人嫌い、なんとか終える

「やっほー!俺は岸部想汰きしべそうた!好きなものは女の子、現在彼女募集してまーす!よろしく!!」


クラスは思った。こいつは駄目だと、一時のテンションに身を任せた破滅者だと。しかし秀人は別のことを考えていた。


(そんなやり方があるのか?周りの反応は…冷たいようだが。それでも何人かは笑っている、笑わせることも必要なのか?)


想汰の自爆行為は、秀人の思考を掻き回していた。自己紹介、それはある意味一発ネタ。ウケることを重視するもよし、また無難に乗りきるのもよし。今後の振る舞いを考え、秀人は自分の紹介をまとめていた。


「…蔵野…麗華。」


隣の少女は名前だけで終わり、周囲はざわついた。しかしそれは、変なやつと思う訳ではなく、ミステリアスな雰囲気ととられた。


秀人に関心がないだけだが、麗華は美少女と呼ばれる部類であり、朝そんな美少女と並んで入ってきた秀人を妬む者もいた。彼女の欠点を探すのであれば、胸が小さいと答える人がいることだろう。


そしていよいよ秀人の番。考えに集中していた頭を、さっき作り上げた自己紹介に切り替える。これで失敗すれば、彼は中学と変わらない生活になるだろう。


「どうも、高山秀人と言います。好きな事は読書、苦手な物は甘い食べ物です。よろしくお願いします。」


可もなく不可もなくではないか、少なくとも秀人の中では満点だった。周りの反応もそこまで悪くは見えず、ひとまず安心する秀人であった。


「…甘いの…駄目?」


「進んで食べたくはないってだけ。他に食べ物がないなら仕方ないけど。」


「…なる。」


秀人は思う。朝から会話しているこの少女は何を考えているのか?自分に取り入ったところで、何もメリットなどないのにと。


自分の自己紹介を終えた秀人は、後の紹介などに興味を失い、午後何をするかに思いを馳せるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る