人嫌い なつかれる

自己紹介も終わり、残りの内容は明日からの時間割りや持ち物の確認等、あっというまに帰宅の時間になった。


「それじゃあ今日は終わりだ。明日からよろしく、起立。」


担任の号令に生徒は立ち上がり、挨拶をして解散になった。クラスのあちこちで、新しくできた友達との飲み食いやら、親睦を深める会をやるやらと盛り上がるなか、秀人はまっすぐ帰ることにした。


「…帰る?」


「今日の行事は終わりだし、いる意味もなさそうだしね。じゃあさようなら。」


秀人はクラスの誰よりも早く退室、帰ったら疲れをとるために何をしようかと考えながら歩いていった。下駄箱に着き靴を脱いでいるときに気づいたが、どうやら麗華も後を追ってきたようだ。


「いたんだ、知らなかった。」


「…ぷー…さすがに…怒る。」


「君はクラスの人たちと仲良くしないの?今日中じゃないと、後から仲良くなるの厳しいんじゃない?」


「…あなた…人のこと…言えない。」


「僕はいいんだよ。一人気楽に過ごしたい、だから早く帰りたいんだ。」


「…そう…なの。」


「そういうこと。」


何気なく会話できていることに、少しは自分の成長を感じる秀人。ただ喋りすぎたか、今日は疲れがいつも以上だった。


「…秀人…って…呼んでも?」


「急に名前から?高山って呼ばれる方が良いんだけど。それに名前呼びしてると、変な誤解されるかもよ。」


「…友達は…名前で…呼びたい。」


「………誰が、誰と友達なのかな?」


「…私と…秀人。」


「なった覚えないけど、初対面だし。」


「…朝から…たくさん…お喋り…したよ?」


「そんなの、そこら辺の男子に話しかけたら喜んで付き合ってくれるよ。僕じゃなくても、すぐ友達できるさ君なら。」


「…君じゃ…ないもん…麗華。」


「いや名前は覚えてるよ。」


「…じゃあ…友達…なって?」


「すいません、お断りします。じゃあ。」


麗華のお願いをあっさりと蹴り、秀人は家へと帰るのであった。麗華は一人残されるも、そこに悲しみはなかった。


「…明日から…がんばる。」


秀人に対して何故そこまでするのか、今のところ麗華にははっきりとわからない。しかし朝から過ごした半日の間に、居心地が良いと麗華には思えたのだ。


麗華はその容姿から男子にとって高嶺の花、女子にとっては妬みの対象とされることがあった。誰かと話したくても、下心のある男子か敵意を向けてくる女子が多かった為、秀人のようにしっかりと話をしてくれる相手がいなかったからかもしれない。


そして話は、帰宅途中に進んでいく。

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