!」


「…行く。」


「百歩譲って猫いじめはまだいい、でも君はまずいでしょ。」


「…どう…して?」


「先生!自分は生山大山です!」


「知ってるよ。女性が男の部屋に1人上がる、世間的には良くないことだよ。」


「確かに、勘違いさせてしまい襲われるとか!」


「…秀人…襲うの?」


「ない。」


即答だった。麗華にとってその即答こそが信頼できる。いくら麗華といえど、男の家に上がる不安はある。しかし、秀人はしないと何処かで思えたのだ。


「大丈夫です麗華さん!先生は女性に対して、失礼なことをしないでしょう!」


「その自信はどこから…確かに、他人なんて触りたくないよ。吐きそうになるし。」


「…じゃあ…OK。」


「最低限、保護者にどうこう言われるの嫌だから、連絡しといて。」


秀人もついに折れることにした。先程から、家に上げるだのを話してる時点で、周囲の目線が痛く刺さり始めたからだ。ここは提案を受け入れ、我慢しようと決めた。


「…やった。」


「では、1度帰り親に話をして来ます!どこで待ち合わせを?」


「じゃあ、後で正門前に集まっといて。今が16時前だから…17時に。いなかったら、僕は笑顔で帰るから!」


「…間に合わ…せる。」


「余裕です!」


こうして、夕食会が開かれることになった。

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